世界の経済・企業活動が再始動していく中で、為替変動、原油高、地政学リスクなどの様々な要因から経営環境は激しく変化しており、企業はこれらの変化に迅速に対応していく必要があります。経営の舵取りに際して、確定した決算数値で経営判断をしたいというご要望を、業種や企業規模を問わず経営層の方々からお聞きすることが増えてきています。

今回のウェビナーでは、経営判断と意思決定のスピードアップにつながる「決算早期化の実現」について、M&A/デューディリジェンス、およびバックオフィス業務や人事制度改革のコンサルティングに強みをお持ちのグローウィン・パートナーズ株式会社様とともにご紹介させていただきました。グローウィン・パートナーズ株式会社様からは、決算早期化が求められる背景や課題とその対応方法をご説明いただき、当社からはオラクルのファイナンス部門におけるDXの取組みとそれを支えるソリューションをご紹介させていただきました。

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【開催要綱】

タイトル:「業務効率化で目指す1Day決算 ~DXで実現する決算早期化の実務~」

開催日時:2023年2月22日 15:00~16:30
開催場所:オンライン Zoom
主催:グローウィン・パートナーズ株式会社
共催:日本オラクル株式会社

【セミナープログラム】

内容

講師

DXを活用した決算早期化と勘所

~業務効率化で実現する1Day決算~

グローウィン・パートナーズ株式会社

執行役員 S&O事業部長
舟山 真澄様

(公認会計士)

柔軟なグループ経営を実現するOracle Cloud ERP

日本オラクル株式会社

FMS/EPMソリューション本部 FMSソリューション部

シニアセールスコンサルタント 

森 康一

■激変する経営環境・求められる情報開示

「この速報値は確定した数値・確定した利益ですか?」
「その報告数値はもう変動しないのですよね?」

公認会計士でもあるグローウィン・パートナーズ・舟山様は、監査業務において実際にこういったご指摘を受けたことがあるそうです。

世界規模での経済環境の激変をもたらす事象が短期間で複数発生しており、企業業績への影響や予測が難しくなっています。そのため、従来は着地見込みと結果に大きな乖離が無かったものが、大きく乖離が発生し始めています。2ヶ月前の見込み数値と、確定原価・確定売上が全く異なるような事象が発生することもありえます。こういった状況においては、見込み値だけでの経営判断が難しく、確定値をもとにした迅速な判断が必要になります。

そのためにはまず、財務会計の高速化が重要となります

近年では、機関投資家をはじめとするステークホルダーが、財務情報に加えて非財務情報を重視する傾向が高まっています。これに伴い、開示する財務情報・非財務情報について経営者がステークホルダーと対話することの重要性が増しています。しかしながら、日本の上場企業では30日以内に決算開示されている割合が低く、アメリカと比較した場合、約半分程度にとどまっているのが現状です。現在、多くの企業がグローバルで事業展開されていますので、世界で戦うためには「決算開示の早期化」が必要なのです。

 

■1Day決算実現に向けた障壁と対応策

決算早期化を妨げる主な障壁としては、①データ(取引・マスターなど)の不整合・不連携、②企業固有のルール、➂属人的な業務プロセス・手順、が挙げられます。

①データの不整合・不連携:企業成長に伴って業務量は増加します。また新しい事業に対応する仕組みをつぎはぎで対応している事が一般的です。そのように事業拡大に対応していくと、手作業で対応する事が多く、結果として業務は増加し、必要な会計情報の「登録」、「仕訳」、「照合」に多くの時間を要してしまいます。こうした手作業は、現状のやり方では効率化に限界があるため、自動仕訳などの仕組みやシステムを活用することで業務の自動化を行い、スピードアップを図ることができます。


②企業固有のルール:業務やルールを抜本的に変更していく為には、「会社として一丸となって決算早期化に取り組む」というトップダウンメッセージと、社内・外のメンバーでの協議や統一決算ルール方針の策定と徹底が必要です。また、策定したルールについては、監査法人と事前に充分に協議し、合意することも重要になります。この際、重要性金額の妥当性、合理性の担保、見込みと確定値がずれた場合の対応方針などについて、充分な説明をすることが重要です。

監査において許容可能なルール設計の例:
・締め日の前倒しと締め日に基づく確定請求の計上
・見込み計上:根拠書類の変更(発注情報や検収情報を活用など)
・一定金額以下(重要性金額の採用)の見込みについては翌期間に回す

