※ 本記事は、Manoj Gadhave, Miles Jacksonによる”Powering real-time race intelligence for Red Bull Max vs 100 with OCI“を翻訳したものです。

2026年11月1日

この記事は転載です。元の記事をご覧ください

OCIが、レースのライブデータをダッシュボード、AI/MLによる予測、放送に活用できる知見へと変えるうえで、どのように役立ったか。

世界最速のレーサーの一人であるMax Verstappenが100人のドライバーを追うとき、刻一刻と新しい物語が生まれます。誰が差を詰め、誰がタイムを失い、どの戦略が結果を変え得るのでしょうか。

Red Bull Max vs 100では、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)が、レースのライブ信号を、レースコントロール、イベント運営チーム、顧客システム、ライブ放送チャネル向けのリアルタイムインテリジェンスに変える支援をしました。目標は、テレメトリをサーキットからクラウドに移動することだけではありませんでした。ダッシュボード、用途に合わせて整備されたデータストリーム、AI/MLによる予測を通じて、その場での意思決定とレースの展開を伝える取り組みを支えることでした。

リアルタイムレースインテリジェンスの課題

Red Bull Max vs 100は、従来型のカートレースではありませんでした。この形式には、ドライバーが特定の条件下でのみ使用できるショートカット(ジョーカールート)やペナルティルートが含まれていました。標準的な周回数と順位のモデルだけでは不十分でした。プラットフォームは、各ドライバーがどこにいて、どのルートを走行し、その選択がレースの進行にどのように影響するかを理解する必要がありました。

データに関する課題も特殊でした。過去のレースデータは、出走者が約50人と少ない、限られた数の過去のイベントのものしかありませんでした。Max vs 100では、システムは、より規模が大きく、状況が変化しやすいレースに対応すると同時に、限られた過去データ、周回単位のライブデータ、現在の順位、ルートの選択、変化するレース状況から、意味のある予測を生み出す必要がありました。

同時に、プラットフォームには、ライブのGPSデータとタイミングデータの取り込み、レース状態の導出、ダッシュボードへのデータ提供、整備されたストリームの公開に加え、再生、フォールバック、検証に備えることが求められました。

MaxVs100のアーキテクチャ

MaxVs100のアーキテクチャ

レースの進行をその場で捉える

最初のステップは、展開するレースを確実に捉えることでした。MaxV100の取り込みレイヤーは、Al KamelからのライブのタイミングデータとGPSフィードに接続し、受信メッセージを解析して、GPSペイロードを正規化された内部レースフィード形式に変換しました。

この正規化により、プラットフォームは、観測されたレースデータの一貫した情報源を得ました。各ダッシュボードやデータ利用側に生のタイミングプロトコルの理解を求めることなく、フィードを取り込み、信号を保持し、利用可能にするという、シンプルなパイプラインを維持しました。

ライブ信号をレースのコンテキストに変える

ライブのGPSデータとタイミングデータは、ドライバーの位置を示すことができますが、レースインテリジェンスにはコンテキストが必要です。MaxV100のテレメトリレイヤーは、正規化されたフィードに情報を付加し、周回内の走行距離、レースの進捗、速度差、タイム差、カートごとのジョーカールートとペナルティルートの使用状況、注目ドライバーの状態、ドライバーの状態といったレース状態を導出しました。

ショートカット(ジョーカールート)とペナルティルートは、周回やレースにおける順位と進捗のロジックや意味を変える可能性がありました。OCIは、ライブ信号を一貫したレースのコンテキストに変えることで、レースコントロール、放送システム、外部のデータ利用側に向けたインテリジェンスレイヤーを支援しました。

レースコントロールに運営状況をリアルタイムで提供

MaxVs100のレースダッシュボード

MaxVs100のレースダッシュボード

レースコントロールには、生のテレメトリ以上のものが必要でした。レースデータを一目で把握し、解釈し、行動に移せるようにする、リアルタイムの運営状況の全体像が求められていました。

MaxV100のダッシュボードは、ライブマップ、順位表、タイム差の表示、追走状況のボード、ジョーカーの使用状況、周回チャート、レース状態の表示を通じて、そのコンテキストを集約しました。出走台数が多く、ルートのルールやショートカットの選択があり、レース状況も変化する中で、ダッシュボードは、その場での意思決定を支える共通のリアルタイム表示をチームに提供するうえで役立ちました。

ダッシュボードの外にも整備されたデータを届ける

同じレースインテリジェンスを、コントロールルームの外にあるシステムにも届ける必要がありました。放送チャネルと顧客システムが必要としていたのは、タイムリーなレースデータであり、すべての生のテレメトリパケットではありませんでした。

