※本記事は、Biman Sarkar, Prakash Masand, Venkat Chowdhuryによる”Accelerating Enterprise Automation using Agentic AI in Oracle Integration“を翻訳したものです。

原文公開日:2026年4月14日


概要

AIがシステムとプロセスの連携を支える中核的な存在となるにつれ、エンタープライズ・オートメーションも変わりつつあります。固定されたルールベースのワークフローのみに依存するのではなく、組織はAIを活用し、よりスマートで柔軟かつ簡単に拡張できる自動化を実現しようとしています。Oracle Integrationは、エージェント型AIをそのプラットフォームに統合し、インテグレーション・ライフサイクルの設計および開発フェーズにインテリジェンスを埋め込み、エンタープライズ・オートメーションを簡素化・拡張することで、この変革に対処します。

Oracle Integrationでエージェント型AIを活用し、企業の業務自動化を加速

このブログでは、AIエージェントによって、フライト予約アーキテクチャが手動または固定的なルールベースのワークフローから、インテリジェントで適応性の高いオーケストレーションへとどのように変化するのかを紹介します。このアプローチでは、ビジネス側がツール、ヒューマン・タスク、ナレッジ・ベースを提供し、AIエージェントがそれらを活用してタスクの実行方法を判断します。AIエージェントは、「フライト検索 → 承認 → 予約」のようなあらかじめ決められたオートメーションのシーケンスに従うのではなく、ユーザーの意図を理解し、旅行ポリシーを評価して最適なフライトの選択肢を選び、承認が必要かどうかを判断します。さらに、承認の拒否や予算の制約など、その結果に応じて次に取るアクションを柔軟に変更します。AIエージェントは、コンテキストに基づいて推論し、フライト検索、承認ワークフロー、予約システムなどのintegrationをツールとして呼び出します。これにより、迅速な予約と一貫したポリシー・コンプライアンスを実現し、必要に応じて人間による承認を組み込みながら、よりパーソナライズされた対話型の旅行体験を提供できます。同時に、基盤となるシステムのモジュール性と再利用性も維持できます。


コンポーネント

Oracle Integrationは、エージェントの意図を実行可能な成果に変換するための幅広い自動化機能を提供します。LLMはエージェントに推論を提供し、Oracle Integrationは実行を提供します。

AIエージェント: Oracleは最近、エンタープライズ・アクションとデータをツールとして公開するエージェントAI機能の包括的なスイートを追加しました。これにより、AIエージェントはMCP準拠のエコシステム内でこれらのツールを起動できます。たとえば、AIエージェントは、固定ワークフローに依存することなく、エンドツーエンドのフライト予約プロセスを実現するために、どの統合を使用するかと、その順序を決定します。AIエージェントの詳細は、Oracleブログのこちらの記事(※日本オラクル追記:日本語翻訳版はこちらの記事)を参照してください。


ナレッジベース: ナレッジ・ベースは、Oracle Integration内の組込みのRetrieval-Augmented Generation (RAG)機能であり、ポリシー・ファイル、運用ガイド、ビジネス・データなどの構造化および非構造化エンタープライズ・コンテンツをOracleのAIモデルに直接接続します。出張予約シナリオでは、企業の出張ポリシー・ドキュメントをナレッジ・ベースに取り込むことで、AIエージェントは関連するポリシー条項をセマンティックに取得し、ハードコードされたルールや手動参照を必要とせずに、定義された制約に対して予約決定を自動的に検証できます。詳細は、Oracleドキュメントを参照してください。


Decision(デシジョン): 条件をフローに直接ハード・コーディングすることなく、ビジネス・ルールを統合に適用します。これにより、意思決定ロジックを統合フローから分離できるため、保守が容易になります。たとえば、意思決定表には、従業員の等級別に出張予算が格納され、承認の要否も示されます。


