※本記事は、Jeff Wilsonによる”Adaptability and Resilience to Uncertainty Requires Investing in Employee Growth“を翻訳したものです。

この3年間、世界が組織に求めたものがあるとすれば、それは前例のない変化への適応力です。2020年が始まっても、世界は近年と大きく変わったようには見えませんでした。そこにCOVID-19が襲いかかり、すべてが変わり始めました:
- COVID-19によって、組織はリモートワークを受け入れ、閉鎖された拠点の従業員を一時帰休させるか解雇し、医療費を支払い続け、政府からの融資や助成金を申請するといった措置が必要になりました、その後、再オープンを目指すプロセスを開始しています(1)
- 社会や企業の不公正に対応して、多様性、公平性、インクルージョン(DEI)の取り組みに対する新たな要求が高まっています。DEIの取り組みは、「あればいいもの」から「なくてはならないもの」になりました。組織はこれに対応し、DEI専任のスタッフを増やし、DEI支出も増やさなければならなくなりました。(2)
- グローバル・サプライチェーンの問題は、半導体から食料品店で販売されているものまで、あらゆるものに影響を与えました。企業では、データのより良い活用、より正確な需要分析、問題対応のための特別チームの編成、シナリオ・プランニングなど、このサプライチェーンの問題から発生する不足を管理するための計画を立てなければならなりませんでした(3)
- インフレが進行し、それに伴って組織はコスト上昇を目の当たりにしました。それに対応するために、FP&Aプロセスやキャッシュフロー予測の改良に取り組みました。また、サプライチェーンの選択肢を増やしたり、支出方法の優先順位や価格戦略の見直し、製品の再評価などの様々な対応策が必要でした(4)
- ロシアがウクライナに侵攻したことで、多くの企業は紛争地域だけでなく、ロシアからの完全撤退を決定したり、試みたりして、自社の事業を再評価しなければならなくなりました。このことは、グローバルな事業の相互依存に伴う課題を浮き彫りにしただけでなく、グローバル事業における倫理的課題、撤退時における資産償却の困難さ、各種規制対応への負担の大きさが明らかになりました。(5)
多くの場所でCOVID規制が解除されたにもかかわらず、インフレはまだ解決しておらず、サプライチェーンの問題は続いており、ロシアはまだウクライナに駐留しています。さらに、米国では、高等教育におけるアファーマティブ・アクションについて、係争中の最高裁判例が争点(アファーマティブ・アクションが違憲)となっており、企業が新たに増強したDEIプログラムに悪影響を及ぼす可能性もあります。(6)
要するに、変化に迅速に対応することは常に必要であり、もはや一時的なトレンドではないということです。
経営者は、会社の将来性を高めるために何ができるでしょうか?
Deloitte 社が世界の 3,600 人以上の経営幹部を対象に実施した世論調査では、回答者の 72%が、将来のディスラプションを乗り切るための最重要項目として、「従業員の適応能力、再教育能力、新しい役割を引き受ける能力」を挙げています。(7)
Deloitteのハイインパクト・ワークフォース・リサーチでランク付けされた組織は、以下の通りでした:
- 育成と成長の機会を提供する可能性が3.9倍高い(同調査の低業績組織と比較)
- スキルや能力に対するニーズを満たす主な手段として、人材開発に投資する傾向が7倍高い。(8)
同様に、優れた組織には次のような傾向も見られています:
- 変化を効果的に管理する傾向が 4.9 倍高い。
- 適切な職務に人材を配置することで、人材ニーズを満たす可能性が4.5倍高い(9)
育成と成長を優先する組織のメリットは、人材と変化への適応力だけにとどまりません。そのような組織には、さらに次のようなメリットがあります:
-
財務目標を達成する可能性が1.7倍高い。
-
競合他社と比較して、イノベーションを起こす可能性が2.8倍高い(10)
スキル、能力開発、および成長への投資は、組織が変化を管理する能力を高めるだけでなく、イノベーショ ンと収益にもプラスの影響を与える可能性があります
育成と成長の機会への投資は、採用と定着にどのような影響を与えるのでしょうか?
