※ 本記事は、Oracle Analyticsチームによる“Beyond dashboards—analytic insights with AI”を翻訳/意訳したものです。

この1年間、多くのOracle AnalyticsとAIのリーダー達と話をする機会がありました。共通して注目を浴びていたのは、AIが意思決定の方法や人々の行動をどう変えるのか、ということです。
特に繰り返し取り上げられた5つの問いについて、Oracle Analyticsコミュニティのさまざまな視点とともに紹介します。

1. すでに我々は「ダッシュボードの先」にいるのでしょうか?

答えは「はい」です。ただし、まだ理想論的な段階だと考える人もいます。多くのリーダーが言っていたのは、従来のダッシュボードによる分析から、会話型の分析へと移行しつつあるということです。
経営幹部たちはダッシュボードの洪水にうんざりしています。以前はスプレッドシートを探していましたが、今度は大量のキャンバスやビジュアライゼーションの中から目的の情報を探さなければなりません。すでに検索エンジンや生成AIで自然言語を使うことに慣れたため、分析でも同じことが起きることを期待しています。

ヒースロー空港 コーポレートデータ&分析責任者 アラン・ペトリー氏:
「ビジネス上の課題を解決する際、ダッシュボードの中から必要な情報を探し出すのは時間の浪費です。どこを探せば良いのかを事前に分かっていなければなりません。AIの対話型インターフェースならば、『過去3年間の私の部署の平均給与を表示して』と音声で伝えたり、文字で入力したりするだけで、正確なグラフを即座に得られます」
Zoom シニア・ファイナンス・システム・リード バラート・クマール氏:
「情報源としてダッシュボードやレポートだけに頼る時代は終わりつつあります。AIを活用することで、ユーザーは自然言語を使ってあらゆる質問をすることができ、集約されたデータに基づく情報が自動的に作成され、回答を得られます。」
KPMG アドバイザリー部門プリンシパル トッド・ランドルフ氏:
「『新しいレポートが必要だ』という分析担当者によるレポート作成リクエストはなくなり、『私が知るべきことを教えてくれ』という依頼に変わっていくでしょう。」
dunnhumby コーポレートシステム部門BIリーダー ジョルジオ・ティチネッリ氏:
「ユーザー・コミュニティでは、ダッシュボードに会話型インターフェースを追加し、データに関するあらゆる質問をその場で行えるようにしたいという強い要望があります。」

長い間話されてきた「分析の民主化」が、人々がAIや会話型インターフェースを通してインサイトを得られるようになったことで実現します。必要な情報へより速くアクセスでき、分析そのものが経営や日常業務の中に自然に組み込まれるようになります。

2. AIによって、リアクティブな分析からプロアクティブな分析へどう変わるのか?

これまでの分析は、「質問する → 答えを得る」という形が基本でした。
しかし、今後はそれだけでは十分ではありません。ユーザーが質問する前に、重要な変化やリスク、機会をAIが知らせてくれることが求められています。
たとえば、異常値を検知したり、将来起こりそうな事象を予測したり、推奨アクションを提示したり、重要な変化をアラートとして通知したりすることです。

ネムール小児医療センター ビジネスアプリケーション担当VP補佐 カーメン・ルークスベリー氏:
「システムがユーザーのために分析を行い、注意すべき点を教えてくれることを望んでいます。例えば、経理部門であれば『この請求書は過去4年間はこの2ヶ月の間に支払われていましたが、今年は支払われていません。確認した方が良いかもしれません。』というイメージです。」
ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン臨床研究センター 研究ディレクター コルム・マクマホン氏:
「AIは、データからパターンを見つけたり、傾向や異常を特定したり、臨床医が自然言語でやりとりするのに特に役立ちます。例えば、『このデータの中で、患者のケアを改善するのに役立つ可能性のあることを教えてください』と言うと、その患者の病歴、誘因、ニーズに合わせた具体的な回答が得られます。」

分析やAI分野のリーダーたちは、そう遠くない将来、エージェント型AIが常時データを監視し、リスクや機会を自動的に発見して知らせてくれる、常時稼働のビジネスアナリストのような存在になると期待しています。

3. AIエージェントは、人間のエージェントをどのように強化するのか?

AIエージェントはワークフローにも統合され、ユーザーに代わって行動します。意思決定が自動化され、場合によっては人間の介入を必要とせずに、ワークフローの調整と統制を行うこともできます。

