2024年3月8日の国際女性デーに、オラクルの女性社員の活躍を推進するOracle Women’s Leadership(以下、OWL)メンバーが中心となって企画した社内イベントが開催されました。今年のゲストにお迎えしたのは、これまで数多くの企業の代表を歴任し、2009年からは3期連続で横浜市長を務めあげた林文子さん。今年の国際女性デーのグローバルテーマでもある “Inspire Inclusion”にちなんで、組織で相互理解を進めながら働くことの楽しさについてお話しいただきました。その基調講演の内容をレポートします。
男性の補佐的な仕事しか与えられない時代から、自らの道を切り開いてきた
林さんは高校卒業後、大手繊維メーカーに就職されました。1965年といえば、当時、高度経済成長期の真っ只中。労働市場への女性参加が大きく進んだものの、男女雇用機会均等法ができる20年も前ですから、男女の仕事差は歴然でした。「お茶汲み・コピー、タバコ買い」と言われるような、男性の補佐的な仕事しか与えられず、転職を繰り返す日々。しかし、31歳の時に運命的な仕事に出会い、そのチャンスを自ら掴み取ります。
それは、自動車販売の仕事でした。当時は女性のセールスは前例がなく、面接の機会すらもらえず門前払いからのスタートでしたが、熱い想いを伝え続けることで入社までこぎつけます。毎日100人のお客さまと話すことを自らに課し「おもてなしのセールス」を徹底することで、瞬く間にトップセールスに輝きました。その後、自動車業界にも外資系企業参入の波が押し寄せる中、また新たなチャンスを掴みます。成績のふるわない支店の支店長に女性として初めて抜擢されると、対話を重んじ、失敗を責めず共有し合い、褒めて伸ばすことで部下の成績向上にも尽力。たった1年で結果を出し、最終的に日本法人の代表取締役までのぼり詰めました。
さらに、躍進は止まりません。さまざまな企業の代表取締役を歴任した後、2009年から2021年まで3期にわたって横浜市長務めます。住みよく働きやすいまちづくりや積極的な企業誘致、そして全国に先駆けて取り組まれた「待機児童ゼロ」の実現に代表されるような女性活躍推進の取り組みなど、これまでの功績が国内のみならず国際的にも評価され、旭日中勲章、大英帝国勲章MBE、フランス国家最高勲章である「レジオン・ドヌール勲章」と三カ国で受賞されました。
林文子流・自ら仕事を切り開いていくための5つの格言
高度経済成長期から現在までの約60年間の軌跡を、さまざまなエピソードを交えながらお話いただきましたが、さすが先陣を切って時代を切り開いてこられた林さんです。人生そのものが波乱万丈。スライドを1枚も使わず、原稿もメモも一切なく、90分間一気に駆けぬけました。まさに落語を聞いているかのような面白さで、参加者たちの心を離しませんでした。

林さんのお話には、男女問わず、働く楽しさや生きる喜びについて改めて考えるきっかけになる[林文子流・仕事を切り開く格言]がありましたので、エピソードも交え5つご紹介します。
- 既成概念に囚われず、「自分たちはハッピーになれるんだ!」と自分を信じる力を持つ
- 前例がなくても、想いをとにかく伝える(採用面接に漕ぎつけるために「私を採用するとこのようなメリットがある」と7枚お手紙をしたためたそう)
- 人のこころを動かすのは「共感」と「おもてなし」。モノを売ろうとするのではなく、その裏側にあるストーリーや感動を伝えることでトップセールスに(車好きだったという林さん。ご自身がどんなに感動したかを押し付けに聞こえないように伝え販売に導いたとのこと)
- 褒めて育てる。悪いところではなく良いところを見つけ、人間関係を作ることからスタート(部下の失敗に直面した際に林さんは、上司として自分の至らなかった点を部下と共有し「明日からはがんばりましょう」と励まし、日頃の頑張りを褒め、感謝を伝えることを徹底されていたとか)
- 会話をする時には常に相手に寄り添う。たとえ嫌だな、と思っても「自分だったらどうなんだろう」と思い馳せることで、その人のことが好きになるはず
林さんは基調講演の締めくくりに、「職場ってなんて素敵なんだろう、と思っています。私、サラリーマン生活大好きなんです!」とエネルギッシュにお話しになりました。
筆者コメント
先日発表されたジェンダーギャップ指数で日本は146カ国のうち125位という結果でした。「性差や個性を生かしながら一緒に仕事をするとビジネスが成長する、成果が出る」という林さんの言葉からは、既成概念にとらわれすぎず、 働く誰もが心の奥で願い追い求めている“働くことの面白さ”や“生きる喜び”について純粋に考え、行動に移していくことの重要性に気づかされたような気がします。林さんの軌跡はぜひ、著書でご覧ください。
