前回のブログでは、「Fit to Standard」アプローチへの疑念という視点で、お客様から頂いた質問を1つとりあげさせていただきました。今回も引き続き、疑念たる質問を1つ取り上げて、記載させて頂きます。

「Fit to Standard」アプローチといっても、本当に可能なのだろうか?
「Fit to Standard」とは、新しいERPパッケージを導入する時に、ERPパッケージの「ベストプラクティス(標準機能)」を鑑にして新しい業務を組み立てていくアプロ―チです。
ご存じの通り、国内・海外の多くの企業から、数多くのERPパッケージが販売・提供されており、「ベストプラクティス」といっても、各企業の製品ごとに、そのカバー範囲や特性は異なります。したがってERPパッケージの導入においては、ERPパッケージとしてカバーする業務領域が広く、また、柔軟性が高い等の特性を持つ製品を選択することで、「Fit to Standard」アプローチを可能とする確率は高まるといえます。具体的には、会計・受発注・製造といった業務領域と各業務領域で保有している個々の機能がどの程度カバーされているか、また、それぞれの機能の使い方を変更できるセットアップのオプションがどの程度用意されているか、セキュリティ・可用性等の非機能的な側面に対する装備等を含めた製品の習熟度が、システム面における「Fit to Standard」アプローチを可能とする要素の一つになるでしょう。
一方、「本当に可能なのだろうか?」という質問自体が、「現状業務がFitするのだろうか?」・「自社の商習慣に合うのだろうか?」・「すべての要件を満たせるERPパッケージはないのでは?」というような疑問から生まれてくることも多くあります。前提として、「Fit to Standard」アプローチは、現状業務及びレガシーシステムのモダナイゼーションを達成するためにとられるアプローチです。既存の業務・システムの制約にとらわれず、新しい業務・システムへの変革のためのアプローチであるということを、まずは、しっかりと認識する必要があります。では、このアプローチを「可能」とするためには、どのような要素が必要となるのか順に確認していきたいと思います。
達成すべきビジネス目標・成果を基準とした判断
「Fit to Standard」アプローチにおいては、個別の「要件」に対応するのではなく、達成すべきビジネス目標・成果や結果に必要かどうかを基準とすることが重要な要素となります。ERP導入プロジェクトにおいては、達成すべきビジネス目標・成果や結果を定義し、プロセスはシンプルに、分析など価値を生むためのアウトプット業務に比重を置く、等の指針を明示することが必要です。そして、プロジェクトに参加するメンバー全員が「Fit to Standard」アプローチをしっかりと理解しておくことが重要になります。
変革に対応できる推進体制
「Fit to Standard」アプローチを可能とするための推進体制としては、現行のビジネスルール・規定には拘らずERPパッケージのベストプラクティスに合わせて業務標準化を実現するためのプロジェクト指針、規定変更のコミットメント、業務変革に対応できるプロジェクト体制、自立自存した組織運営へのコミットメント等が必要となります。あるプロジェクトでは、お客様が日本固有の商習慣と考えていたものについて、対応必須として区分されていた課題が実際は自社固有の商習慣であったという場合もあります。法的要件以外の商習慣の多くは、業務的なルールやそれに基づく社内規定であるという場合も多いです。
「Fit to Standard」アプローチをしっかりと理解して、プロジェクト推進において目標・指針を明示し、ルール・規定変更・組織運営をコミットメントして進めていいただけているお客様においては、そうした課題について、会社としての取り組みで、業務的なルールや社内規定を変更して対応いただいている事例も多くあります。
本当に変更できないのか、その商習慣が今後も必要なものなのかということは、十分に議論する必要があるポイントの一つであることは間違いありませんが、「Fit to Standard」アプローチを前提としたプロジェクト推進体制を整備しておくことで、十分に対応可能とすることができます。
実証された方法論
オラクルコンサルティングが主体として導入しているお客様のほとんどは、「Fit to Standard」アプローチに基づく方法論である「TCM(True Cloud Method)」を利用したプロジェクトであり、日本国内でも成功例は数え切れないほど存在しています。また、オラクルのパートナー様も含めて、「Fit to Standard」アプローチに基づく方法論を保有している企業は数多く存在しています。
システム対応の選択肢
業務的必要性・ERPパッケージ機能・業務運用での対応を十分検討したうえ、差別化・競争優位性を獲得するためのイノベーションが可能な業務要件である等、どうしてもシステムでの対応が必要な業務であれば、3rd Party製品の利用、又はPaaS等を活用した開発等、コアのERPパッケージに手を加えることなく、そうした業務要件を実現する手段も、現在は豊富にあります。
信頼できる導入パートナー
ERPパッケージ導入プロジェクトは、お客様のみでできるものではありません。ERPパッケージを熟知し、確立した方法論・アプロ―チ手法を保持し、導入経験豊富なパートナーの選択が必要となります。お客様の「レガシーシステムのモダナイゼーション」の旅路を共に歩むパートナーとして、信頼できるヒト・企業を選択することは、最も重要な要素の1つです。

ここまで、「Fit to Standard」アプローチを「可能」とするために必要となるであろう、いくつかの要素を確認しました。お客様ごとに「本当に可能なのだろうか?」という質問の事情・状況は異なりますが、適正なERPパッケージの選択とここまで確認してきた要素を考慮することで、「Fit to Standard」アプローチを採用した「レガシーシステムのモダナイゼーション」が、成功に近づくことは間違いありません。
今回は、前回に引き続き、「Fit to Standard」に対する疑念の声をとりあげて記載させていただきました。次回は、「Fit to Standard」に対しての「オラクルの対応」という視点での質問をとりあげていきたいと思います。