Human in the loop(ヒューマン・イン・ザ・ループ): Human in the loop(HITL)は、Oracle Integrationの機能であり、承認、例外処理、ポリシーに依存する決定など、重要なアクションが実行される前に人間の判断が必要なインテリジェントなチェックポイントを導入することで、構造化された人間の監視をエージェントAIワークフローに組み込みます。Oracle Integrationのデシジョン・サービスをHITLとシームレスに組み合せてビジネス・ルールを適用してから人間にエスカレートすることで、適切なリクエストのみが承認者に届くようにすることができます。フライト予約シナリオでは、運賃が従業員の等級ベースの予算しきい値を超えると、AIエージェントはリクエストを指定された承認者に自動的にルーティングできます。つまり、承認または却下が受信されるまで予約プロセスを一時停止し、その後エージェントが実行を再開し、完全なガバナンス、トレーサビリティおよびポリシー・コンプライアンスを確保します。詳細は、Oracleブログのこちらの記事を参照してください。


実装

AIエージェント、デシジョン・サービス、ナレッジ・ベースやヒューマン・イン・ザ・ループなどのコア機能を確認したら、次はこれらをすべて組み合わせていきます。次のセクションでは、Oracle Integration内でこれらのコンポーネントを段階的に実装し、各要素をどのように連携させることで、完全に機能する、ポリシーに準拠したインテリジェントな旅行予約エクスペリエンスを実現するのかを説明します。エージェントの構成やツールの登録から、デシジョンや承認ワークフローの連携まで、すべてのステップは前述の内容に基づいており、直感的でトレース可能な実装となっています。

ステップ1: 統合の作成

エージェント型アーキテクチャでは、自動化は単一のモノリシック・フローではなく、小規模で再利用可能な統合を使用して構築され、それぞれが特定のタスクを実行します。Oracle Integrationの豊富なアダプタ機能を使用することで、これらの統合はさまざまなシステムに迅速に接続し、その機能をツールとして公開できます。

AIエージェントは、ユーザーの意図に基づいてこれらの統合を動的に調整し、どのツールを呼び出すか、どのような順序で、いつ承認が必要なのかを決定することで、柔軟でスケーラブル、インテリジェントな自動化を実現します。たとえば、フライト予約シナリオでは、個々の統合によって、空港コードの検索、フライト検索、座席の空き状況、旅行ポリシーの確認、最終チケット予約などのタスクがすべてAIエージェントによってシームレスに調整されます。

ステップ1: 統合の作成

ステップ2: デシジョンの作成

承認判定マトリックスは、デシジョン・テーブル(意思決定表)を使用して従業員の等級と運賃を評価します。これらの入力に基づいて、マトリックスは、予約処理を自動的に続行できるか、または追加の承認を必要とするかを決定します。このアプローチにより、フライト予約プロセス全体で一貫した意思決定、ポリシーの適用、および制御された承認が保証されます。また、従業員等級およびフライト運賃を入力としてデシジョン・サービスを起動して、適切な承認結果を決定する統合も作成しました。決定についてさらに学習するには、Oracleブログのこちらの記事を参照してください。

ステップ2: デシジョンの作成

ステップ3: ヒューマン・イン・ザ・ループ(HITL)の作成

Oracle IntegrationのHuman in the Loop (HITL)は、人間の構造化された監視をエージェントのAIワークフローに導入し、影響力の大きい意思決定のための承認および例外処理レイヤーとして機能します。必要に応じて、AIエージェントは指定された承認者にアクションをルーティングし、ポリシーのコンプライアンス、正確性および説明責任を保証します。また、あいまいなシナリオを人間にエスカレートさせ、フローを中断することなく情報に基づいた意思決定を実現することもできます。

フライト予約シナリオでは、決定サービスからの「承認が必要」の結果によって、承認が提供されるまで実行を一時停止するワークフローがトリガーされ、ポリシーへの準拠が保証されます。構造化されたフォームは、従業員情報、フライト選択、運賃、コンテキストなど、関連するすべての詳細を提示し、迅速なレビューを可能にします。このワークフローはツールとして公開され、AIエージェントはこれを動的に呼び出して、人間の監視を自動化プロセスにシームレスに組み込むことができます。HITLを実装する最も迅速な方法は、Oracle Recipesを活用することです。これらはそれぞれ、共通のエンタープライズ承認パターンに基づいて設計されています。すべてのレシピは完全に編集可能であるため、チームは既製の基盤から開始し、ニーズの進化に応じて調整できます。詳細は、Oracleブログのこちらの記事を参照してください。

