OCVSと特徴と優位性について
▼はじめに
前回、どうする仮想化基盤?vol.1 で日本オラクルが提供するVMwareを取り巻く状況のご説明・サービス・日本オラクルが提供するスキルトランスファについてご紹介をしました。
本記事では技術的な特徴や優位性についてお伝えさせていただきます。
OCVSは、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上でVMware環境をそのまま稼働させることができるサービスであり、オンプレミスと同様の運用感覚でクラウドのメリットを享受できる点が特徴です。
この記事を通じて、OCVSの導入による運用の柔軟性や拡張性、コスト効率の向上について理解を深めていただき、クラウド移行に向けた最適な選択肢を見つけていただくことを目的としています。
本記事の内容は大きく6セクション構成となっています。
●Oracle Cloud VMware Solution の概要
●柔軟性と拡張性
●高可用性
●SDDCの配置とネットワーク
●ユーザーへの管理者権限の付与
●ESXiホストの選択肢(シェイプ)
▼Oracle Cloud VMware Solutionについて
Oracle Cloud VMware Solution(OCVS)は、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上でVMware環境を稼働させるためのクラウドサービスです。オンプレミスのVMwareワークロードをそのままクラウドへ移行し、運用管理の効率化や柔軟なリソース拡張を実現するための最適なソリューションとなっています。
・VMwareライセンスを含む従量課金で利用可能
OCVSは、vSphere、vSAN、ESXi、NSX、HCXなど、主要なVMware製品を含むライセンスを従量課金で利用できます。時間単位、月単位、1年、または3年のサブスクリプションモデルが提供されており、ニーズに合わせた柔軟な課金形態でコスト管理が可能です。
・スケーラブルな要件に対応するリソース提供
OCVSは、幅広いスケーラビリティの要件に対応できるよう設計されています。CPUコア数は32から最大8,192コア、メモリーは2.3TBから131TBまで、ストレージは154TBから3.48PBに対応しており、大規模なワークロードにも適応できるリソースを提供します。
・全てのOCIリージョンで利用可能
OCVSは、グローバルに展開する全てのOCIリージョンで利用可能です。
日本国内の2つのリージョン(東京、大阪)はもちろん、Dedicated Region Cloud @ Customerを含む全OCIリージョンで展開されています。これにより、ビジネスの成長や多様なニーズに応じて、柔軟なデプロイメントが可能です。
・ユーザーによる完全な制御
OCVSでは、ユーザーがrootやadmin権限を保持し、VMwareのバージョン管理やパッチ適用、Layer 2ネットワークの設定など、クラウド環境を完全に制御できます。このため、オンプレミス同様の運用が可能で、既存の運用ポリシーやセキュリティ要件をそのまま維持しつつ、クラウドのメリットを最大限に享受することができます。

▼高い柔軟性と拡張性
Oracle Cloud VMware Solution(OCVS)は、ビジネスの成長や変化するワークロードに合わせて、迅速かつ効率的にインフラを拡張・縮小することができる高い柔軟性と拡張性を提供します。これにより、必要なリソースを必要な時に最適化して利用することが可能となり、コストの最適化を実現します。
ここでは、OCVSの柔軟性と拡張性の特徴をご紹介します。
・迅速な環境構築
OCVSは、簡単なWebコンソール操作を通じて、約2.5時間でVMware環境の構築が完了します。
従来のオンプレミス環境での構築に比べ、劇的に短縮されたセットアップ時間は、迅速なビジネス展開を可能にします。
・スケーラブルなホスト構成
本番環境では、最小3台のESXiホストからスタートし、最大64台までのホストに拡張が可能です。ホストの追加や削除は約1時間で完了するため、リソースの追加・削減もスムーズに行えます。
また、テストに適した1台構成のクラスタも提供されており、用途に応じた柔軟な構成が可能です。
・柔軟な課金オプション
追加されるESXiホストごとに、時間単位、月単位、1年、または3年の課金オプションが選択できます。
さらに、クラスタ内で異なる課金オプションを混在させることも可能なため、コスト管理の自由度が高まります。これにより、使用状況に応じた最適なコスト構造を実現します。
・ハイブリッドクラウドの構築
OCVSは、OCIが提供するFastConnectやVPNと組み合わせて、オンプレミスのデータセンターとクラウドをつなぐハイブリッドクラウド構成が可能です。このハイブリッドアプローチにより、既存のオンプレミスリソースを活かしつつ、クラウドの柔軟性とスケーラビリティを最大限に活用できます。

