※ 本記事は、Charles Homsによる“Why Oracle closes its books twice as fast as SAP and Workday”を翻訳/意訳したものです。

オラクルは、Workdayより14日間早く、SAPより12日間早く、四半期ごとの決算処理を行うことができます。年間では、Workdayとの差は56日間、SAPとの差は48日間になります。1年間にそんなに多くの日が増えたら、会計部門は何が達成できるかと想像してみてください。

会計システムにおいて適切にデータを管理していれば、決算を迅速化できるだけではなく、ビジネスにおいて変化する需要や新たな機会にも迅速に対応できます。Oracle Fusion Cloud Applicationsでは、このような四半期ごとのプロセスの高速化のために、AIが重要なパートとなってきています。

oracle is 2x faster to close the books
図1.  2015年以降、四半期ごとの決算処理に要する平均日数。出典:Refinitiv Eikon

 

ビジネスのスピードをあげるには、より多くのデータではなく、より適切なデータが必要

SAPやWorkdayなどのアプリケーション・ベンダーは、より多くのデータを会計アプリケーションに組み込む方がよいと考える傾向があります。データ主導のイノベーションを考えると、多いほどよい、つまりデータが多くあるほど、より分析できるようになり、企業はよりインテリジェントに見えると考える人がいるかもしれません。しかし実際に、会計システムに最適なデータとはどれくらいの量でしょうか?会計システムに絶対に必要という訳ではないデータをどこに保存しますか?どのような分析をしたら役に立つでしょうか?データ主導のイノベーションの恩恵を受けるには、一体どのくらいのデータが必要なのでしょうか?

検討してみましょう。

会計では、従来、元帳のキーとなる項目は、少なくとも次のデータ要素から構成されます。

  • 会社: 企業、法的エンティティ、組織の全体、または、論理的な一部分を表す
  • 勘定項目: 残高を記録し、財務情報やレポートを編成する
  • センター: ビジネス・ユニット、部門、グループなどの組織内の論理的な単位

企業では通常、会計において上記3つとその他のいくつかのセグメントを使用します。一般的に使用されるその他のセグメント例は、プロジェクトと製品です。ほとんどの企業は、6つ程度のセグメントを使用します。Oracle Cloud ERPでは、キー・セグメントとして、30セグメント(各240文字)を含めることができます。会社、勘定項目、センター、および、その他のセグメントの組み合わせをグループ化したものを元帳と呼びます。元帳は必要な数だけ作成できます。

ラクルの元帳は、階層構造にすることができます。一部の主要なデータ要素(コスト・センターや勘定科目など)を共有しながら、他の独立したデータ要素をキーに含めるように構成することができます。各元帳は、それぞれ次のものをもちます。

  • 会計処理基準
  • 原価計算方法
  • コストの粒度
  • 原価計算期間

元帳のメンテナンスも階層化されており、上位の元帳を保守する際に、オプションとして、配下の元帳も更新するかを選ぶことができます。このように、オラクルでは、元帳を必要なだけ保持することができ、各元帳には30個のセグメントが持てるので、理論上、会計の主要なデータ要素の無限の組合せが可能になります。

Federated maintenance
図2. Oracle Fusion Applications内の階層化元帳の構造図 出典: Oracle

 

オラクルは、会計データをスマートに構造化することを考えています。対照的に、SAPとWorkdayは、データをひたすら追加し、ユーザーがそれを賢く管理することを期待しています。

SAP: SAP S/4HANAでは、「ユニバーサルジャーナル」と呼ばれるものが導入されており、SAPはこのユニバーサルジャーナルが保持できるセグメントの数を拡張しました。SAP S/4HANAでは、S/4HANA Financialsに合計999のセグメントがあり、元帳キーを構成しています。その結果、「顧客」「営業キャンペーン」「従業員グループ」をSAPの会計の元帳のキーにすることができます。このように多くのセグメントで会計を実施することは、「Thick Ledger(厚い元帳)」と呼ばれます。会計の観点から必要とされるデータよりも多くのデータが保持されています。対照的に、「Thin Ledger(薄い元帳)」では、会計レポートのために十分なデータを保持しつつ、それ以外のデータはアプリケーション・スイートの別の場所に格納されます。

Workday: 基本的に、WorkdayはSAPと同じことを行います。厚い元帳で、会計の観点で必要となるデータよりも多くの元帳キーを持ちます。データ要素はワーク・タグと呼ばれ、約100種類のワーク・タグを持つことができます。これらのワーク・タグが元帳キーを構成します。SAPと同様に、Workday Financialsでは、「顧客」「営業キャンペーン」「従業員グループ」を元帳キーにすることができます。