優秀な従業員を採用・維持する必要性は、これまでと同様に高い傾向にありますが、現在の事業環境は厳しいです。
世界では、2021年と2022年に大量の辞職の発生について話題になりました。しかし、2023年においてもこの問題は存在しています。2023年には、アメリカの労働者の約61%が退職を検討しています。Z世代がその最大の人口層であり、その72%が退職を検討しています(11)
世代を超えた従業員を対象とした調査では、18~34歳の従業員が転職先を検討する際に最も重視するのは、「社内でキャリアアップできる機会」と「新しいスキルを学び、習熟できる機会」の2つでした。35歳から49歳の従業員も次にその傾向がありました。(12)また、その中にも違いが存在しています。スキルアップに取り組んだ従業員のうち、43%がスキルアップによって昇進し、23%が新たな領域へ、18%が新たな仕事に就いています。同様に、社内の流動性も従業員の退職抑制に非常に役立っています。2年経過した時点で、社内異動をした従業員の75%が残留する可能性が高いのに対し、しなかった従業員は56%です。
しかし、残念ながら、新しいスキルの習得に挑戦して欲しいと企業から要求された従業員は26%に過ぎず、また、新しいキャリアプランを構築するように会社から後押しされたと答えた従業員もわずか14%に過ぎません(14)
採用面では、70%の雇用主が、候補者が少なすぎることと、不適格な候補者が多すぎることの両方を指摘しています。しかし、一方で、求職者の75%は、求人に応募するかどうかを決める前に雇用主のブランドを考慮しており、その中にはトレーニング・リソースへのアクセスも含まれています。(15)
要するに、従業員のスキルとキャリア開発に投資することは、満足度、定着率、採用力、変化への対応力を高めますが、従業員や求職者には雇用主が十分な投資を行っているとは感じていないのが実情なのです。
経営者は、従業員のスキルに投資することのメリットを理解しているのでしょうか?
Deloitte 社の「スキルベースの組織(Skills-Based Organizations)」に関する調査では、労働者を「流動的に配置できるスキルや能力を持つ個人」と見なしている組織について、さらなる分析が行われました。この分析における個人のスキルには、すでに存在しているスキルや、開発によって培うことができるスキルも含まれています。(16)
スキルベースの組織においては、企業幹部が従業員スキルに焦点を当て、従業員に投資するという事実があることを示しています。スキルベースの組織は、人材を効果的に配置する可能性が107%高く、また、社員の成長・育成に最適な場所として社会的に認知される可能性が98%高く、トップパフォーマーを維持する可能性が89%高いです。このことは、今後の企業経営において希望の持てる兆候です。(17)
しかし、一般的の企業においては、経営幹部の77%が、従業員がスキルを身につけより雇用されやすい人材になるよう支援すべきだという意見に賛成しているものの、実際の組織運営においては具体的な解決策が施されていません。これらの経営幹部のうち、従業員が新しいスキルを習得するのを支援するために十分な投資を行っていると答えたのはわずか5%でした。(18)
90%のエグゼクティブがこのような状況に対しての「改善施策」を主張しているにもかかわらず、人事システムにスキル関連テクノロジーを組み込んでいると回答した人事エグゼクティブは63%に留まります。また、従業員全体のスキルデータを一元管理している企業はさらに低く33%しかありません。(19)
企業幹部と人事担当幹部に、スキルベースの組織への変革に向けての障壁について尋ねたところ、最大の理由は “レガシーな考え方や慣行 “でした。経営幹部はスキルの重要性を知っており、また、その変革を支援するテクノロジーが存在することも知っている。経営幹部は、スキルに基づく組織になるために必要な変革をまだリードできていないだけです。(20)
2023 年のスキルの再教育とスキルアップについて、成熟度曲線のどの段階にあるかという質問に対しては、40%が初期段階、54%が中期段階と回答し、成熟された段階であると回答したのはわずか 2%でした。これらの数字は、2022年から少し増加しただけです。2023年には、2022年よりも7%多くの人材開発部門の担当者が人事以外の幹部と協働していると回答しており、この取り組みに若干の勢いが出てきていることを示しています(21)
スキルと能力開発に重点を置くようにシフトすることは、継続的な人材流出を緩和するためにまさに必要なことであり、多くのトップリーダーはスキルの重要性を認識していますが、社内でより多くの支持者とより強い変革のための力が必要です。
Oracle Growはどのように役立つか?