▼高可用性
Oracle Cloud VMware Solution(OCVS)は、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の堅牢なファシリティを活用し、ビジネスクリティカルなワークロードに対して高い可用性を提供します。
災害時の復旧や機器障害に対する強靭性を備え、システムの継続的な稼働をサポートします。
以下にOCVSが提供する高可用性の特徴を詳しくご紹介します。
・フォルト・ドメインの活用による高可用性
OCVSは、基本的に最低3台のベアメタル・サーバーをESXiホストとして構成します。
各サーバーは異なるフォルト・ドメインに分散されており、これにより高可用性が構築されます。
フォルト・ドメインとは、リージョン内で物理的に独立した電源やネットワークを持つデータセンターファシリティのことで、各ホストが異なるフォルト・ドメインに分散することで、単一障害点のリスクを回避します。
これにより、データセンター障害が発生しても他のホストに影響を及ぼさず、安定したシステム運用が可能です。
4台以上のESXiホストを追加する場合も、フォルト・ドメインが均等になるようにホストを分散するため、最大64台までの大規模構成でも高い可用性を維持できます。

・災害復旧(DR)構成の実現
OCVSでは、OCIのバックボーン回線を活用し、リージョン間を低遅延で接続することができます。例えば、東京と大阪の間で接続が可能で、この接続を利用することで、リージョン間の災害復旧(DR)構成が容易に実現できます。
これにより、自然災害や広範囲なシステム障害が発生した場合でも、迅速な復旧とシステムの継続性を確保します。

▼SDDCの配置とネットワーク
Oracle Cloud VMware Solution(OCVS)は、Software-Defined Data Center(SDDC)をお客様のVirtual Cloud Network(VCN)内に直接プロビジョニングすることで、OCIの他のサービスとシームレスに統合されます。
これにより、ネットワークの複雑さを最小限に抑えつつ、クラウド上での柔軟な運用が可能です。
以下に、OCVSのSDDC配置とネットワークの特徴をご紹介します。
・VCN内でのシームレスなプロビジョニング
OCVSは、OCIのVCN内に直接プロビジョニングされるため、専用のネットワーク環境での安全かつ効率的な運用が可能です。
この設計により、オンプレミス環境からクラウド環境への移行がスムーズに行え、既存のネットワーク設定やセキュリティ・ポリシーをそのまま活用できます。
・特別なゲートウェイが不要
OCVSと他のOCIサービス間の通信には特別なゲートウェイを必要としません。
これにより、追加の設定やコストをかけることなく、迅速かつ低遅延でOCIの幅広いサービスと連携できます。
たとえば、Oracle Database、IaaS/PaaSサービスとのシームレスな統合が可能です。
・低遅延のネットワーク接続
OCIのネットワークインフラは、低遅延で高帯域幅の接続を提供するため、OCVSのSDDCと他のOCIサービス間のデータ転送が高速で行えます。
この高性能なネットワークにより、リアルタイム性が求められるアプリケーションやデータ集約型のワークロードでも高いパフォーマンスを発揮します。

▼管理者権限の付与
Oracle Cloud VMware Solution(OCVS)は、他クラウドのVMware関連ソリューションと比較して、ユーザーに対して強い管理権限を提供します。
特に、ESXiホストの管理者権限をユーザー自身が保持できる点が大きな特徴です。
以下に、OCVSが他のVMwareソリューションとどのように異なるかを詳しく説明します。
・ユーザーによる完全な管理者権限の保持
OCVSでは、ESXiホストの管理者権限がユーザー自身に付与されるため、オンプレミス環境と同様に、自由にバージョン管理やアップデートが行えます。
たとえば、システムのアップデートを任意のタイミングで実施できるため、業務スケジュールに合わせたメンテナンスが可能です。
また、最新の機能をいち早く試したい場合や、特定のバージョンを維持したい場合など、ニーズに応じた柔軟な対応が可能です。
・管理者権限による柔軟な運用
バージョン管理だけでなく、アプリケーションや他のシステムとの連携においても管理者権限が重要です。
OCVSでは、管理者権限を持つことで、必要に応じて設定の変更や追加の構成をユーザー側で迅速に行うことができます。
これにより、特定のアプリケーションとの統合やカスタム設定が求められる場合でも、外部のサポートに依存せず、自分たちで問題を解決できるため、運用の自由度が高まります。
尚、OCIでは脱VMwareの移行を検討しているお客様に対して、OCIでは様々なソリューションを提供しています。
IaaS環境やコンテナ、サーバーレスの環境への移行、オンプレミスに設置できるクラウド「Oracle Compute Cloud at Customer」、さらにはKVMへの移行を希望するお客様には「Oracle Linux Virtualization」というソリューションの用意があります。
様々なソリューションで受け入れ可能な仕組みが用意されているということを理解していただければ幸いです。


