第1回から第3回までにDigital Data Flow(DDF)のコンセプトと、それを支えるデータモデルであるUSDMについて紹介してきました。では、これらの概念は実際にどこまで実装可能なのでしょうか。その検証の場として実施されたのがTransCelerate DDF Connectathon1, 2(2022年)です。(Connectathon(コネクタソン)とは、Connection(接続)とMarathon(マラソン)を組み合わせた造語です。)
DDF Connectathonは、製薬企業、CRO、ITベンダーなどが参加する実証型の共同イベントで、USDMおよびStudy Definition Repository(SDR)を用いたデータ連携の検証が行われました3。このPoCイベントには多くの組織が参加し、複数のソリューションが実際に接続・検証されるなど業界横断での取り組みとなりました。
このConnectathonの特徴は、単なるコンセプト説明ではなく、実際のシステム同士を接続し、データの流れを検証する「実践型の場」である点にあります。参加企業は、自社ソリューションがUSDMにどの程度対応しているか、また他社システムとどのように連携できるかを検証しました。
Connectathonでは主に以下の観点で評価が行われました。
- USDMデータのカバレッジ(どこまでの要素を扱えるか)
- APIによるデータ連携
- 複数システム間の統合(Integration)
- プロセス自動化(Automation)
- ユーザビリティや可視化
Oracle × Nurocorのユースケース 〜API連携によるEnd-to-End自動化〜
Connectathonの中でも注目すべき事例の一つが、OracleとNurocorによる共同プロジェクト4, 5です。この取り組みでは、Nurocorのプラットフォーム(Nurocor Clinical Platform)とDDFの中核コンポーネントであるSDRをAPIで接続し、さらにOracleのClinical Oneと連携することで、エンドツーエンドのデータフローの自動化が実証されました。
具体的には、
- Nurocorで試験デザイン情報(SoAなど)を構造化
- USDM形式でSDRに格納
- API経由でOracle Clinical Oneへ連携
- EDCの構築を自動化
といった一連の流れが実現されています。
このPoCでは、単なるデータ交換にとどまらず、実際の試験セットアップの自動化まで踏み込んでいる点が特徴です。OracleとNurocorはこの取り組みにおいて、SDRとの接続およびEDCセットアップの自動化を実証し、Connectathonで高い評価(Distinguished Submission)を獲得しています。

今後は、このような実証を踏まえ、各企業がどのように自社のプロセスにDDFを取り入れていくかが重要なテーマとなると思います。次回は、規制当局側のユースケースとして、FDA PRISMにおけるDigital Data Flowの活用について紹介します。
参考URL
- TransCelerate DDF Connectathon概要: https://www.transceleratebiopharmainc.com/events/connect-a-thon-digital-data-flow-organizing-and-automating-the-study-protocol/
- DDF Connectathon詳細(GitHub):https://transcelerate.github.io/ddf-home/CaT_home.html
- TransCelerate Digital Data Flow: An Update on DDF Phase 2 https://www.cdisc.org/sites/default/files/2022-11/2022_US_InterchangeDDF.pdf
- Nurocor Press release: https://nurocor.com/state-of-the-industry/
- Oracle Nurocor デモ動画: https://www.youtube.com/watch?v=oUhEXBUKCmM