➂属人的な業務プロセス・手順:企業が急成長・拡大する状況において、少人数の経理担当者が決算を実施している場合には、業務が複雑化・属人化したり、手順が不明確になったりしがちです。特に、業務の一覧表がなく、Excel加工等で経理担当者の力量に依存している場合、経理業務はますます属人的になってしまう傾向があります。その属人化解消のためには、業務を可視化した上で、類似業務の統合とルールの見直しを行い、業務の標準化を検討した上でシステムを再設計することが必要です。
・業務を可視化:業務棚卸、一覧化による業務の全貌の明確化
・取捨選択する:必要業務の決定
・まとめる:類似業務統合
・順序を入れ替える:業務ルールの見直し、グループ統一ルールの作成
・自動化・簡素化する:業務標準化(業務設計)

非効率なものを自動化しても非効率なままです。必要な業務をシステム化・自動化し、最大の効率化をはかることが非常に重要です。システム化を推進することで、属人化していた業務を複数の担当者で分担することが可能になります。従来は直列でしか流れなかった業務が、組織的に並列化して処理され、高速化を実現できます。

決算早期化は、経営判断、意思決定を迅速に行うことで、業績向上、株価への好影響を与えることが最大の目的です。変化が激しい環境下では、速報値・見込み値だけではなく確定値に基づく早期の経営判断(=早期の確定値の把握)が必要であり、実現に向けてはデータの流れ・プロセスだけでなく、業務ルールも大きく変更し、業務効率化と決算早期化を同時に達成することが肝要です。

■オラクルのファイナンス部門のDXを支えるOracle Fusion Cloud ERP/EPM

本セッションでは、オラクル自身が取り組んだ事業変革、それを通じてファイナンス部門が実行したDXの取り組みと成果、およびそれを支えるCloud ERPCloud EPMについてご紹介させていただきました。

オラクルでは、近年のクラウドシフトにより、モノを提供する企業からサービス提供企業への変革を進めています。このビジネスモデルの変革にあたり、各業務部門では様々な改革を進め実績を上げてきました。会計領域においては9日での四半期決算開示(S&P500の平均が31日)、日本においても18日(国内平均41日)で開示しています。

このDX化でオラクル自身が学んだ成功の秘訣は、「簡素化」、「標準化」、「集中化」、「自動化」です。

会計領域では具体的に、勘定科目体系や元帳構成の「簡素化」や「標準化」、勘定照合業務の「自動化」に取り組みました。

・COA(勘定科目体系):従来は、32種類のユニークなCOAを総勘定元帳(GL)に保持していました。新システムでは、財務会計に必要な情報だけを標準のCOAへ変更し、世界共通の勘定科目体系としました。その結果、ビジネス・ユニット間でレポートされる情報の一貫性を確保し、整合性を確保することができました。またCOAが統一されたことにより、異なる部門間や地域間でのベンチマークが容易になりました。

・元帳構成:新システムでは、管理会計に必要なデータは補助元帳に保持するようにしています。仕訳の分析軸をより細かくして、分析に適した元帳としました。総勘定元帳自体は、シンプルな構成とすることで、財管一致を担保したまま財務会計における決算関連業務の高速化と詳細なデータ分析を両立できるような元帳構成としました。

・勘定照合業務:勘定照合業務を一定のルールに基づいて自動化し、その結果40%の自動化を実現しました。元帳体系を一新したことにより、請求書の自動照合だけではなく、様々な取引に対して自動化を進めることが可能になりました。


 

今後も連結決算業務の様々なフェーズにおいて自動化を推進、最終的には1Day決算を目指しています。

 

Oracle Fusion Cloud ERPCloud EPMは、過去のデータ(ERP)に基づくインサイトと未来のシミュレーション(EPM)を実現できる唯一のビジネスアプリケーションであり、決算早期化、経営管理の高度化を支えるソリューションです。ソリューションを通して、財務・経理部門の皆様の意思決定を高度化し、時間の使い方を変え、経営計画の達成に向けたご支援を行います。

ウェビナーでご紹介させていただいた内容をサマリーしているため文章では伝わりにくい点もあるかと思います。ご興味・ご関心がございましたら、ご説明・ご討議の機会をいただければと思います。お気軽にご連絡・お問い合わせください。

グローウィン・パートナーズ様共催セミナー事務局
船橋 直樹
naoki.funabashi@oracle.com