Oracle Growは、学習、スキル開発、キャリア・モビリティを1つして、従業員に個別化された体験に統合する、業界初のソリューションです。Oracle Growを利用することで、従業員は自分の職務や次の職務へのレベルアップに何が役立つかを推測する必要がなくなります。Oracle Growが、パーソナライズされた能力開発コーチの役割を果たし、従業員のあらゆるデータを調べ、AIを使用して、従業員の現在と将来の成功に役立つ、最も関連性の高い成長機会を継続的に提供します。Oracle Growは、通常は目に見えない可能性を表面化するように設計されています。従業員は、組織内でのさまざまな異動方法を可視化し、考えたこともないような職務をAIの示唆から発見し、その職務に対しての適任者となるためにどのようなスキルを習得する必要があるかを理解することができます。また、Oracle Growを使用することで、管理職は組織やチームがビジネスを前進させるために必要なスキルが育成できているか、そのための取り組みが軌道に乗っているかを確認し、改善が必要な際には、そのための洞察を手に入れることができます。Oracle Growは、Oracle Learning、Oracle Dynamic Skills、Oracle Talent ManagementなどのOracle Cloud HCMの統合データからパーソナライズされた洞察を1つのインターフェイスで提供します。これにより、従業員が現在の職務で昇進したり、新しいスキルを習得したり、複数のキャリア・パスや選択肢を発見したりすることができるように支援しています。
機能には以下が含まれます:
- 統一された成長体験: 従業員が職務の変化に適応し、新たな成長オプションを発見し、キャリア希望を実現するために必要な最も適切な情報とAIから導き出される人材育成の機会を提供します。Oracle Cloud HCMの人材データを統合することで、Oracle Growは、従業員の責任、キャリアの関心、およびビジネスの変化に基づいて、従業員が取るべき次のステップを明確でパーソナライズされたガイダンスとして提供します。
- Career Paths: 従業員が組織内のさまざまなキャリアの機会を発見できるようにし、Oracle Cloud HCMのプロファイル情報に基づいて各個人に合わせたステップバイステップのガイダンスと育成プランを提供します。スキルの識別、カスタマイズされた人事のジャーニー、およびラーニング・リソースによって、Career Pathsは、従業員が将来の職務に必要な資質を発見し、より適切な準備を支援します。
- パーソナライズされた人材開発プレイリスト: 従業員の目標や希望に合わせた独自の人材開発のジャーニー作成を支援します。Oracle Journeysの人材開発プレイリストでは、コーチ、クラス、仕事、社内外の開発リソースなどを見つけるためのガイダンスを提供したり、コンテンツを作成したりすることができます。
- 強化されたチーム・スキル・センター: リーダーと管理者は、組織全体に必要なスキル・ニーズを把握し、ビジネス目標の達成に必要な特定のスキルを割り当て、それらをすべての従業員のOracle Growエクスペリエンスに自動的に追加できます。
- パーソナライズされた人材開発環境: さまざまな学習スタイルや嗜好に対応することで、従業員がどのスキルをどのように開発するかを決定できるようになります。Oracle Growを使用すると、従業員は習得すべきスキル、フォローすべき学習トピック、関心のあるキャリアなどを決定できます。嗜好の変更は、Oracle Growエクスペリエンス内の人材開発推奨事項に自動的に反映され、個人の成長に合わせて継続的に更新されます。

学習、スキル、成長といった用語は、当社だけでなく、HCMソリューション全体で一般的に使用されています。(22)例えば、Workday の Talent Optimization の機能には、スキル管理、キャリア開発計画、目標管理が含まれています。(23)また、SAP SuccessFactors は、近年タレントマネジメントで、2021年にオポチュニティマーケットプレイスを導入しています。(24)、Growth Portfolio と Skills Ontology では2022年第4四半期にアーリーアダプタープログラムですが、これらの機能が利用可能になっています。(25)しかし、いずれの製品も、Oracle Grow の機能の深さに匹敵しようとするためには、サードパーティの追加統合が必要と言われています。HCMソリューションの一部としてネイティブに構築されていないためです。当社では、一体化された仕組みの中で、シングル・ソース・オブ・トゥルースとして利用できるようになっています。
Oracle Growの詳細については、こちらをご覧ください。
専門性の高い人材育成は、人事チームがサポートすることが最も難しい分野の1つです。この課題に対処し、従業員が成長の機会を拡大し、潜在能力を最大限に発揮できるようにします。詳細はこちらをクリックしてください。
(1)“Impact of the Coronavirus Pandemic on Businesses and Employees by Industry”, US Bureau of Labor Statistics, July 2021, https://www.bls.gov/spotlight/2021/impact-of-the-coronavirus-pandemic-on-businesses-and-employees-by-industry/home.htm
(2)Buss, Dale, “12 Ways Companies Are Boosting Their DEI”, SHRM, 9 March 2022, https://www.shrm.org/resourcesandtools/hr-topics/behavioral-competencies/global-and-cultural-effectiveness/pages/12-ways-companies-are-boosting-their-dei.aspx
(3)“Supply Chain Disruption”, Accenture, Accessed 2 May 2023, https://www.accenture.com/us-en/insights/consulting/supply-chain-disruption#accordion-2ef02c75af-item-f37c3760f8
(4)O’Brien, Megan, “8 Strategies to Deal with Inflation in Business”, Oracle NetSuite, 17 August 2022, https://www.netsuite.com/portal/resource/articles/financial-management/deal-with-inflation.shtml
