※本記事は、Rick Bellによる“Q&A: A sustainable conversation with Oracle CSO Jon Chorley”を翻訳したものです。
Jon Chorleyは、Oracleの最高サステナビリティ責任者 (Chief Sustainability Officer: CSO)であり、サプライ・チェーン管理アプリケーションの製品戦略担当グループ副社長です。ChorleyはCSOとして、サステナビリティに関連するすべてのイニシアティブを社内外で推進しています。責任範囲としては、ITインフラストラクチャおよび事業運営から開示レポート、リスク管理までの領域を対象としています。

Oracle CSO Jon Chorley
このQ&Aにおいて、Chorley自身の経歴とサステナビリティを中心とした文化の促進や関連する新しいテクノロジー、企業がサステナビリティをどのように強化できるかについて語っています。また、対話の中で、サステナビリティにおいて卓越している企業の特性を明らかにするとともに、「私が関わっているほとんどのお客様は、サステナビリティのイニシアティブを推進するために積極的です。企業が環境やサステナビリティと対立しているという視点は誤りです。」と現在の企業の取組み状況について述べています。この対話は、Oracle Construction and Engineering シニア・コンテンツ・マーケティング・マネージャー、Rick Bellがインタビュアーです。
そもそもサステナビリティに取組んだきっかけは何だったのでしょうか?
JON CHORLEY: 15年以上も前に、チームの一人が私のところに来て、「サステナビリティには、Oracleやビジネスにとって重要なことがあると思います。数ヶ月間、それを調査するために時間を割いても構いませんか?」と尋ねてきました。そこで、私たちは実際にマーケットで何が起こっているのか、Oracleのサステナビリティ・プログラムをどのようにレベルアップすべきかについて、いくつかの提案を持ち寄りました。そして、サステナビリティの潮流が、Oracleにどのような影響を与えるのか、また実際にどのように事業に活用できるかについて検討を進めました。ちょうどその頃、Oracleは、Sun Microsystemsを買収し、純粋なソフトウェア開発会社から、大規模な物理的なサプライ・チェーンを持つ会社へと移行しました。Sunは、サステナビリティに積極的で、より成熟したプログラムを持っていました。私たちは1、2年かけてサステナビリティ・プログラムに取り組んできましたが、そこにSunが加わったことで、取組みは一気に加速しました。
サステナビリティに取組み始めてからのご自身の役割とキャリアの進化について教えて下さい。
JON CHORLEY: 私はOracleで主に2つの職務を担っています。サステナビリティ最高責任者という肩書きと、サプライチェーンアプリケーション製品戦略グループの運営です。調達方針、物流、製造プロセス、エネルギー管理など、環境のサステナビリティに影響を与える多くの事柄は、サプライ・チェーンの問題とも関連しており、その部分に対しての取組みには大きな相乗効果があります。サステナビリティへの関心と要求は飛躍的に高まっているため、これらのバランスを取るのはますます難しくなってきています。このことは、引き続き課題ではありますが、同時に興味深い組み合わせでもあります。
サステナビリティの役割について話すときは、事業体としてのOracleには常に2つの側面があるということです。Oracleには14万人の従業員や多くの不動産があり、非常に複雑な物理的サプライ・チェーンがあります。また、主要なデータセンターも持っています。そのため、事業体としての側面として、それをどのように追跡・管理し、プロセスを改善するかということがあります。加えて、当社のソリューションにどのように機能を組み込み、それをお客様企業において活用していただくかということも重要です。何十万人もの顧客がいれば、その相乗効果は計り知れません。自社事業を運営する上で必要な取組みであることはもちろんですが、それをお客さまのために役立てることも重要です。
サステナビリティをどのように定義しますか。
JON CHORLEY: サステナビリティに対する人々の考え方は変化しています。私がCSOとして担った役割は、環境のサステナビリティに焦点を当てていました。具体的には、私たちが使用している材料、消費するエネルギー、CO2の排出に関連して、それらの影響を低減する方法(削減、更新、リサイクル)を検討していました。これはサステナビリティの伝統的な取組み内容でした。ですがここ数年、ESG(環境、社会、ガバナンス)、つまり、企業が世界やコミュニティ、生態系にどのように関わっていくのか、持続可能性に関連する幅広いステートメントを取り入れるようになりました。ダイバーシティやインクルージョンなどの社会的側面を受け入れつつ、現代における奴隷的な人材利用の側面を排除することも求められますし、ガバナンス側では、今まで以上に責任のある方法でビジネスを管理することが求められます。
サステナビリティとは、どのような意味があるのでしょうか。私は環境、社会、ガバナンスの3つの円で図を描き、サステナビリティを真ん中に置きたいと思います。なぜなら、持続性の要素と、それぞれのドメインにおける持続可能性を運用する継続的な能力を備えた政策と実行を推進したいためです。
サステナビリティの目標達成において企業が直面する最大の課題は何ですか?
