※本記事は、Rob TarkoffによるClassic approach to CX technology needs a rebootを翻訳したものです。

本連載の第1回では、顧客体験にまつわる製品、サービス、ブランドが、どのように変化してきているか述べてきました。また、第2回では、ビジネスサイドによる価値提供の方法の変化と、企業のIT部門によるCXイノベーションに対する関わり方の変化について述べてきました。

第3回目の本稿では、CXテクノロジーの未来が、これまで企業が顧客体験に対して採用してきたアプローチよりも、どのように優れているのか、述べていきます。

 

CX

デジタルな顧客体験を構築するための「これまでのアプローチ」は、いくつものベンダーによる、複数の「最適」なソリューションを、評価、選択、実装するのが一般的でした。そのCXテクノロジーのどれもが、その道においては大変優れており、CXの中の個別具体な業務(コンテンツ制作・最適化、動画、ソーシャルリスニング、分析、チャットボット、リード管理、セグメンテーション、SFA等)に特化したものでした。

Chiefmartecの調査によれば、2011年から2022年の間に、マーケティングテクノロジー単体では6,521%成長し、150あったマーケティングテクノロジー企業は今や10,000近くに上ると言います。6,521%の成長を遂げたということは、マーケティング業務だけで、テクノロジーの選択/管理/システム統合/運用の必要性が、65倍になったということです。これをマーケティング以外の顧客体験全体に広げると、テクノロジーの評価だけで多くの時間を費やしてしまうことになります。

いくつもの個別の目的に合わせた 「最適な」テクノロジーを選択することが、一見素晴らしいものに思えたとしても、それらは2023年やその先の成功(すなわち、エンドツーエンドの顧客体験や従業員体験が企業全体で繋がっている状態)をもたらすものではありません。現実には、分散したCXテクノロジーが、ビジネスに負担をかけていることに気付くことになるでしょう。各々のアプリケーションは、重要な顧客データ(顧客、製品、料金、取引データ等)が繋がっていない状態で利用されていくのです。こうしたCXに対する分散型のアプローチは、タッチポイントをまたいだ顧客エンゲージメントを集約したり、最適なタイミングで提案やサポートを行ったり、従業員に360度顧客ビューを提供したりすることを困難にするだけでなく、機能は多いがコストが高く、使われることのないシステムを保持し、結果として収益を圧迫することになるのです。

こうした個別最適なCXテクノロジーは、持続可能なものではありません。それぞれが、確たる戦術もなく、ランダムに動くことで、着地点を見失っているのです。分散したCXテクノロジーは、使い捨ての製品となり、その場しのぎの受動的な顧客データを集めることになるだけです。CXアプリケーションの数が増えていくにつれ、コントロールが効かなくなり、不必要で使われることのないツールとなり、当初の期待に沿うことが難しくなっていきます。

データ、プロセス、オペレーションは、単一の組織や目的のためだけでないものになる必要があります。CXのロードマップは、個別最適ではなく、エンドツーエンドのプロセス全体を見渡す必要があります。エンドツーエンドのビジネスニーズを満たすためには、本質的で、廃れることのない、繰り返し利用可能なフローを伴うスイートなツール(※後述)が求められます。

顧客体験とは、エンドツーエンドなフローやプロセスによって、顧客がビジネス全体に繋がることで成立する、企業全体の戦略であると、Oracleは捉えています。皆さんが考えているのと同様に、我々もこの認識に至ったのです。ここ10年以上にわたり、OracleはCXに関する、イノベーティブなツールやサービスに投資を続けています。Oracle単体で構築できない領域では、買収も行いました。Oracle CXは、顧客体験にとって欠かせない14の最適なツールを集め、ブランドとビジネスを構築してきました。他のベンダーと同様のパワフルさを持ちつつ、分離可能なツール群は、個別のCX課題ではなく、エンドツーエンドな課題解決に注力しています。業界全体を見渡してみても、Oracle CXアプリケーションは、大きく成長しており、豊富な機能を持ちながらも、過剰であったり、使われなくなったりするツールからは無縁のものになっています。

