日本オラクルでは、障害の有無に関係なく誰もが働きやすい職場作りを目指す従業員リソースグループ(ERG)であるOracle Diverse Ability Network (ODAN)が中心となり、さまざまな特別支援学校と連携し、プログラミングの出張授業を行なっています。

日本オラクルの本社から青山通りを渡ってすぐの場所にある都立青山特別支援学校では、生徒に授業を行う前にまず教員向けに研修を実施してほしいという要望があり、教員向けのScratchの研修を最初に行いました。当初は10名程度の参加を想定していましたが、40名を超える先生が参加してくれました。授業を熱心に受け、多くの質問も寄せられました。また、この授業の後に、自作のプログラミングを授業で活用している話なども伺い、教員の皆さんも学ぶ機会を求めていたのだと実感しました。

先生と相談をした結果、生徒向けの出張授業は、30分の時間枠がとれる曜日に興味を持つ生徒が自由に参加できる仕組みにし、3週連続で開催しました。

Aoyama
タブレットを利用した青山特別支援学校での授業

2回目の授業でのことです。ある生徒が私の手を取り、タブレットに触れさせることを繰り返していました。生徒が帰ってからその行動について先生に質問すると、ASD(自閉スペクトラム症)や知的障害(知的発達症)がある子どもに見られる「クレーン現象」というもので、言葉の代わりに動作で要求を表現しようとしていると教えてもらいました。生徒たちと直接触れあう時間を持つことで、さまざまなコミュニケーションがあることを学び、それ以降、生徒が手を取って画面を示したら、何かやってほしいことがあるのだとわかるようになりました。

参加した社員ボランティアたちは、「初めは参加に戸惑っていた生徒が、音が鳴るものを提示したら急に目がキラキラと輝き出して、それぞれ好きなポイントが違うと感じた」「手伝いすぎると『やめて』と主張する生徒など、個性(こだわり?)が強い生徒もいると感じた」など、特徴や個性に合わせて接する大切さを学びました。30分という短い時間の中で、絵を動かしたり音を流したりしながら、生徒たちが興味を持ったことを最大限に楽しむ時間を過ごすことができました。

東京都立永福学園の事務コースに通う高校3年生は、違った雰囲気です。普段、授業でパソコンでの作業を学んでいるため、非常に理解が深い生徒もいたり、やりたいことがはっきりしている生徒も多かったり、授業の内容も充実させました。せっかくの時間なので、決まった内容に沿った授業ではなく、なるべく多くの社員ボランティアに参加してもらい、生徒たちがやりたいことを実現するような授業にしました。最初に簡単なプログラミングの説明をしたあと、それぞれがやりたいことを自由に取り組みました。やりたいことを説明しているテキストを読みながら順番にこなしていく生徒もいれば、テキストなど無視して自分の作りたい世界を構築していく生徒もいました。ゲームを作りたい生徒、物語を作りたい生徒、とにかくイラストを極めたい生徒 ― 社員ボランティアは色々なニーズに寄り添い、頭を悩ませながらアドバイスを送りました。生徒は、それぞれがやりたいことを見つけて、プログラミングを積極的に組みました。

授業の最後に、完成したプログラムを発表しました。胸を張って表現する生徒もいれば、ちょっと恥ずかしそうに発表する生徒もいました。みんな拍手されるととても誇らしそうでした。「家に帰ったら続きをやる!」と宣言する生徒もいました。多くの社員ボランティアが生徒に接してくれることで、生徒たちの「やってみたい」を実現する時間になりました。

すでにScratchのプログラミングを授業に取り入れている千葉県立印旛特別支援学校高等部では、本社から離れていることもあり、「リモートワーク体験」と題し、以前授業で作成したプログラムをリモートでコミュニケーションを取りながら再作成することで違いを体験してもらいました。

生徒の皆さんが気持ちの準備ができるよう、初回は学習の目的やねらいのみを説明する回にし、2回目はブレイクアウトルームに分かれて、生徒は2人1組で社員ボランティア1名を一緒に、すでに習ったことのあるプログラミングを一緒に作りました。知らない大人とオンラインで話すことに緊張しながらも、どの生徒も自信をもって作り慣れたプログラミングを説明することができ、達成感を味わっていました。

このようなプログラミング授業を通じて感じるのは、色々な個性があり、その個性に合わせたコミュニケーションを取ることの大切さです。参加している社員ボランティアは、さまざまな障害があっても、一人一人に向き合うことで、意思を伝え合えるという体験をしています。ODANの活動は、障害の有無に関係なく、誰もが働きやすい職場環境を作ることを目指しています。これらのプログラミング授業を通じ、生徒と触れ合うことで、生徒以上に私たちは多くを学んでいます。

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印旛特別支援学校での「リモートワーク体験」 。東京にいる日本オラクルの社員と遠隔で学習