※本記事は、Abdul Rafae Mohammed、Aby Joy、Shaibal TalukderによるGenerative AI and its use cases for enterprise applicationsを翻訳したものです。
生成AI(GenAI)は世界中で大きな関心を集めています。それは産業を変革するだけでなく、これまで不可能だと思われていた方法で創造性とイノベーションを掻き立てています。このブログ記事では、生成AI、その仕組み、および適用できるエンタープライズ・アプリケーションのユースケースについて探ります。
生成AIとは何か?
生成AIは、ユーザーのリクエストまたはプロンプトに基づいて、画像、ビデオ、テキスト、コード、または創造的で複雑なデザインなどのコンテンツを生成できる人工知能の形態です。従来、AI は、一つ以上のタイプに基づいてデータを分類またはグループ化、予測、データ内の異常やパターンの検出、既存のデータに基づいた意思決定などのタスクの実行に使用されてきました。一方、生成AI は、会話の要約、ビデオコンテンツの生成、新しいアプリケーションを構築するためのコードの生成など、より高度なタスクを実行できます。
生成AIはどのように機能するのか?
生成AIは、ディープラーニングの領域内の高度な機械学習 (ML)モデルを使用して構築されています。その中核には、人間の脳の構造をもとにした計算モデルであるニューラルネットワークがあります。
生成AIモデルは、大規模なコーパスまたはデータでトレーニングされ、その間データ内のパターンとデータ内の関係について学習します。モデルパラメーターを使用してこのトレーニングのプロセスを調整し、モデルをより現実で利用可能なものにすることができます。モデルがトレーニングされると、テキスト、画像、またはビデオの形式でコンテンツを生成できます。
生成AIモデルは、敵対的生成ネットワーク (GAN)、変分オートエンコーダー(VAE)、トランスフォーマーなど、データを処理する方法やその他の要因によって多くの形態で提供されます。詳しくは、この投稿末尾のリンクを参照してください。生成AIモデルがどのように機能するかをよりよく理解するためには、いくつかの重要な概念を知る必要があります。これらの概念については、「生成AIの概念」を参照してください。
このブログ記事では、大規模言語モデル (LLM)のユースケースに焦点を当てます。現在、利用可能であり、最も広く使用され、最も高度な言語モデルは、トランスフォーマーモデルに基づいています。
言語モデルは、処理、操作、および自然言語を生成できる生成AIモデルです。言語モデルは、自然言語の文字列または単語のシーケンスの確率を予測する確率モデルとしても利用することができます。
エンタープライズ・アプリケーションの生成AI ユースケース
AIアシスタントは、AIと生成AIテクノロジーを利用して、インサイトを提供し、通常であれば高いスキル、時間、労力を要するような複雑な活動を簡素化することで、ビジネスに大きな価値と収益をもたらすソリューションです。
次の表は、財務・会計領域のユースケースとメリットを示しています。
| AIアシスタント | ユースケース | ビジネス上のメリット |
|---|---|---|
| 財務 アシスタント |
勘定項目のプロアクティブな調査、補助元帳の修正、情報収集 | 決算の早期化 |
| 売掛金 アシスタント |
売掛金:未請求の販売注文を特定し、請求書を作成して顧客に送信し、支払いスケジュールに従ってフォローアップ | キャッシュフローの改善、回収コストの削減 |
| 買掛金 アシスタント |
買掛金:支払条件に従って、支払期限を過ぎた仕入先請求書を特定し、請求書と支払いの承認を自動化 | 仕入債務回転日数(DPO)追跡の改善 |
| 財務報告 アシスタント |
純損失の傾向を特定と根拠原因分析の自動化:要約と詳細な報告書を作成し、ステークホルダーにアラートを送信 | 詳細な説明と注釈のついた財務報告書の作成を自動化し、時間とコストを削減 |
| 財務予測 アシスタント |
財務予測の構築と分析:異常値と根本原因の特定 | 財務予測の作成とレポート自動化 |
| 価格設定 アシスタント |
市場価格、内部コスト、競合分析の抽出により価格戦略を算出し、加算や変更などの価格調整、顧客属性、そのほかの環境要因とともに適正価格を決定 | サステナビリティ、投資、顧客維持のための最大収益とマージンを確保するダイナミックプライシング(変動価格制) |
次の表は、受注管理(Order Management)のユースケースとメリットを示しています。
| AIアシスタント | ユースケース | ビジネス上のメリット |
|---|---|---|
| 顧客サービス担当(CSR)アシスタント | 顧客サービス担当は、顧客履歴の検索、分析、部品の検索、資料とドキュメントの送信、問題の調査、構成、価格設定、見積もりの作成など、インテリジェントなデジタルエージェントからの支援を受ける | 顧客サービスの生産性と顧客の満足度を向上 |
| インサイドセールスアシスタント | 顧客の属性や好み、ライフスタイル、購入履歴に基づく、パーソナライズされたオファーやアップセル、クロスセルなどを提案 | ホワイトグローブサービス(丁寧で配慮の行き届いたサービスの)を通した売上の増大 |
| 顧客 アシスタント |
音声にガイダンスは、カスタマーサービスへの依存度を減らすだけでなく、意図を分析し、感情を理解し、適切な対応へと導く | カスタマーサービスにおけるコストを削減 |
| フィールドサービスアシスタント | マニュアル、VR、AR、Q&A,デジタルアシスタント、チケットの自動生成、や返品保証(RMA:Return Merchandise Authorization)などを通じた技術営業の効率を向上 | 支援とOJTによる技術営業の生産性向上 |
| セールスクエリ アシスタント |
自然言語を使い営業活動や製品に関する情報の取得を支援 | レポート作成と人間による分析の必要性を削減 |
| 調達プロセス アシスタント |
オーダーの作成・キャンセル・修正や、サプライチェーンの変更対応、スケジュールを参照した納期回答(ATP:Available To Promise)を支援 | 顧客満足の向上とオーダーステータスの積極的な共有 |
