※本記事は、Neil Ramsayによる”Harness the Business Value of Quarterly Updates“を翻訳したものです。
四半期アップデートは、Oracle Cloudを使用するお客様に継続的なイノベーションを提供します。この投稿では、四半期アップデートの主な機能を要約し、IT部門担当者、ステークホルダーおよびビジネスユーザーの方々への推奨事項を説明します。
四半期アップデートとは
四半期ごとに、Oracleはお客様環境の修正と新機能を伴う更新を行います。変更には、顧客の機能強化、法改正、基礎となるテクノロジ・スタックへの更新などが含まれる場合があります。Oracle Cloud ERPだけでも、四半期ごとに100以上の新機能を提供しています。
四半期アップデートがポッドに適用されるタイミングは、お客様のコホートによって決定されます。
- コホートA:2月-5月-8月-11月
- コホートB:3月-6月-9月-12月
- コホートC:4月-7月-10月-1月
ステージポッド(テスト用)は、四半期ごとのアップデートは月の第1金曜日に更新されます。プロダクションポッド(本番用)は、2週間後の第3金曜日に更新されます。
四半期アップデートの名称は、年とA、B、CまたはDの組み合わせです。たとえば、2023年第1四半期のリリースは23A、2023年第2四半期のリリースは23B、2024年第1四半期のリリースは24Aになります。

Oracle Cloud Readinessサイトでは、コホートAのステージポッド更新の30日前までに、四半期アップデートに含まれる変更内容の詳細を公開しています。
また、Cloud Applications Feature Listing(Excelダウンロード)を活用して、計画や追跡に役立てることもできます。機能名をクリックすると、その機能の全コンテンツが表示されます。このリストは毎週金曜日に更新されます。
四半期アップデートを遅らせたりスキップしたりすることはできません。これにより、すべてのお客様が最新の認定バージョンのアプリケーションを使用できるようになります。
四半期アップデートおよび月次メンテナンスパック
オプションで、Oracle Cloud Operationsがお客様環境に月次メンテナンスパックを環境に適用するようにリクエストすることができます。月次メンテナンスパックには修正プログラムのみが含まれているため、ユーザー・エクスペリエンスは変更されません。
四半期アップデートと同様に、メンテナンスパックはステージポッドには毎月第1金曜日に適用され、プロダクションポッドには毎月第3金曜日に適用されます。以下にご留意ください:
- ステージポッドへの更新の2週間前までにMy Oracle Supportにサービスリクエストを記録することで、月次ペースのオプトインをリクエストすることができます。
- 月次メンテナンスパックは累積されます。たとえば、コホートAの4月のメンテナンスパックには、コホートAの3月のメンテナンスパックも含まれています。
- 四半期アップデートには、当月を含む対応する月次のメンテナンスパックが含まれます。例えば、コホートAの5月の四半期アップデートには、コホートAの3月、4月、5月のメンテナンスパックが含まれます。
- 月次メンテナンスパックは、四半期アップデートに基づきます。たとえば、2023年3月のコホートAの月次メンテナンスパックは23Aに基づいていますが、コホートCの月次メンテナンスバックは22Dに基づいています。
サポート・ノート1603154.1では、コホートAのステージポッド更新に先立ち、メンテナンスパックのドキュメントへのリンクが公開されています。サポート・ノート 1646394.1に記載されているコンカレント・メンテナンス・オプションもあります。
ほとんどの顧客は、実装フェーズでは毎月メンテナンスパックを適用します。本番稼働後は、四半期ごとのサイクルに移行します。
累積週次バンドル(CWB)
例外的な状況では、サポートによって、発生した重要な問題に対処するための累積的な週次バンドルが提供される場合があります。サポート・ノート2816277.1には、各週次バンドルに含まれる修正の詳細が記載されています。
プロダクション・ケイデンス・ステージ・ポッド
3つ以上のステージポッドを持つお客様は、そのうちの1つをプロダクションポッドのアップデートスケジュールに割り当てる必要があります。これにより、ステージポッドが常に使用可能になり、同じソフトウェアで本番環境の問題の再現やソリューションをテストすることができるようになります。また、そのポッドの本番環境からテスト環境(P2T)によるブラックアウト・ウィンドウも回避されます。
四半期アップデートのビジネス上の利点
Oracle Cloud ERPはアップグレード・セーフです。これは四半期アップデートで、既存の設定、トランザクションおよびユーザー・プロセスが保持されることを意味します。最も重要なビジネス上の利点は以下の通りです。
- 認証、互換性、セキュリティ更新を監視し適用するためのコストと労力が不要となります。
- ユーザーは、追加のハードウェアおよびソフトウェアをプロビジョニングすることなく、最新テクノロジの恩恵を享受できます。
- 市場課題や機会が発生すると、関連する機能を含むアプリケーションを強化します。たとえば、サプライヤとの統合の拡大、経費報告の自動化などです。
- ビジネスユーザーは、最新のトレンドやテクノロジに合わせて進化する最新のUIが保証されるため、ユーザーの満足度と従業員の定着率が向上します。
