※本記事は、Meghan Flynn, Lauren Gannon, Chad S. WhiteによるAI-Generated Images: Generative AI Concerns & Opportunities for Marketersを翻訳したものです。
ChatGPTやDall-Eといった、マーケターの毎日の仕事に影響を及ぼす生成AIが、急速に世の中に広がってきています。今やこの変化は、疑いようがありません。それでは、企業がこの変化に追従するには、どうすれば良いのでしょうか?
生成AIによる変化に、可能な限りスムーズに追従できるよう、長期的には楽観的な見方を持ちつつ、短期的には注意深く現実的なアプローチを取ることをおすすめします。生成AIができること・できないことを見極め、どのように機能するか、深く理解することから始めましょう。
特性を深く理解することで、AIによる間違いや顧客体験の低下を防ぎながら、ビジネスを成長させるために、生成AIを活用することができるようになるでしょう。
画像やソースコード、テキスト等、アウトプットするものによって、生成AIの課題やユースケースが異なるため、本連載では、それぞれの記事でこれらを取り扱います。
第2回のこの記事では、画像に焦点を当てます。

生成AIが画像を作り出す方法
生成AIが画像を作り出す方法は、テキストとは大きく異なります。Dall-EやMidjourneyといった画像を取り扱う生成AIエンジンは、ランダムに作り出されたオリジナルの画像から、ノイズを除去することによって機能します。ノイズの除去を数多く繰り返すことで、だんだんと要求に沿う画像に近づいていきます。
こうした画像を取り扱う生成AIエンジンは、インターネット上の、Altタグの付与された(※訳注: キャプションのある)画像を用いて学習されます。そのAltタグの中身によって、生成AIエンジンは、プロンプトに基づいた画像を正確に作成することができます。
ただし、画像においては、さらなる学習が必要になります。生成AIエンジンは、元々の画像に加えて、その画像に対してノイズが追加された複数のバリエーションを学習します。このような学習をすることで、生成AIエンジンは、ノイズが100%の状態から、徐々に画像を作り出すことができるのです。
生成AIの弱みと注意事項
生成AIを用いて画像を作成するにあたり、以下に示す弱みを理解することが重要です。
1. 盗用や著作権侵害のおそれがある
生成AIが、インターネット上にある著作権保護コンテンツを多数学習していること自体が、 Stability AI、Midjourney、DeviantArt、Prisma Labsといったツールに対する訴訟に繋がっており、今後もこうした訴訟は広がるでしょう。現時点では、生成AIエンジンを提供する事業者が訴訟の主な対象ですが、今後はこうしたツールを利用するユーザーを、グラフィックアーティストや写真家、その他著作権者が訴えることも起こりえます。
こうした弱みに対処するため、次のような生成AIへのプロンプトは避けましょう
- 著作権保護期間内の作品が存在するアーティストの作風を真似すること。米国においては、作者の死後70年間は、著作権が保護されます。
- 特定の人物やそれによく似た人物(特に、有名人や政治家等)に関するもの。画像や似顔絵等の肖像も含まれます。
- 企業や団体が持つ、ロゴ、デザイン、その他視覚表現を真似すること。
訴訟が起こった際、ユーザーのプロンプトは、生成AIエンジンを提供する事業者から特定される可能性が高いため、上記のようなプロンプトが含まれる場合は、不利な証拠になります。
法的リスクを減らすために、生成AIに対しては、自身が権利を持つ画像の修正を依頼すると良いでしょう。さらに、そのような画像に対して、人物等の要素を削除したり、背景を一般的な範囲で(木を足す等)変更したりすることで、リスクを最小化できます。
2. 知的財産を漏洩するおそれがある
生成AIにアップロードした画像がどう処理されるかは、必ずしも明らかではありません。AIのナレッジベースに蓄積され、他のユーザーのプロンプトに対する回答として利用されるかもしれません。
こうした弱みに対処するため、生成AIに対して、知的財産や取引に関する機密事項をアップロードすることは避けましょう。
3. 品質が低く、工数の削減には寄与しないことがある
現時点では、生成AIは、次の理由から、有能なグラフィックデザイナーを置き換えるほどには至っていません。
第1に、生成AIを最大限に活用し、有用な結果を得るには、クリエイティブ制作やアートディレクションに関する背景知識が重要になるからです。第2に、どれほど洗練されたプロンプトであっても、大半のAIが生成した画像は、デザイナーによる手直しが必要だからです。こうした理由から、ほとんどのケースで、有能なデザイナーの方が、生成AIよりも短時間に画像を作成することができます。例えば、オラクルのデザイナーによると、フォトリアリスティックな画像を作るには、生成AIよりも、Photoshopの方が、生成後の編集を必要としない点で、短時間で済むようです。