簡単にまとめると、次のように比較することができます。

Ledger difference
図3. 会計の比較 出典: “SAP S/4HANA Finance, an introduction”(Jens Krüger著 Rheinwerk Publishing) および”Tales of the Cloud: The Story of Worktags”(2012年Workdayブログ)

 

 

適切なデータで、よりスマートに、より効率的に

組織内のすべてのデータをよりスマートに処理し、四半期ごとの決算処理を迅速に行い、意思決定プロセスを高速化するために、次のステップを検討しましょう。

  • プレディクティブ資金予測:AIのパワーにより、プレディクティブ・プランニングは過去から学習したことを使って将来の計画を導き出します。時系列による予測法は、過去のデータのパターンやトレンドが繰り返されることを前提に、売上高や株価、月々の支出などの、将来の値を予測する手法であり、AIはその予測を迅速に検証することにも使われます。アプリケーションは予測する際に、ベストケースとワーストケースも導き出します。早く決算処理を行うことにより、計画データの分析により多くの時間を費やすことができます。
  • AIによるデジタル・アシスタント:領収書の写真を撮ったり、チャットで必要な情報を伝えることにより、経費精算書をより早く作成できます。スケジュールに沿って自動的に経費精算書を提出することで、迅速な経費精算を実現します。事前に定義しておいたルールやアラートによって例外を管理し、経費がルールから外れている場合に通知を送信します。SMSやMicrosoft Teams、その他のサードパーティ・プラットフォームからデジタル・アシスタントを利用することができます。AIを活用した経費管理によりミスを減らし、焦点を絞った監査を行うことで、時間を確実に節約できます。
  • ソース・システムのリアルタイム・データを使用:すでに、カスタマー・エクスペリエンス・アプリケーションの中には営業データが、人材管理には従業員データが、サプライチェーン管理にはサプライチェーン・データが、ERPには会計および計画データがあります。また、オラクルでは、Fusion Data Intelligence Platform (FDIP)においてセマンティク・データ・モデルを採用しており、エンド・ユーザーは、ITチームに頼ることなく、それぞれのソース・システムで一般的に使われているビジネス用語を使用して、これらすべてのアプリケーションのデータを取り扱うことができます。SAPやWorkdayの「厚い元帳」でやっているように、人材管理、サプライチェーン管理、カスタマー・エクスペリエンス・アプリケーションから総勘定元帳にデータを複製する必要はありません。
  • サステナブルな考え方を会計プロセスに取りいれる:大企業にとっても中小企業にとっても、サステナビリティ・レポートへの対応は大きな負担になりやすいものです。サステナビリティ・レポートを決算後の後回しにするのではなく、会計における積極的な要素とすることができます。包括的なパフォーマンス管理ソリューションは、すべての利害関係者と規制当局に透明性を提供します。Oracle Cloud EPM for Sustainabilityは、財務データと非財務データの統合を可能にするため、報告要件以上のものを満たすことができます。スコープ1、2、3の活動(GHG Protocol Corporate Standard)の柔軟なマッピングが可能で、カーボンアカウンティング(炭素会計)の計算のためにデータを調整可能な排出係数にリンクします。排出量計算機は、すべての単位変換と計算を自動化し、より多くの時間を節約します。

今後のシナリオを検討

パッケージで用意されたKPI、シナリオ、ビジュアライゼーション、分析ダッシュボードを使用して、ビジネスのタイムリーな会計ビューで今後の変化に迅速に対応しましょう。

  • Fusion Data Intelligence Platform:Oracle Analytics CloudとOracle Autonomous Data Warehouse上に構築されています。データベースやデータ・ウェアハウスの設計をする必要はありませんし、チューニング、データ・ロード、モデリングも必要ありません。ただスイッチをオンにするだけです。加えて、他のアプリケーションから追加のデータを取り込んだり、シナリオを作成したりすることもできます。
  • 会計ポリシーの強化Oracle Cloud Financialsは、会計分野の単一のリポジトリです。単一の会計ルールが適用されることにより、外部システムから取り込んだ様々なトランザクションが変換され、法令、会社、規制、経営に必要なレポートに対応できるようになります。集中管理された会計基準によって、エラーを防止し、会計の訂正を減らすことができます。
  • データのコピーはしない: 通信業界や保険業界の大量の請求データなど、業界固有の詳細なトランザクション・データはソース・システムに保持します。Oracle Fusion Cloud Accounting Hub (Oracle Cloud Financialsの一部)がデータを調合し、結果を会計に送信します。詳細が必要な場合は、ソース・システムにドリル・バックします。

より詳しい情報は、Oracle Cloud ERPとSAPWorkdayとの比較情報をご覧ください。