2022年8月に実施した「青山地域の新しい防災を考える」ワークショップから生まれたアイデアがようやくカタチになりました。それは「青山防災クエスト」。子どもと大人が楽しみながら、ゲーム感覚で自分の街の防災について学ぶことができる取り組みです。
防災ワークショップで、青山地域で働く人や学ぶ学生から出てきたアイデアは、大きく分けると平常時に備えるためのものと、有事に対応できるものとに分類されます。私たちは平常時の備えこそ有事に役立つのではという仮説のもと、いくつかのアイデアをもとにデザイン思考でテストを繰り返しました。
ワークショップに参加してくれた青山で働く仲間のコミュニティ「A-Cross」のメンバーと意見を出し合い、実際に街を歩きながらプロトタイプを検証して、より実践的なカタチにまとめました。そうしてたどり着いたのが、ビンゴカード形式に災害時に役立つ場所のキーワードをまとめ、街を宝探しのように歩いてポイントを競う「青山防災クエスト」です。
ビンゴカードに書かれるキーワードも、自分たちで街を歩いて見つけるだけでなく、港区赤坂支所の協働推進課や町内会の防災担当の方などに意見を聞き、より青山に適した内容に適合させていきました。港区で発行している赤坂・青山地区防災マップを活用するアイデアも、そのような対話から生まれました。
最終的にまとめられたビンゴカードを使って、青山サッカークラブの小学2年生から中学1年生16名と一緒に、A-Crossのメンバーのサポートで、実際に青山の街を歩いて「青山防災クエスト」を検証しました。ゲーム形式でポイント制にすることで、最初は興味を持てなかった子も、どんどん真剣に街の「防災のタネ」を探して歩くようになります。普段は気にせずに通り過ぎていたところに、「子ども110番」のステッカーが貼ってあったり、災害時に役に立ちそうな水場があったりすることに気が付きます。駅を降りてすぐの地図にAEDやATMなど、緊急時に役立つ情報が掲載されていることも子どもたちが発見しました。地域のコミュニティスペースにAEDのステッカーを見つけると、クエストのルールにはなかったのに、自主的に「少しお話聞かせてください」と受付の方に声をかけ、AEDの場所を確認する子もいました。このようにして見つけた場所は、きっと有事にも記憶に残っているのではないでしょうか。
また、子どもたちと一緒に歩いたことで、大人だけのトライアル時には見つからなかった発見もありました。災害時給水ステーションを見つけた小学生が、終了後に「これは小学2年生だと読めない漢字だからひらがなをつけてほしい」と伝えてきたり、大人は災害時に逃げ込めそうだと感じた広々とした緑あふれる公園を「地震で木が倒れたら危ないから、ここに逃げるのは危険だと思う」と別の視点での意見を投げかけたりと、さまざまな世代の多様な視点によって街を見直すことの大切さに気付かされました。
オラクルでは、お客様と一緒に課題を考え、解決策を形にしていくことに強みを持っていますが、課題の解決の際に、様々なステークホルダーを巻き込んで、対話をしながら解決策をよりよくしていく過程が重要であると再認識する経験となりました。
防災クエストはシンプルな取り組みです。ぜひ、みなさんの街でも、その街が持つ「防災のタネ」をビンゴカードにまとめて、街をクエストしてみてください。