JON CHORLEY: 1番は質の高い情報を得ることです。社内外の両方です。内部的には、ビジネスの内部オペレーションをどのように把握し、監視するかということです。社外の情報取得の課題は、どのようにして供給ベースから同じ品質の情報を取得し、それを顧客に伝えるかです。この200年間で、私たちは金融分野の情報交換の方法を洗練させてきました。その情報は一般的に信頼できるものであり、お客様はその情報を頼りにすることができます。サステナビリティ関連の情報を交換する際にも、同じようなモードに移行する必要があります。例えば、排出原単位です。改善されつつありますが、それでもかなりアドホックであり、信頼のあるデータを取得するためには課題があります。
2つ目は、何が重要かを企業が理解することです。グリーンウォッシングと呼ばれるような粉飾をしたとしても、インパクトがほとんどない可能性があります。ビジネスの方向性とその経済的原動力を明確にすることが重要です。経済的原動力とサステナビリティに関連する問題とはどのように交わるべきなのでしょうか。Oracleの場合、それは簡単なことです。私たちはクラウド企業です。私たちはクラウドを成長させています。データセンターも建設しています。それをどのように考え、管理するかは、ビジネスの成功にとっても環境にとっても重要なことです。経済的原動力とサステナビリティというビジネスにとって非常に重要な2つの側面から考え、管理し、取り組むことで、ビジネス上の優位性を生み出すことにつながっていきます。
最後に、リーダーシップです。事業の全体的な目標や方向性の中で、サステナビリティの位置づけを明確にし、事業成長を促す他の要素と同等のレベルで考えることが理想的です。メッセージの発信やイニシアティブの支援、従業員の支援など正しい行動をすることです。
サステナビリティを正しく実践しているのはどのような組織でしょうか。
JON CHORLEY: 私の経験では、多くの企業では、本当にサステナビリティの重要性について理解されています。私が関わるほとんどの企業では、サステナビリティの取り組みに積極的です。またさらに積極的に取り組んでいこうとされています。ビジネスが環境と対立しているとか、サステナビリティに反対しているという見方は間違っていると考えています。多くの企業は、サステナビリティーは、ブランドリスク、市場リスク、環境リスクなどと関連し、自分たちのビジネスに影響を与える可能性のあるリスク要因として捉えています。海面上昇、暴風雨も含めて、すべてがビジネスに影響を与える可能性があるのです。そして、ほとんどの企業は、リスクを検討するための規律あるプロセスを持ち、その分析にサステナビリティや気候変動を含めています。このように、自社のブランドをサステナビリティのために定義している企業も多くある一方で、まだサステナビリティを理解するのに苦労されている企業も存在しています。
“グリーン製品と非グリーン製品の差は、規模が大きくなるにつれて小さくなっています。需要が拡大すればするほど、コスト、つまりグリーン・プレミアムは下がっていくのです”
—Oracle CSO Jon Chorley
Ciscoは最近、サステナビリティに関する賞を獲得しました。それはとても前向きなことだと思います。Amazonは大きな成長を遂げている興味深い企業であり、絶対的なフットプリントは増加していますが、その強度のレベルは減少しています。彼らは正しいことをしていますが、ビジネスをさらに飛躍的に発展させるのは困難です。それでも、Amazonは多くの前向きなことを行っています。Unileverには、ブランド関連プログラムを積極的に行っています。教育関連のおもちゃメーカーである「Melissa & Doug」は多くの木材を使用しているため、その再生可能な側面に着目しています。Suzanoはブラジルの木材会社で、紙パルプを製造していますが、カーボン・ネガティブな企業です。長期的な展望として、伐採した木よりも多くの木を植えることが必要であることを理解しています。
建設・エンジニアリングの分野では、どのような企業がサステナビリティに取組んでいるのでしょうか?
JON CHORLEY: サステナビリティの観点から私がよく話すことのひとつが、LEED認証の建物です。いまや、LEED認証を取得していない建物を建てる企業はいないでしょう。それがスタンダードになっています。建設業界では、自分たちのブランドのため、自社製品が広く受け入れられるために、LEED認証が必要があることを理解しています。スタンダードの意識が高まったのです。これは、サステナビリティに関する他の分野でも見られる傾向です。取組みのハードルが上がり、人々が製品やサービスに期待する明確な基準ができたということです。この業界は、他の分野でも参考にできるようなモデルが確立されています。
サステナビリティの文化を醸成するために、組織は何をすればよいのでしょうか?
