前回は、TransCelerate Biopharma Inc. が提唱するDigital Data Flow (DDF)のコンセプトについて紹介しました。DDFは、臨床試験の試験デザイン情報をデジタル化し、複数の臨床試験システムで再利用することで、試験準備プロセスの効率化と自動化を目指す取り組みです。
今回、第3回では、USDMについて詳しく紹介します。
なお、本連載の過去記事は以下よりご覧いただけます。
・第1回:ICH M11とは何か 〜Digital Protocol時代の到来〜
・第2回:TransCelerateが提唱するDigital Data Flowコンセプト
このDigital Data Flowを実現するためには、システム間で共通に理解できるデータモデルが必要になります。そこで重要な役割を果たすのが USDM (Unified Study Definitions Model)です。
USDMは、CDISCが開発している臨床試験プロトコールのデザイン情報を表現するための共通データモデルで、Arm、Visit、Activityをはじめとした臨床試験デザインの各要素を構造化されたメタデータとして定義することを目的としています。ここでいうメタデータとは、例えば「投与群A」「Visit 1」「血圧測定」といった試験設計上の情報を、文章ではなくデータ項目として扱えるようにしたものです。
USDMでは、臨床試験を構成する要素をデータオブジェクトとして定義します。例えば、
- Study
- Study Version
- Study Design
- Arm
- Visit
- Activity
- Eligibility Criteria
といった試験設計の要素が、Machine Readableな形式(機械が読み取れる構造化データ)で表現されます。
これまで、これらの情報はプロトコール文書の中で文章や図・表として記述されているだけであり、EDCやeCOA、RTSM、CTMSなどのシステムを構築・設定する際には、人がプロトコール文書に記載されている内容を解釈して仕様書を作成し、仕様書に基づいてシステムを構築する必要がありました。デジタル化・構造化されたUSDMを用いることで、試験デザイン情報をデータとして管理し、システム間でのデータ連携が容易になります。
USDMは単なるデータ定義ではなく、JSON形式によるデータ交換やAPI連携などを通じて別のシステムに連携することを想定したリファレンスアーキテクチャとして設計されています。そのため、EDCやeCOA、RTSM 、CTMSなどのシステムがUSDMを共通言語として利用することで、異なるシステム間・ベンダー間の相互運用性(Interoperability)を高めることが期待されています。
ICH M11とUSDMの関係
USDMは現在、ICH M11との連携も議論されています。USDMとM11の関係ですが、一緒の文脈で語られることも多いのですが、
- ICH M11はプロトコール文書の目次本文の標準
- USDMは臨床試験の設計情報を表現・交換するためのデータモデル
ということが言えると思います。
図. ICH M11とUSDMの関係

具体的には、ICH M11では臨床試験プロトコール文書本文の構造化は行われているものの、試験デザインは構造化されておらず、1.3 Schedule of Activityのデータ型はText, imageとなっています。当初、USDMは臨床試験の構造化要素(例えば Schedule of Activities (SoA))に焦点を当てて開発がすすめられましたが、Phaseが進むにつれ構造化要素に加え非構造化要素(テキスト情報)も格納する方向に拡張されました1。
図. USDMの進化

おそらく今後の方向性としては、ICH M11ベースで構築された臨床試験プロトコールを試験設計情報を伴ったUSDM形式で送信することが主流になってくるのではないかと推察しています。
次回は、Digital Data Flowのユースケースについて紹介します。
参考資料
- Digital Data Flow (DDF) Project – Phase 3 Public Review Webinar. URL: https://www.cdisc.org/sites/default/files/pdf/2024-02-01%20-%20DDF%20Phase%203%20Public%20Review%20Webinar%20%281%29.pdf
