クラウドにも提供形態がいろいろあるのですが、それを明確に整理せずにクラウド化とざっくりまとめて解説した記事だったり、または、メッセージアウトしている企業があります。分かっておられる方には当たり前すぎる話ですが、それに惑わされないようにしていただきたいという趣旨です。

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SaaSとインフラだけクラウドにしたPrivate Cloudではまったく違います。もともとのOn-Premiseをクラウドのインフラに載せただけのPrivate Cloudだと、結局、相変わらずバージョンアップは数年に1回、何億円もかけて実施しなければならないのです。重いアップグレードを可能な限り先延ばしにするだけです。これでは、世の中の変化と要求のスピードに追随できません。引き続き技術的負債が蓄積されます。短期的なコスト削減にしかならず、アプリケーションはモダナイズはされていません。モダナイゼーションの先送り、責任の先延ばしをしているだけです。また、何かトラブルがあっても、AWSやAzureなどの対応に依存しますので、基盤面の解決・改善という観点はコントロールは難しいです。

確かに、現在のOn-Premiseの機能は、提供機能が豊富でカスタマイズが施されているので現場の業務にインパクトを与えないかもしれませんが、そのために遺失する利益が今後さらに大きくなると考えられます。2000年前後においては、ERPは、業務プロセス改革(BPR)の仕組みとして注目され、導入が進みました。その当時は、既存の業務をERPで置き換えることが主眼でした。既存の業務プロセスをそのまま維持してしまったので、業務の整理や標準化といった改革すらも難しくなりました。現場での活用を意識しすぎて、現場の要求に全て対応することが重視されました。その結果、機能要件が膨大になりました。当時のERPには機能が不足する部分も多くあり、カスタマイズが大量に発生し、開発期間が長期化し、コストも膨らみました。 当時は、ERPのバージョンアップに莫大なコストがかかるということや、追加カスタマイズを繰り返していると業務の標準化が進まず、ベストプラクティスから逸脱してしまうという認識があまりなかったと思われます。

しかし、現在は状況がまるで違います。ビジネスの変化は非常に激しいです。業種を問わず、ビジネスを取り巻く環境は劇的に変化しています。世界的なサプライチェーンの課題や、インフレ、金利上昇、地政学的混乱や人材不足。また、事業と社会の継続性の両立といったESG経営への対応も求められています。さらには、テクノロジーの進展によって、各業界に新しいビジネスモデルが生まれ、新規参入企業も増加する等、ビジネス環境は、数え上げればきりがないほどの変化に直面しています。ですので、ベストプラクティスからの逸脱は大きなデメリットになってきます。SaaSによってプラットフォームを常に最新の形にアップデートしていくことが本当に重要になってきているのです。

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また、最新のAIのアップデートを享受できないことは大きな損失になってくると思います。特にAIの進歩は凄まじいスピードになってきています。AIは、自動化といった点に加えて、言語や画像に認識、トレンドやニーズの予測、アクションの最適化や表現の生成といったさまざまな観点で加速度的に進歩してきています。また、本来ERPが提供しようとしてた経営管理のためのデータ活用もAIによって飛躍的に実行力が高まります。事業部横断で大量データをより効率的に学習させて、より高度なインサイトを導き出すということができるようになってくると考えられます。売上が悪い原因、利益率が悪い原因、投資対効果が悪い原因等、人、物、金に関わる要素がどのように絡み合っているか。複合的要素における意思決定が、生成AIなどによってより正確かつ簡単にできるようになってくると考えられます。

一方で、セキュリティーの観点も迅速に対応していかなければなりません。サイバーセキュリティの問題、内部不正による情報漏洩対策等多岐にわたります。特に急拡大するランサムウェアにも対応しなければなりません。最近では、企業のERP 財務会計システムや販売管理システム、社会インフラの仕組みも被害にあっています。これらの対策もアプリケーションには求められます。

このように、莫大なバージョンアップコストの観点、ビジネスの変化とベストプラクティスへの対応の観点、AIの進歩から得られるベネフィットの観点、セキュリティー対策への観点から言っても、ERPは、SaaSであるべきです。そして、それを最も早く、最も完成度高く提供しているのが、OracleのFusion Cloud Applicationsなのです。ですので、単に他社のIaaSに載せているOn Premiseベースのアプリケーションをクラウドソリューションであると判断して選択されないようにお願いいたします。