継続的なイノベーションとビジネスプロセスの変化
クラウドに固有の継続的なイノベーションは、従来のオンプレミス・アップグレードの概念に代わるものです。1回限りのアップグレード作業を行うのではなく、四半期アップデートでは、その影響を管理する為の恒久的な業務を必要とします。
四半期アップデートに関連付けられたアクティビティは2つのカテゴリに分類されます。
- テスト: 既存のビジネスプロセスに影響がないことの確認。
- 新機能の評価と取込み: ビジネスプロセスに対する拡張機能のレビューと実装。
既存のビジネスプロセスに影響しないことの確認
次に、テストする内容とその理由をいくつか示します。
統合と拡張
Oracle Cloud ERPは、参照データとトランザクション・フローのインバウンドおよびアウトバウンド同期をサポートする様々なテクノロジを提供しています。これには、FBDI、REST API、SOAP WebサービスおよびBICCが含まれます。一般的に、これらのツールへの変更は下位互換性があるため、アップグレードしても安全です。ただし、Oracle Cloud開発におけるオンプレミス・アプリケーションや外部アプリケーションの使用状況の把握には限りがあるため、これらが引き続き期待どおりに機能するかどうかを確認することが賢明です。
カスタムBI Publisherレポート
クラウドアプリケーションで提供されるすべての標準レポートは下位互換性があるため、アップグレードしても安全です。OTBI、BICC、Smart View、HFRを介してクラウドの設定およびトランザクションにアクセスするカスタム・レポートおよびプロセスも同様です。Oracle Cloud Readinessサイトでは、例外を明確に文書化しています。
ただし、Oracle Cloud開発におけるアプリケーション・データベーステーブルにアクセスするカスタム・データ・モデルに基づくBI Publisherレポートの把握には限りがあります。したがって、期待どおりに動作し続けるかどうかを確認することが賢明です。
カスタム・ワークフロー
非標準の属性または付加フレックスフィールドを参照するカスタム・ワークフローは、カスタムBI Publisherレポートに似ています。したがって、期待どおりに動作し続けるかどうかを確認することも賢明です。
カスタム補助元帳会計ルール
四半期アップデートでは、変更した勘定科目ルールなどの補助元帳会計基準コンポーネントは上書きされません。そのため、変更した会計ルールには、対応するシードルールに加えられた問題解決や機能拡張のための変更が反映されません。
また、Oracle Cloud開発におけるシードルールを参照していないソースを使用する会計ルールの把握には限りがあります。
どちらの理由からも、四半期ごとの更新テストにカスタム補助元帳会計ルールを含めることをお薦めします。問題が発生した場合は、対応するシードルールが四半期アップデートによって変更されたかどうかを確認します。
主要なビジネスプロセス
予期しない動作の変化は、機能拡張の解釈の誤りや、時には修正プログラムの影響から生じる可能性があります。クラウドアプリケーションを使用する主要なビジネスプロセスを特定し、テストすることをお薦めします。
リグレッション
リグレッションとは、既存のクラウドアプリケーション機能へのドキュメント化されていない意図しない変更のことです。本物のリグレッションはまれで、顧客に影響を与えることはほとんどありません。それでも、主要なビジネスプロセスをテストすることで、疑念を解消し、リスクが軽減されます。
四半期アップデートで発生したすべての問題がリグレッションと見なしたくなるかもしれませんが、よく調べると、前の項で説明したような他の原因が明らかになることが通常です。
自動テストツール
四半期アップデートを本番に適用する前に、ステージポッドでテストする期間が約2週間与えられています。 ステージポッドへの更新後すぐにテストし、問題が発生した場合はサービスリクエストをログに記録することをお薦めします。
可能な限りテストを自動化することで、チームが統合、カスタマイズおよびユーザー手順を適応させる時間を確保することができます。Oracleは、テスト自動化のためのツールを公式には推奨していませんが、オープンソースのソフトウェア・ライセンスの下で無償提供されているSeleniumおよびTestNGで良い経験を積んでいます。
たとえば、Oracle ADF – Runtime Automation Sample Libraryの一連の指示に従って、ステージポッドに対して自動回帰テストを作成できます。有効にするには:
- Oracle ADF – Runtime Automationサンプル・ライブラリをダウンロードします。
- Test Automation Oracle JDeveloper Java SE Development Kit Selenium WebDriverユーザー・ガイドで、前提条件、インストール手順およびテスト開発手順を確認します。
後編に続く
Neil Ramsay
クラウドERP開発担当シニアディレクター
E-Business Suiteまでさかのぼり、30年にわたるOracle ERPアプリケーションの経験を持ちます。製品戦略に参加する前は、OracleのRedwood Shoresキャンパスでアプリケーション開発担当のシニアディレクターを務めていました。ACE ERPチームのメンバーとして、戦略的なお客様のクラウドトランスフォーメーション ジャーニーに協力しています。現在、スペインのマドリッドを拠点に活動しています。