MaxV100 Data API Gatewayは、OCI上でホストされたインフラストラクチャから、整備されたデータを提供するWebSocketのインターフェース仕様を公開しました。高頻度の生のテレメトリを公開する代わりに、レースのスナップショット、レース予測、ジョーカー戦略、注目ドライバーの追走データといった構造化されたストリームを配信しました。認証とヘルスチェックは、レース当日の監視を支えました。

レースの次の展開を予測する

MaxVs100の予測

MaxVs100の予測

リアルタイムインテリジェンスは、いま起きていることを知るだけのものではありません。AI/MLを活用した予測レイヤーは、周回単位で蓄積されるライブのレース履歴、現在の順位、出走台数、注目ドライバーのコンテキスト、ルートの選択、変化するレース状態を使用して、レースがどのように展開する可能性があるかを予測しました。

誰が追い付かれる可能性があるか、どこで差が縮まり得るか、注目ドライバーの追走がどのように進むかを推定するうえで役立ちました。また、ルートの選択がチャンスを生むタイミング、リスクとなるタイミング、予想順位や追い越し可能なタイミングに影響する場面を特定し、ジョーカーとショートカットの戦略に関する知見も提供しました。

目標は、未来を完璧に予測することではありませんでした。現在のレース信号を、タイムリーで説明可能な予測に変え、レースコントロールを支援し、放送チームがレースの展開をより明確に伝えられるようにすることでした。

OCIを選ぶ理由

OCIは、Max vs 100をライブデータフィードからリアルタイムのレースインテリジェンス体験へと変える、クラウド基盤を提供しました。プラットフォームは、ライブデータを処理し、複数の利用者層を同時に支える必要がありました。

レースインテリジェンスのスタックは、ライブデータの取り込み機構、テレメトリサーバー、予測モデル、リアルタイムデータゲートウェイ、ダッシュボードのすべてにわたり、OCI上で稼働しました。これらのサービスは連携してレースデータを取得し、情報を付加してコンテキストを形成し、予測を生成し、整備されたストリームをレースコントロール、顧客システム、放送チャネルに配信しました。

リアルタイムデータゲートウェイは、Oracle Cloud Infrastructure Computeと、外部アクセス用のOracle Cloud Infrastructure Flexible Network Load Balancerを使用しました。Oracle Cloud Infrastructure Bastion、Terraform、ヘルスチェックが、再現可能な運用を支えました。

OCIは、ライブ運用のためにアーキテクチャを明確な機能レイヤーに整理しつつ、取り込み、テレメトリ処理、予測、可視化、外部へのデータ配信を分離するうえで役立ちました。ライブ信号を、AI/MLによる知見を伴うリアルタイムの意思決定に変える必要がある場面であれば、同じパターンをレース以外にも適用できます。

得られた知見

Max vs 100は、リアルタイムデータアプリケーションに関する3つの原則を再確認する機会となりました。それは、安定したデータの受け渡し仕様を早い段階で確立すること、生のテレメトリと整備されたインテリジェンスを分離すること、そして、合成フィード、ヘルスチェック、ステータスエンドポイント、再生可能なデータを備え、最初からライブ運用を想定して設計することです。

結論と次のアクション

Red Bull Max vs 100は、レースのライブデータが、単なるテレメトリをはるかに超えるものになり得ることを示しました。OCIをクラウド基盤とすることで、プラットフォームは、絶え間なく流れる信号を、レースコントロール向けのリアルタイムインテリジェンス、放送に活用できる予測、整備されたデータストリームに変えました。

同じアプローチは、車両、製造ライン、物流ネットワーク、エネルギー設備、顧客向けシステムから得られるライブの運用データに基づき、意思決定が進行している間に組織が行動するうえで役立ちます。

同様のリアルタイムデータアプリケーションを構築する方法を知るには、Oracle Cloud Infrastructure Architecture Centerにアクセスし、Oracle Cloud InfrastructureのCompute、ネットワーキング、ロードバランシング、AI/MLサービスについて詳しくご確認ください。

「私は幸運にも、Maxと対戦する100人の一人になることができました。カートに乗っているときは、自分のレースに完全に集中しています。しかし舞台裏では、100通りの物語が同時に展開していました。OCIは、その複雑さをリアルタイムで理解するうえで役立ち、イベントを運営するチームに価値ある知見を提供するとともに、観客にレースの物語を生き生きと伝える支援もしてくれました。」

Jack Harington
Red Bull Racing & Red Bull Technology、技術およびパフォーマンスパートナーシップ責任者