・柔軟なツール選択と既存ツールの利用
OCVSでは、すべてのVMwareコンポーネントへのルート・アクセスが許可されるため、サードパーティ製のツールやソフトウェアの使用に制限がありません。
例えば、Veeam社のドキュメントにも記載されているように、OCVSではVeeamソフトウェアでの操作に制限がなく、バックアップやリストアなどの機能を自由に活用できます。
この柔軟性により、移行元環境で使用していた慣れ親しんだツールをそのまま利用することができ、ツールの選択肢が広がることも大きなメリットです。
▼ESXiホストの選択肢(シェイプ)
Oracle Cloud VMware Solution(OCVS)は、利用するESXiホストのシェイプや価格設定間隔コミットメント、OCPU数などによって利用料が異なります。
ここでは、主なシェイプの選択肢と価格設定間隔コミットメントについて詳しく解説します。適切なシェイプとコミットメントを選ぶことで、コストを最適化しながら必要な性能を確保することが可能です。
価格設定間隔コミットメントは、ESXiホストの最低起動時間を指定するもので、利用料の大きな要素となります。
毎時、月次、1年、3年から選択可能で、長期コミットメントほど時間あたりの利用料が安価になります。
これにより、短期的なプロジェクトから長期のビジネス運用まで、柔軟な価格設定が可能です。
毎時(Hourly): 短期の利用に最適で、柔軟性が高い。
月次(Monthly): 中期的なプロジェクトに適したバランスの取れたオプション。
1年: 長期の利用に向いており、コスト削減が期待できる。
3年: 最も長期のコミットメントで、最大のコスト効率が得られる。
OCVSでは、以下の3つのシェイプが提供されており、それぞれのシェイプによって利用料やリソース構成が異なります。
各シェイプの特徴を理解し、用途に合わせた選択を行うことが重要となります。
・Standardシェイプ
構成: 複数ESXiホストの構成のみ可能。
特徴: コスト効率が良く、標準的なワークロードに適したシェイプです。
・Denseシェイプ
構成: 単一ESXiホストまたは複数ESXiホストの構成が可能。
特徴: 高いストレージ容量とパフォーマンスを提供し、柔軟な使用シナリオに対応します。
・NVIDIA GPUシェイプ
構成: 単一ESXiホストまたは複数ESXiホストの構成が可能。
特徴: GPUアクセラレーションを必要とするAI/MLや高性能計算(HPC)ワークロードに最適です。

▼まとめ
Oracle Cloud VMware Solution(OCVS)は、オンプレミスのVMware環境をクラウドへ移行し、運用の柔軟性と効率を最大化するためのソリューションです。
この記事では、OCVSの概要から高い柔軟性と拡張性、高可用性、SDDCの配置とネットワーク、VMware関連ソリューションとの違い、そしてESXiホストの選択肢について説明させていただきました。
OCVSは、OCIの堅牢なインフラを活用し、ビジネスニーズに合わせたスケーラブルなリソース提供を実現します。
ユーザーに完全な管理者権限が付与されるため、オンプレミスと同じようにバージョン管理やアップデートを自由に行うことができ、複雑なネットワーク設定も簡素化されています。さらに、幅広い価格設定間隔コミットメントや多様なシェイプの選択肢により、コストの最適化が可能であり、ビジネスの成長に応じた柔軟なリソース調整ができます。
クラウド移行を検討している企業にとって、OCVSは既存のVMware資産を有効活用しながら、クラウドのメリットを最大限に引き出す理想的な選択肢です。
オンプレミス環境の延長線上にあるクラウドソリューションとして、移行のハードルを低くし、迅速な導入と運用効率の向上を可能にします。
OCVSを導入することで、ビジネスの柔軟性を高め、競争力を強化しながら、クラウド時代の新しいITインフラを構築していきましょう。
ぜひ、OCVSを活用し、次世代のクラウド運用を体感してみてください。
以上