JON CHORLEY: それについては、社内と社外での議論があります。外部に目を向けると、特に製品メーカーであれば、供給元との関わりについて考えることが多いようです。建設会社であれば、コンクリート内の炭素に注目するかもしれません。そのようなサプライヤーを選択することで、コンクリート製品の新しい市場を構築することができるのではないでしょうか。より広範囲の観点では、サプライヤーがどのような取組みをしているかを理解することです。サステナビリティ・プログラムはあるのか、その目標は何か、炭素削減の目標を設定しているか、その他の方針はどうか等、サプライヤーと積極的に関わりながら理解することが重要です。一方で、社内では、サステナビリティに関しての「コミュニケーション」が非常に重要です。私がこの役職に就いたときから、Oracleでは、社内外とのコミュニケーションの力によって非常に良い業績を上げていました。そのようなコミュニケーションと透明性のある風土をどのように作ればいいのでしょうか。透明性の高い風土を作ることは、社外とのコミュニケーションにも当てはまりますが、良いアイデアを育てることにもつながります。Oracleにはグリーンチームがあります。彼らは自己組織化された形でイニシアティブを推進しています。また、ビジネスや地域社会で物事を改善するためのアイデアや提案を行っています。
従来、建設業界はサステナビリティの先駆者とは考えられていませんでした。コストを増加させずに、業界はどのように変化し、より持続的に成長できるでしょうか。
JON CHORLEY: 大規模な建築というと、鉄、コンクリート、ガラスがあります。この3つは非常にエネルギーを消費します。コンクリートの製造は化学的なプロセスであり、CO2が発生します。この問題を解決するのは簡単ではありませんし、実際、最も難しい問題のひとつかもしれません。コンクリートの中にCO2を注入して固定化する技術も考えなければなりません。再生可能なエネルギー源で生産されるクリーンな鉄鋼、つまりグリーン・スチールも可能性はありますが、そのコスト構造は大きいです。また、ガラスは明らかに高エネルギーのプロセスです。そのためのエネルギー源について考えなければなりません。木造建築では、大規模なパイオニア的な取り組みが行われています。最近のプレラミネート材やクロスラミネート材は、鉄と同等の強度を持ち、高い耐火性も備えています。このような選択肢に目を向け、理解しておくことは、当然重要ですし、コストも非常に重要な要素です。グリーン・プレミアムと呼ばれるものですが、グリーン製品にかかるコストは、非グリーン製品にかかるコストと比較してどの程度になるのでしょうか。グリーン製品と非グリーン製品の差は、規模が大きくなるにつれて小さくなっています。需要が拡大すればするほど、コスト、つまりグリーン・プレミアムは下がります。そのように市場を拡大していくことは、非常に有益なことです。
サステナビリティを実現するために、どのような新しい技術が最適でしょうか?
JON CHORLEY: Oracleでは、市場に提供するソリューション開発において、サステナビリティやESGの観点を、コア・ビジネス・アプリケーションに組み入れることに取り組んでいます。つまり、提供する製品やサービスを決定する際に、サステナビリティやESGの要素は、その意思決定プロセスの一部となるのです。ビジネスアプリケーションの中で、ごく自然な形でサステナビリティやESGの観点が表現されることは非常に重要です。それは、企業の目標に組み込まれ、認識されていく必要があります。2030年までにカーボン・マイナスを目指していますか?それに向けた取組みをどのように記録していくのでしょうか?取組み状況は、ビジネスのオペレーティングシステムに組み込まれる必要があります。このことは、私たちOracleが市場に提供できる重要な技術です。
もちろん、他のテクノロジーもあります。太陽光発電の効率向上とそのコスト効率、大規模な風力発電などは非常に重要なテクノロジーです。水素はエネルギー貯蔵メカニズムも興味深いものです。塩のドームという非常に大きな地下構造物を使って、水素を貯蔵している人がいます。塩のドームはかつて石油を貯蔵するのに使われていましたが、今後は、水素を貯蔵するのにも使えるかもしれません。太陽光を利用した電気分解で水素を発生させ、そのエネルギーをより輸送しやすい方法で貯蔵することができるのです。興味深い技術です。Volvo Truckは、ヨーロッパのトラック輸送の大部分を電気自動車で行うことができるという分析を行いました。ローカル輸送のため、夜にはトラックを回収して充電することができます。グリーン・スチールやコンクリートは難しい問題で、先ほど申し上げたように、これらの分野でイノベーションの活性化を支援することが重要です。建設的かつポジティブに考えることが、移行を促進することにつながるのです。
サステナビリティの取組みは建設業界の基本戦略になりますか?
JON CHORLEY: その通りです。建設業界に必要なものです。減らせるところは減らし、再利用できるところは再利用します。これらは明らかに重要事項です。しかし、やはり、こうしたアイデアを前進させるための投資が重要です。また、こうしたアイデアを拡大するための支援に積極的に取り組むことで、コストを削減することができます。
建設管理ソフトウェアおよびプロジェクト・ポートフォリオ管理ソリューションのグローバル・リーダーであるOracleの建設/エンジニアリングは、プロジェクトと資産のライフサイクル全体にわたってチーム、プロセス、データを接続するのに役立ちます。プロジェクト管理、スケジュール管理、BIM/CDEなどの実績あるソリューションにより、プロジェクト・デリバリの効率と管理を促進します。
Oracleのサステナビリティの詳細は、https://www.oracle.com/jp/sustainability/を参照してください。
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