変化に追随できているか?
製造業は、デジタル革命と消費者ニーズの変化に加え、近年は新型コロナとウクライナ情勢にも振り回されてきました。売上向上はもちろんのこと、テクノロジーの革新、モノからコトへのシフトも含めたビジネスモデルの転換、さらにはESGへの対応など、将来を見越したサステナブルな企業体質を構築することが急務となっています。このような事業環境の変化に対応してくためには、取引先やマーケットなど社内外の動向を敏感に感じ取れる仕組みや、変化するオペレーションを支える仕組みが必要になります。日本の製造業の得意分野として、設計開発力、ものづくりの技術力は世界に負けない力があると思いますが、経営のDXの進捗状況はどうでしょうか?
株式会社JVCケンウッドにおいてCTO(最高技術責任者)とCISO(最高情報セキュリティ責任者)を兼任されている園田 剛男様のご講演の一部を紹介させていただきます。
JVCケンウッド様の取組み(ご講演内容より)
同社は2008年に、日本ビクターとケンウッドが経営統合した企業です。このコロナ禍で収益が落ち込んでしまった中でも、継続的に事業活動に投資されました。
「特にバックオフィス部門(コーポレート部門)の事業活動に対する投資が不足すれば、企業のレジリエンスが低下してしまいます。事業継続の面から見ても大きなリスクと言えるでしょう」(園田氏)
同社の中長期経営計画では、「変革と成長」というキーワードを中心に据え、非財務データを含めた企業価値の向上、収益率の改善、資本効率化といったデータドリブンな経営の実現を目指されています。その取り組みの中で以下の課題に直面されました。
- 統合後も残るビクターとケンウッドの個別最適なプロセス
- 基幹システムの老朽化や複雑なインターフェース
- 業務の属人化
- 仮想デスクトップ上のExcel操作で増大化するネットワークへの負荷
これまでも、課題解決のための活動を積極的に行ってこられましたが、急速な変化に追随するために抜本的な改革が必要となりました。そこで重視されたのが『データの見える化』です。「全社のデータを統合・管理すべく、財務会計システム刷新を決断した」(園田氏)
Oracle Fusin Cloud ERPへの刷新で、経営判断の材料を迅速に収集
財務会計システムの選定にあたっては、外部コンサルティングサービスの評価を参考とされ、国内の会計パッケージ約10 製品について、財務会計と管理会計の機能要件、拡張性、導入コスト、運用コスト、ベンダーの信頼度という観点から比較検討を行なわれました。「Oracle Fusion Cloud ERP &EPM」を選定された理由は、「機能要件を満たしている」、「業務標準化の達成に貢献し得る」、「SCM モジュールの拡張導入で販売・物流領域も取り込める」、「SaaS 型クラウドで常に最新機能を享受できる」という点でした。
オラクルでシステムを刷新した結果、次で紹介する効果を得られたということです。
- 損益計算書(P/L)から手作業で製品の限界利益P/Lを作成 → 科目明細の積上で自動集計
- 各事業部がExcel で行っていた単体予算・売上見込書の作成 → 売上・原価・在庫をPSI システムから自動連携
- 経理部がExcel で作成して配布していた連結データ → 各事業部で必要なデータを自由に取り出して分析できる
「Oracle Cloud ERP への刷新によって、経営活動の判断材料となるさまざまなデータを迅速に入手できるようになりました」(園田氏)
同社では、データの精度と鮮度を高く維持するために、要件定義や社内ルールの整備といった活動や工夫を現在でも続けています。今後、JVCケンウッドは海外に展開している販売会社も含めて、クラウドベースのデータドリブン経営をさらに推進する方針です。業務の標準化やデータ管理の一元化によって、いつでも、誰でも、同じデータを瞬時に取り出せるよう注力し、脱属人化、脱Excelを進めると園田氏は述べています。
IT インフラへの投資を事業活動⸺ひいては経営活動の根幹を支えるものとして捉え、経営DX に取り組むことが重要です。システム刷新プロジェクトを通して、財務データの精度向上はもちろん、非財務情報の1つである人的資本の重要性に気付きました。改善の取り組みを続ける姿勢こそが、事業継続の成否を分ける重要なポイントです。」(園田氏)
※オラクル主催「製造業:経営DXセミナー」(2022/11/22) 講演より