| 返品プロセス アシスタント |
顧客サービス担当が、顧客からの返品を許可するか、部品ガイドに沿って部品を送付するかなどを決定するのを援助 | 顧客満足度の向上 |
次の表は、収益管理のユースケースとメリットを示しています。
| AIアシスタント | ユースケース | ビジネス上のメリット |
|---|---|---|
| サプライチェーンモニタリングシステム | サプライチェーンをモニタリングし、潜在的な遅延を探し、警告の表示し、シミュレーションを実施、適切な行動を推奨 | 遅延のないサプライチェーンを実現 |
| バックログ アシスタント |
受注残をモニタリングし、供給が可能になった際に警告を表示するほか、様々な物流戦略を試み、迅速な処理のための最適なアクションを推奨 | 顧客満足度の向上、収益及び利益の増加 |
| 営業 アシスタント |
顧客の属性、購買履歴、マージンを含むパラメーターに基づき、顧客の注文処理、アップセル、クロスセルなどの支援を営業部門に対し実施 | 収益及び利益の増加 |
| 業績目標管理 アシスタント |
コンセンサス予測を作成するオーケストレーションにより、消費、生産、出荷を調整でき、財務および業務プランナーが正しい需要の特定できるよう支援 | 予測精度の向上 |
| 納入業者 アシスタント |
部品表(BOM)の材料要件を確認し、信用度、評価、その他のパラメーターの市場調査を行い、優位性があって価格の安いサプライヤーを特定することで、バイヤーのコスト削減と供給元の刷新を支援 | 利幅の拡大、顧客の満足、供給リスクの低減 |
OCIの生成AI
Oracle Cloud Infrastructure (OCI) では、次の AI ツールとサービスを提供しています。
・ビジネスアプリケーションに組み込まれた生成AI: オラクルは、利用するアプリケーション環境でAIコンテンツと結果にアクセスできるように、Classic AIと生成AIをアプリケーションに組み込んでいます。
・OCI Generative AI service: OCIは、顧客が CohereとMetaモデルを利用し、必要に応じてモデルを微調整できるように管理された生成AI サービスを提供します。OCIは、顧客が幅広いユースケースに対応できるように、サービスにアクセスするための API も提供します。
・OCI Generative AI Agent Service: OCIは、エンタープライズ データに対して RAGベースの LLMを展開し、エンタープライズ・アプリケーション固有のナレッジ・ベースに基づいた応答を行うマネージド・サービスを提供します。
・OCI Data Science: Hugging Face の Transformers や PyTorch 、MetaやMistral AIの生成モデルなどのオープンソースライブラリをカスタマイズしてLLM を構築、トレーニング、導入、管理します。
・Oracle Database 23ai でのOracle AI Vector Search: Oracle AI Vector Searchを使用すると、Oracle Database 23ai は AI ベクターを使用して意味検索機能を提供します。ビジネスデータと意味データの両方に対する検索は、収束データベースが両方のデータを一元管理するため、より正確になります。
・MySQL Heatwaveのベクトル・ストア:MySQL HeatWaveは、オンライン・トランザクション処理(OLTP)データベース、リアルタイム・インメモリ・データウェアハウス、データベース内の自動機械学習、レイクハウス、プライベート・プレビュー生成AI機能を単一のクラウド・データベース・サービスで提供するフルマネージド・データベース・サービスで、抽出、変換、ロード(ETL)の重複による複雑さ、レイテンシー、コストを必要としません。データウェアハウスとレイクハウスの両環境における分析処理において、業界最高のパフォーマンスと価格を提供します。
・Autonomous Database Select AI:Select AIは自律型データベース(Oracle Autonomous Database)の機能で、アプリケーションやアナリティクスがLLMを使用してユーザーの自然言語による質問を理解し、Oracle SQLを生成してデータを照会できるようにします。
・OCI AIインフラストラクチャ:生成AI、コンピュータビジョン、予想分析など、最も要求の厳しいAIワークロードを分散型クラウドのあらゆる場所でより迅速に実行します。Oracle Cloud Infrastructure (OCI) Superclusterを使用して、現時点で32,768個のGPU、将来的には65,536個のGPUまで拡張できます。
OCI上で生成AIを実行するメリット
・モデルの選択:顧客のニーズに合わせ、プロプライエタリもしくはオープンソースの生成LLMに高性能かつ低コストでアクセスすることができます。
・フルスタックの組み込みAI(エンベデッドAI):既にオラクルのデータプラットフォームやオラクル・クラウド・アプリケーションに統合されたデータを利用した生成AIを独自のアプリケーションのためのマネージドサービスとして使用することができます。
・エンタープライズグレードのセキュリティとプライバシー保護:オラクルはクラウドとオンプレミスの両方で、エンタープライズ企業に不可欠なデータマネジメントとセキュリティ保護、ガバナンス遵守を最優先します。
・明瞭なパフォーマンスと価格設定:AI向けのOCI Superclusterテクノロジーにより、信頼できるパフォーマンスと透明性の高い価格を実現します。
結論
OCIの生成AIの詳細については、以下の記事を参照してください。
- Generative AI service documentation (英語)
- OCI 生成AI サービス
- AIソリューション・ハブ
- 生成AI(Gen AI)とは生成AIの仕組み
- 生成AI機能
- Retrieval-Augmented Generation(RAG)とは