ステップ3: ヒューマン・イン・ザ・ループの作成

ステップ4: ツールの作成

ツールは外部から呼び出し可能な機能であり、エージェントは自然言語を使用してツールを呼び出し、アクションを実行したり、情報を取得したりできます。ツールを作成するには、(ツールの)実装となる統合を選択する必要があります。現在のユース・ケースの一部として、複数の統合を実装し、オーケストレーション中にAIエージェントが動的に呼び出すことができるツールとして公開しました。これにより、統合の説明が自動的にコピーされます。この説明は変更することもできます。

ステップ4: ツールの作成 統合の選択

「作成」をクリックすると、ツールのメタデータが表示されます。これは、ツールの使用方法を示しています。次に示すように、このツールを起動するために必要なパラメータが複数あり、最終的にそれぞれの統合が起動されます。また、LLMがこのツールをいつどのように利用するかを理解するのに役立つ包括的なガイドラインを含めることをお薦めします。たとえば、ユーザーが任意の形式で予約日を指定した場合、LLMはツールの呼び出し時に必要な形式へ変換します。

ステップ4: ツールの作成 説明とガイドラインの構成

統合ごとにツールを作成するには、同様のステップに従います。


ステップ5: エージェント・パターンの作成

別の主要な機能であるエージェント・パターンがこのユース・ケースで活用されています。ここでは、レシピ・ライブラリから基礎となるコンポーネントをインストールする、即時利用可能なReAct (26.4)パターンを選択しました。エージェント・パターンを使用すると、ガイドラインを定義できます。このパターンの目的は、エージェントがユースケース全体で一貫性、準拠性、安全性、スケーラビリティを確保できるようにすることです。その結果、AIエージェントは、インテリジェントな自動化を提供するだけでなく、企業に定義された必要なコンプライアンス、運用、アーキテクチャの標準にも準拠します。Oracleには、必要に応じてカスタマイズできるエージェント・パターンのコンプライアンス・ガイドラインが用意されています。

ステップ5: エージェント・パターンの作成

エージェント・パターンを保存すると、1つの統合がすぐに自動的に作成されることがわかります。この統合は、定義された実行、決定および相互作用ルールを適用することで、エージェントの動作を調整および管理します。これにより、エージェントが一貫して予測可能な状態で、確立されたガバナンス境界内で動作することが保証されます。ユーザーは、AIエージェントの特定のビジネス要件に合わせて既存の統合を変更できます。

ステップ5: エージェント・パターンの作成 1つの統合が自動的に作成される

ステップ6: プロンプト・テンプレートの作成

プロンプト・テンプレートは、動的変数のプレースホルダを含むすぐに使用できるシステム・プロンプトを提供し、LLMとの構造化および再利用可能な相互作用を可能にします。実行中に、これらのテンプレートには統合ペイロードから導出された値が自動的に移入され、各リクエストがコンテキストに対応し、特定のビジネス・トランザクションに合せて調整されるようになります。プレースホルダを実際のデータで置き換えると、完了したプロンプトがLLMに送信されて処理されます。さらに、OIC内のAIエージェントを1つ以上のプロンプト・テンプレートに関連付けることで、AI主導の統合全体にわたって一貫性、ガバナンス、再利用性を維持しながら、様々なシナリオやユース・ケースを処理できます。

ステップ6: プロンプト・テンプレートの作成

ステップ7: AIエージェントの作成

これで、思考パターンに基づいてエージェントを作成できます。前のステップで作成したエージェント・パターンを選択する必要があります。AIエージェントが作成されたら、必要なツールをAIエージェントに関連付ける必要があります。エージェントのガイドラインは、検索、座席予約、支払いモードなど、フライト予約システムの機能的および非機能的な要件に合わせて調整する必要があります。これにより、AIエージェントはドメイン固有のルールに従い、必要なサービスと統合され、すべてのシナリオで一貫して動作します。旅行予約AIエージェントには以下のガイドラインを使用しています。