こうした弱みに対処するため、まずは、プロンプトの書き方を理解しましょう。プロンプトには、以下の要素を含みましょう。
- 写真撮影用語: レンズ(魚眼等)、感度(ISO 400、ISO 100等)、シャッタースピード(1/125秒、4秒等)
- アート用語: スタイル(写実主義、印象派等)、画材(水彩、パステル等)
- 色の指定: パントーン色番号等
そして、社内や社外(代理店やフリーランス)に、信頼のおけるデザイナーを確保しておきましょう。
4. 企業ブランドと関係のない画像が生成されることがある
マーケティング用途に生成AIの画像が向かない理由として、大半の企業が、写真、イラスト等に対して、決まったスタイルを持っていることが挙げられます。このスタイルこそが、企業のブランドとしての声を伝える重要な方法になっています。現時点では、生成AIを用いて、企業ブランドに沿った、適切なレイアウトの画像を、継続的に作成し続けることは、ハードルが高いと言えます。
マーケティングにおける生成AIのベストなユースケース
こうした弱みを踏まえ、生成AIが作り出した画像を、企業が賢く活用するにはどうしたら良いでしょうか?以下に、いくつかの例を示します。
ブレインストーミング
生成AIによるテキストを用いたブレインストーミングほどではないにせよ、画像によるブレインストーミングにも一考の価値があります。例えば、WebサイトのUIコンセプトの作成を依頼し、その結果をもとに、企業ブランドへ適用できるか、可能性を探ることができるでしょう。
運が良ければ、生成AIが、期待の75%程度の画像を生成してくれることがあります。その画像を編集することで、求めていたアウトプットを得ることができるでしょう。
高解像度変換
「今ある画像が、もっと高解像度なものだったら良いのに」と思ったことはないでしょうか?生成AIは、低解像度の画像を、最大4Kの解像度まで変換することができます。こうした生成AIの活用方法は、オラクルのデザイナーも、Adobe PhotoshopやLightroomとともに、ルーチンワークとして取り入れています。
テクスチャの作成
モデリングに使用する3Dテクスチャを作成するには、数日の工数がかかることがあります。生成AIを3Dテクスチャの作成に用いることで、デザイナーは、こうした骨の折れる作業を減らすことができます。
例えば、生成AIは、「節のある木材をマクロレンズで接写する」といったケースで有用です。インターネット上を検索したり、自身で撮影したり、不必要なレイヤーの画像が入った高価な素材を購入したりするといった、他の手法に比べて早く、安価な方法です。
背景の作成
生成AIは、街や森林などの場所に限らず、背景画像を作成することに優れています。多くのバリエーションを短時間で生成AIに作成してもらい、最適なものを選びましょう。
これら全てのユースケースにおいて、生成AIは画像作成プロセス全体の一部の役割を果たしているだけであり、すべてを担当する訳ではありません。このような活用をすることで、企業はブランドイメージをより良いものになるようコントロールしながら、工数を削減したり、法的リスクを回避したりすることができます。企業による画像作成に関する生成AIの活用が、人間による修正をほとんど必要としなくなるには、数年かかるでしょう。
生成AIによる画像作成の未来
上記のように、様々な懸念点はあるものの、長期的には生成AIに対して楽観的な見方を我々は持っています。現在は過渡期と言えるでしょう。
生成AIに対して莫大な投資がされていることを踏まえると、ここ数年の間に、劇的な改善が見られるでしょう。また、著作権の問題についても、解消に向かっていくことでしょう。これらにより、生成AIは、デザイナーの日々の業務の一部として取り入れられることになるでしょう。
それまでの間は、こうした新しいテクノロジーを、業務の面では慎重になりつつも、楽しく探求しながら、実験していくフェーズです。同時に、生成を伴わないAI(※訳注: 分類や予測を行うAI)についても、活用していきましょう。例えばスクリーンショットからHTMLへ変換するツールや、UIのカラーパレットを変更するツールなどです。
チェンジ・マネジメントは簡単ではないことを理解し、一歩ずつ進めていくことが重要です。一方で、ここ50年のスパンで見ると、現代の働き方は、何度も大きな変化を迎え、その度に新たな役割やチャンスが訪れたことを、意識しておきましょう。今こそ、顧客体験をより良いものにするというゴールに向かって、仕事(ワークフローやプロセス)を変化させていくべき時なのです。
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