(5)Estrin, Saul and Meyer, Klaus, “Why It’s So Difficult for Companies to Leave Russia”, London School of Economics and Political Science, 28 March 2023, https://blogs.lse.ac.uk/businessreview/2023/03/28/why-its-so-difficult-for-companies-to-leave-russia/
(6)Bryant, Camille, “How an Affirmative Action Decision Cloud Impact Workplace Diversity”, McGlinchey Stafford, 24 February 2023, https://www.mcglinchey.com/insights/how-an-affirmative-action-decision-could-impact-workplace-diversity/
(7)“Your People are Your Path to Adaptability and Resilience”, Deloitte, April 2023, https://www.oracle.com/a/ocom/docs/gated/deloitte-people-adaptability-and-resilience.pdf
(8)Ibid
(9)Ibid
(10)Ibid
(11)Tan, Huileng, “More Than Half of US Workers Want to Quit Their Jobs in 2023, a New Survey Shows”, Business Insider, 19 January 2023, https://www.businessinsider.com/great-resignation-linkedin-us-workers-considering-quitting-2023-1
(12)“2023 Workplace Learning Report: Building the Agile Future”, LinkedIn Learning, 2023, https://learning.linkedin.com/content/dam/me/learning/en-us/pdfs/workplace-learning-report/LinkedIn-Learning_Workplace-Learning-Report-2023-EN.pdf
(13)Deichler, Andrew, “Workers Seek to Upskill- With or Without Employers’ Help”, SHRM, 13 March 2023, https://www.shrm.org/resourcesandtools/hr-topics/organizational-and-employee-development/pages/upskill-workers.aspx
(14)“2023 Workplace Learning Report: Building the Agile Future”
(15)Wilson, Jeffrey, “Five Challenges for Powerful Recruiting in 2023”, Oracle Fusion Cloud Human Capital Management Blog, 6 February 2023, https://blogs.oracle.com/oraclehcm/post/five-challenges-for-powerful-recruiting-in-2023
(16)Cantrell, Griffiths, et al., “The Skills-Based Organization: A new Operating Model for Work and the Workforce”, Deloitte Insights, 8 September 2022, https://www2.deloitte.com/us/en/insights/topics/talent/organizational-skill-based-hiring.html
(17)bid
(18)Ibid
(19)Ibid
(20)Ibid
(21)“2023 Workplace Learning Report: Building the Agile Future”
(22)“Workday Talent Optimization”, Workday, Accessed 6 April 2023, https://www.workday.com/content/dam/web/en-us/documents/datasheets/datasheet-workday-talent-management.pdf
(23)“Workday Learning”, Workday, Accessed 6 April 2023, https://www.workday.com/content/dam/web/en-us/documents/datasheets/datasheet-workday-learning-us.pdf
(24)“SAP SuccessFactors Opportunity Marketplace Drives Internal Mobility”, SAP News, 13 October 2021, https://news.sap.com/2021/10/sap-successfactors-opportunity-marketplace-drives-internal-mobility-and-upskilling-to-help-organizations-future-proof-their-business/
(25)“SAP Delivers New Innovations to Build Future-Ready, Sustainable Workforces”, SAP News, 13 September 2022, https://news.sap.com/2022/09/future-ready-sustainable-workforces-new-innovations-successconnect/
(26)Wilson, Amy, “SAP SuccessFactors First Half 2023 Release”, SAP News, 1 May 2023, https://news.sap.com/2023/05/sap-successfactors-first-half-2023-release/