そして、我々は、皆さんの声を聞き、製品の使用状況を分析することで、皆さんが最もよく使うツールを特定しています。これが、我々の製品ロードマップに反映されているのです。すなわち、皆さんから頂く改善のニーズを起点にしているということです。我々は、個別具体なCXの戦術について考えるのではなく、CXをエンドツーエンドのプロセスとして捉え、それに対するニーズを満たすよう、本質的で、廃れることのない、再利用可能なフローを伴うスイートとして最新化しました。今のアプリケーションには無い、新しくて、将来のビジネスにも適応可能な要素をのみを厳選した上で、開発を進めています。この開発方針は、Oracleの、企業全体を見渡した、アプリケーション、インフラストラクチャの戦略に則っており、将来の日常生活や仕事における顧客体験を実現するための、業務とデータをより良いものにすることを目的としています。

顧客体験における、データ、プロセス、オペレーションは、一つの部門(すなわち、営業、マーケティング、カスタマーサービス、経理、調達、IT、人事など)だけでは成立しません。CXの担当者は、企業全体の指揮者となり、データとプロセスを調和させ、ビジネスを前に進めるための結果を出すことが求められているのです。OracleのCXの方向性は、分散したCX製品によって生じる不都合を解消し、最適な機能を、単一で、統合された、合理的な、アプリケーション・スイートとして提供することを目指しています。

 

アプリケーション・スイートを用いて企業全体の力を結集することで、新たな成長を実現し、CXの担当者が将来の価値提供に注力する。これが、Oracle CXのビジョンです。

Oracle CX Fusionは、業界、ビジネスモデル、収益化戦略に合わせて、それらを拡大させるための基盤を伴う、未来志向な製品です。Oracle CX (Fusion Sales, Marketing, Service)は、ツールではなく、プロセスを中心に設計されており、インフラストラクチャ、データ、フロー、デプロイメントエンジンを、SaaSとして提供することに注力しています。モダンなCXへの期待に応え、将来のビジネスモデルにも対応できるよう、機能やアプリケーションを統合することに力を注いでいます。

OracleのFusionのビションについて、どこかで聞いたことがあるかもしれません。ラリー・エリソンが、スイートであること、そしてOne Oracleであることのビジョンを提唱したのが始まりです。ラリー・エリソンは、Fusionという言葉を用いて、CX、ERP、HCMといったすべてのOracleアプリケーション製品を、分散された個々の業務領域に最適化しすぎたサイロなツールではなく、企業の未来を支援する機能群を備えた、統合されたスイートとして再開発しようとしています。

Oracle Fusionは、コアとなる機能群から始まり、CXとバックオフィスを繋げていくことを進めながら、イノベーションに向かって確実に進化しています。共通のインフラストラクチャを構築することで、運用上の無駄を排除し、業界最高峰のパフォーマンスとセキュリティを得ながら、ERPからCXに至るまでのシームレスなアップグレードを可能にする方法を模索しています。我々は、皆さんのビジネス課題の解決を見据えながら、その期待に沿うよう、既存のアプリケーションと、買収したアプリケーションを、業界最先端のモダンなサービスとして強化しています。開発チームは、拡張可能なAPIを構築し、広く活用可能な、エンタープライズレベルのツールとなることをミッションとしています。

今日、我々は、クラウドアプリケーションの市場をリードする、テクノロジー、機能、運用といった面で最もモダンな、One Oracleというビジョンに至りました。Fusionプラットフォームは、業界に応じたエンドツーエンドなフローとクラウドネイティブなサービスに対応することで、次世代の自動化と優れたCXを提供し、ビジネスとテクノロジー両面の柔軟性を高めています。

こうしたOne Oracleのビジョンは、皆さんに、3つの面で、大きな競争優位性をもたらします。次回の記事では、このビジョンを実現するための、Oracle CXに対する主要な3つの投資領域について、ご説明します。