※ 本記事は、Wayne HeatherによるNavigating the labyrinth: The complexity of ESG data collectionを翻訳/意訳したものです。

 

今日のビジネス環境では、環境、社会、ガバナンス (ESG) への考慮は、周辺的な懸念事項から、企業の戦略的意思決定に関わる中心的な要素へと移行しています。企業は現在、新規顧客、投資家、ビジネスパートナーからサステナビリティの証明について絶えず質問を受けています。消費者は、より持続可能なブランドに対してより多くのお金を払う傾向があり、サステナビリティの証明は資本コストにさえ影響を与える可能性があります。現在、世界各国でESGに関する報告義務が拡大しており、企業は複雑な報告要件に直面しています。

効果的なESG報告への道は困難を伴います。企業は、ビジネスを展開する様々な地域の複数のフレームワークに沿って報告する必要があります。これは、様々な管轄区域の規制によって要求される様々なKPI、異なる時間枠や異なる粒度の報告を意味し、このことはデータ上の大きな課題を生み出します。

ESGデータ収集の課題:

それでは、データとそれにまつわる課題をいくつか見てみましょう。ESGデータは、人事、財務、サプライチェーン、製造など、様々な社内システムからの収集が必要です。ここに、企業バリューチェーンの上流と下流の両方で発生する間接的な排出量を表すスコープ3の排出量が加わります。これらは、企業のカーボン・フットプリントの最も重要な発生源であることが多いにも関わらず、測定が最も難しい領域でもあります。ESG報告に必要なデータの収集が複雑になる要因は、次のとおりです。

  • 多様なデータ ソース: 必要なデータは様々なシステムに分散しています。この多様性により、企業は多数のソースからデータを収集する必要がありますが、これらのソースは多くの場合、連携されていません。これには、サプライチェーン、IoT、労働力、人事などからのデータ、そして自社で直接管理していないサプライヤーからのデータも含まれます。これらのデータは、原材料の調達から販売された製品のライフサイクル終了処理まで、バリューチェーンの様々な段階から取得されます。すべてのデータを収集したことを確認するのがいかに大変な作業であるかは、想像に難くありません。プロセスをどのように管理し追跡するのか、データが正しいことをどのように検証するのかが問われます。
  • 様々な測定単位: データは多数のソースから取得されるだけでなく、様々な形式で提供されます。ほとんどのデータは、インパクト指標の算出に使用する前に準備と変換を必要とします。たとえば、エネルギー消費量の場合、企業によっては KW(キロワット) を使用し、他の企業ではKJ(キロジュール) を使用することもあります。したがって、企業には測定単位の変換を行うソリューションが必要になります。ビジネス全体でESG指標を統一して報告するには、このデータを変換および標準化する方法が必要になります。
  • 標準化の欠如: 財務データとは異なり、ESGデータは標準化されていないことがほとんどです。サプライヤーごとにデータの収集やレポートの方法が異なる可能性があり、データ集計に不整合や困難が生じることがあります。データを検証し、場合によっては変換し、全てのKPIが様々な報告要件に対応できるように集計する必要があります。
  • 説明責任: 企業は排出量を計算するためにサードパーティのデータに頼らざるを得ないことがよくありますが、そのデータは不完全であったり、正確性に欠けていたりすることがあります。この外部データへの依存により、排出量の実態を把握することが困難になります。データ収集プロセスを管理し、説明責任とコンプライアンスを追跡することは困難です。ワークフローを通じて人々がデータを承認して送信する完全なプロセスがあれば、データソースを完全に透明化することが可能です。
  • 高度な分析要件: ESGデータを効果的に解釈して活用するには、高度な分析機能が必要です。企業には、膨大な量のデータを収集、処理、理解するための高度なツールと、ESGパフォーマンスを分析、追跡し、複数の形式でレポートする機能が必要です。また、ESG目標を達成するための運用計画と財務計画を作成できることも重要です。AI主導のインサイトにより、目標を達成できなかった場合に警告が表示されるなど、迅速に是正措置を講じることができます。
  • 監査要件: ビジネスリーダーが直面する大きな課題は、開示情報の証明、監査、保証です。さらに、利害関係者は、組織が限定的な保証から合理的な保証へと変化することを期待しています。データの発生元までさかのぼって追跡できる、変更の包括的な監査証跡があれば、企業は恩恵を受けることでしょう。

課題を克服する:

こうした多くの課題があるにもかかわらず、企業にとって ESGデータを正確に測定し、管理することは極めて重要です。そのための戦略をいくつかご紹介します。

  • サプライヤーとの強力な関係の構築: 標準化されたレポートの採用をサプライヤーに奨励することで、データの品質を向上させることができます。サプライヤーと緊密に連携することで、データの透明性と一貫性が高まります。
  • テクノロジーへの投資: 詳細なデータの収集、変換、集計、計画、レポート作成を支援するプラットフォームを活用することが鍵となります。すでにこれを達成した実績のあるプラットフォームの採用を検討してください。Oracle Cloud EPM は、多くの企業が財務規制を遵守し、報告できるように支援する取り組みを長年に渡って行ってきました。そのため、経理財務部門は、企業のESG報告責任を支援する上で主導的な立場に立つ態勢が整っています。ESGは、財務規制の遵守と同様のライフサイクルを辿りますが、その違いは、財務ではなくESGの「非財務」の視点をもってデータを見る必要であるという点です。

効果的な ESGデータ収集への道のりは複雑ですが、包括的なESG報告の最も重要な要素です。サプライヤーとの関係構築や適切なテクノロジーに投資することで、企業はこの迷路を抜け出すことができ、環境への影響を報告するだけでなく、効果的に管理できるようになります。実際、最近のKPMGが実施した調査によると、回答者の43%が、ESGデータを把握することでビジネス・チャンスと成長分野を見出すことができると回答しています。[1]

次回のブログ「サステナビリティと戦略の整合: Oracle Cloud EPM for Sustainability」では、Oracle Cloud EPMがESG計画とレポート作成のための実証済みのプラットフォームを提供し、組織がESG目標と企業戦略とを整合させる上でどのように役立つかについて説明します。

 


オラクルではESGと財務の融合を促進する、Oracle Cloud EPM for Sustainabilityをリリースしました。

EPM for Sustainabilityについては、日本オラクル技術メンバーが解説するオンデマンド・ウェビナー「Oracle EPM Cloud- EPM for Sustainabilityのご紹介」をご確認ください。

 

引用元;

[1] https://kpmg.com/us/en/media/news/esg-strategies-driving-value.html