ヒースロー空港 コーポレートデータ&AI責任者 アラン・ペトリー氏:AIコンシェルジュがリクエストを受け付け、必要な担当者に引き継ぎます(場合によっては複数のエージェントが相互に連絡を取り合うことも可能)。基本的には、社内に新しい役割を設けるようなものです。
MTNのサプライチェーン・エクセレンス担当グローバルリーダー アルン・クマール氏:
「オラクルの組み込み型AIエージェントには特に価値があります。ビジネスユーザーは自然言語でデータとやり取りし、異常を自動的に検出し、業務の流れの中で具体的な推奨を受け取ることができるようになります。」

オラクルのお客様は、人間の意思決定を支援するAIエージェントの導入を積極的に進めており、場合によっては意思決定プロセス全体を自動化する準備も進めています。

4. AIを成功させるために必要なことは何でしょうか?

ここについては、ほぼすべてのリーダーの意見が一致していました。AIを成功させるためには、統合され、信頼できるデータ基盤が不可欠だということです。
オラクルのお客様もパートナー様も、データソースとパイプラインの準備の重要性を強調されています。また、個人と企業の両方を保護するためのガバナンスとガードレールの整備の重要性についても言及されています。AIはソリューションを構想から本番運用へと移行するプロセスをより複雑にする傾向があるため、AIを大規模に導入し、展開するには、基本に立ち返ることが不可欠です。

Apps Associates データ、アナリティクス、AI担当VP マイルズ・ギルセナン氏:
「上司から『そろそろAIに真剣に取り組む時だ』と言われたら、それはAIプロジェクトがPOC段階を脱し、本格的な本番環境向けAIアプリケーションへと移行する必要があるということです。では、まず最初に何をすべきでしょうか?それは、データの管理を徹底することです。企業の業務データベースだけでなく、販売契約書、購入契約書、規程、手順書、動画、画像などの非構造化データも、あらゆるデータがAIや機械学習アプリケーションに活用されるべきです。」
MTN アルン・クマール氏:
「Oracle Fusion Cloud Applicationsのデータと、外部の運用、ネットワーク、物流データを一つのモデルに統合することで、予測リスク分析、AIを活用した計画立案、リアルタイムに近い運転資本最適化といったユースケースを、主要市場で加速できると期待しています」
Vertice CEO兼創業者 トニー・キャシディ氏:
「企業レベルで価値を得るには、データを適切に扱う必要があります。つまり、データ・エンリッチメントと価値向上に必要な膨大なデータと、それを提供するパイプラインです。オラクルの新しいAIデータプラットフォームによって、大規模なデータを迅速に活用し、価値を実現できる技術が整いました。データパイプラインを管理するエンジニアと、優れたデータ分析知識を持つチームはこれからも必要です。組織がこれらを持ち、データ管理のためのあらゆる改革と構造を制御できるようになれば、AIを大規模かつ成功裏に提供できる可能性が非常に高くなります。」

5. AIによってセルフサービス分析は不要になるのでしょうか?

当初、答えは定かではありませんでした。しかし、実際にはAIはセルフサービス分析を置き換えるのではなく、より多くの人が分析を利用できるようにするものという見方が強くなっています。ビジネスユーザーの能力を高め、技術者への依存を減らすことで、利用のハードルを低くしたいというニーズが高まっています。

KPMG トッド・ランドルフ氏:
「以前は、ビジネスユーザーが業務を管理するために必要なダッシュボードを作成する傾向がありました。しかし、AIによるプロンプト、自然言語による問い合わせ、対話型のインターフェースが登場し、ユーザーは自分でデータを探索しながら、何が起こったのか、次に何をすべきかを把握できるようになりました。」
エスポー市 財務データ&分析チームリード ヨミ・パタリ氏:
「AIは自然言語による問い合わせ処理に役立つと考えています。経営陣の要望に応じて、直接情報を提供できるようになります。AIは私たちのパートナーであり、その場でインサイトや分析を求めることができる存在になるでしょう。」

AIはインサイトを生成するための技術的なハードルを下げることにより、企業における分析の民主化を加速させています。

AIがすべてを変える――「良いデータ」の重要性以外は

Analyticsのリーダーたちの意見から見えてくるのは、企業の分析が、静的なレポートから、AIによる会話型の意思決定支援へ進化しているということです。AIエージェントは、プロアクティブなインサイト生成、アクションの推奨、意思決定の支援を、業務フローの中で提供します。
同時に、AIは、企業がより多くのデータを、幅広いソースから取得し、非構造化データも含め、分析に活用することを可能にします。すべてのデータを専門的に管理することは極めて重要であり、企業規模でAI導入を成功させるための核心となります。

著者:Nick Whitehead