ステップ7: AIエージェントの作成

ガイドラインが更新されたら、AIエージェントを保存してアクティブ化を実行します。OIC AIエージェントは、「本番」「監査」「デバッグ」の3つのトレース・レベルでエージェントをアクティブ化する機能を提供し、ライフサイクルの様々なステージで制御された実行、トレーサビリティおよびトラブルシューティングをサポートします。


実行

AIエージェントがアクティブ化されると、JSONペイロードから抽出された値が自動的に移入されたプロンプト・テンプレートを利用して、AIエージェントが明確で構造化され、コンテキストに即した入力を受け取るようにできます。

実行: AIエージェントの実行(1)

AIエージェントは、まずユーザーの意図を理解し、定義されたガイドラインに照らして検証します。その後、選択したエージェント・パターンに従って実行を編成します。このパターンに基づいて、エージェントは必要なツールを起動し、リクエストを処理して最終的なレスポンスを生成するために各ツールに構成されたガイドラインを適用します。次に示すように、ユーザー入力に基づいて、AIエージェントは最初にGET_CITY_CODEツールを起動して、ソース都市と宛先都市の両方に対応する空港コードを取得します。

実行: AIエージェントの実行(2)

その後、AIエージェントはユーザーと対話して、移動日、フライト選択、座席番号などの残りの入力を収集します。収集された情報に基づいて、エージェントは論理推論を適用して、次に起動するツールを決定します。ツールの実行を順番に調整し、最後にフライトチケット予約を完了します。

実行: AIエージェントの実行(3)

運賃が従業員の等級に対して許可された予算を超えた場合、AIエージェントは人による承認ワークフローを開始します。次に示すように、エージェントはリクエストが適切な承認者にルーティングされていることを確認し、承認を受信するまで予約プロセスを一時停止します。


監視とトラブルシューティング

OIC AI Agentの一元化された可観測性機能により、トラブルシューティング、更新、およびライフサイクル管理全体が大幅に簡素化されます。Oracle Integrationは、AIエージェント、統合およびヒューマン・タスクをすべて単一の画面から追跡できる統合監視エクスペリエンスを提供します。この統合ビューにより、チームは、ツールを切り替えることなく、実行フローを迅速にトレースし、コンポーネント間で問題を特定し、依存関係を理解できます。その結果、企業は運用の可視性を高め、問題解決を迅速化し、AI主導の自動化ソリューションをより効率的に管理できるようになります。

監視とトラブルシューティング」

まとめ/重要なポイント

エージェント型AIによる自動化を促進 – Oracle Integrationは、強力なエンタープライズ接続性と多様なツールキットを備えたツールとして既存の統合を再利用できるようにすることで、迅速な導入を可能にします。

統合的でスケーラブルなプラットフォーム – お客様は、既存のフットプリント内でエージェント・ソリューションを簡単に導入でき、予測可能なワークフローと動的なAI主導の自動化を単一の環境で組み合わせることができます。

運用とガバナンスの簡素化 – 一元化された可観測性と、組込みの本番モード、監査モードおよびデバッグ・モードにより、一貫したポリシーと制御によるメンテナンス性、トラブルシューティング、コンプライアンスが向上します。

イノベーションとオーケストレーションの高速化 – 統合、ルール、ヒューマン・タスク、ナレッジ・ベース、AIエージェントを統合した設計エクスペリエンスにより、シームレスなオーケストレーションを実現し、インテリジェントなエンドツーエンドの自動化ソリューションの開発を加速します。


おわりに

エージェント型AIは、単なる自動化の段階的な強化ではなく、企業がビジネス・プロセスを設計、実行、管理する根本的な変化を表しています。厳格な事前定義済ワークフローから意図に基づいた適応型実行に移行することで、組織は業務における新しいレベルの柔軟性とインテリジェンスを実現できます。

Oracle Integrationでは、この移行は実用的かつ制御可能です。再利用可能な統合をツール、宣言的な意思決定、コンテキストに基づく知識、人間の監視として組み合せることで、企業は設計段階からインテリジェントで、アーキテクチャによってスケーラビリティを確保し、ポリシーに基づいたガバナンスされた自動化を実現できます。これにより、企業は、エンタープライズ環境で必要な制御、コンプライアンス、信頼性を維持しながら、AI主導の自動化の力を活用できます。