この記事は”Gagan Singh“による“Oracle Database 23ai Recovery Manager (RMAN) New Features Part 2 – Celebrating Three Decades of Data Protection & More!”の日本語翻訳版記事です。

2025年7年4日


Oracle Database 23ai:強化された RMAN 機能

Oracle Database23aiの勢いを背景に、RMAN はさらに堅牢、迅速、かつ安全性が向上し、このリリースでデータベースのバックアップとリカバリ機能が大幅に改善されました。本記事では、次の主要な強化ポイントについて詳しく見ていきます。

高度なセキュリティ機能:XTSブロック暗号モードを活用した新しい強力なバックアップ暗号化アルゴリズムを解説していきます
性能および可用性の強化:RMANがどのようにパフォーマンスを最適化し、高可用性を実現しているかを紹介していきます
Oracle統合の新機能:オンプレミス向けZero Data Loss Recovery ApplianceおよびOCI/マルチクラウド向け Zero Data Loss Autonomous Recovery Service(ZRCV)とのシームレスな統合について見ていきます。

高度なセキュリティ機能

RMANのバックアップ暗号化アルゴリズムは、今回のリリースから AES‑256(XTS モード)をデフォルトとして使用しています。COMPATIBLE初期化パラメータが 23.0.0 以上に設定されていれば新しいバックアップは自動的にこの暗号方式を使い、以前の設定との互換性も維持されます。

Figure 1

設定方法

設定方法は以下のようになります:

RMAN> CONFIGURE ENCRYPTION FOR DATABASE ON;

または

RMAN> SET ENCRYPTION ON

Figure 2a

パフォーマンスと効率の強化

  • カタログのアップグレード中、実行中のRMANジョブを一時停止できるようになりました。

  • 計画用途のために処理時間の統計が保存されるようになりました。

  • VALIDATE DATABASEを使って、破損したデータファイルブロックを自動的に修復できます。

  • 圧縮アルゴリズムが、より高速なZSTDに更新されました。

高可用性の強化

  • REGISTER DATABASE実行後の初回同期がより効率的になりました。

  • 同期処理中の作業損失を防ぐために、内部的なセーブポイントが導入されました。

  • バックアップ実行中にリカバリ・カタログへのクライアント接続を切断することで、接続への依存を最小化できます。

  • ASMファイルディレクトリエントリに対するブロック単位のメディアリカバリがサポートされました。

  • RAC データベースのバックアップ/リカバリにおける障害耐性が向上しました。

柔軟性と使いやすさの向上

  • Data Guard環境向けに、スタンバイデータベースをRMANカタログに登録できるようになりました。これにより、従来はプライマリデータベースのみしかカタログ登録ができなかった制限が解消され、バックアップ構成の自由度が高まります。

診断機能の強化

  • RMANセッション中には追加のデバッグメッセージが自動で出力されるようになり、サービスリクエスト時のトラブルシューティングが容易になります。これにより、問題の再現やログ収集の手間が減り、対応時間を短縮できます。さらに、エラー発生時には自動的にトレースファイルが生成され、原因究明が迅速になります。

フラッシュバックログ保存先の管理

Oracle Database 23aiより前のバージョンでは、フラッシュバックログはFast Recovery Area(FRA)のみ保存可能でしたが、今後は別の保存先を指定できるようになりました。これによりFRAの空き容量管理が不要になり、高速ディスクを保存先に利用することでI/O性能も向上します。

設定方法

設定用パラメータはDB_FLASHBACK_LOG_DESTDB_FLASHBACK_LOG_DEST_SIZEで、以下のように ALTER SYSTEM で変更できます:

例えば、

SQL> alter database flashback off;

Database altered.

SQL> alter system set db_flashback_log_dest=’/u01/oracle/dbs/ofba2′;

System altered.

SQL> alter database flashback on;

Database altered.

Oracle統合の新機能

Oracle Database 23aiは、Select AI、Vector Search、In-Database 機械学習、JSON デュアリティなど、業界をリードする最先端機能を取り入れ、あらゆる規模のワークロードに対応できる構成になっています。コンバージド・データベースのアプローチにより、専用のデータストレージが不要となり、統合が簡素化されます。

次世代 AIアプリケーションに対応する多様なデータと従来の関係データを同一データベース内で扱うには、バックアップやリカバリ、セキュリティ、パフォーマンス、可用性のすべてが強化される必要があります。また、Oracle Databaseが企業にとって最も重要な資産を保持していることが多く、ランサムウェアの標的になりやすいため、ゼロ・データ・ロスの保護と復旧能力が極めて重要です。こうしたニーズに応えるため、RMANはオンプレミス向けのZero Data Loss Recovery Appliance(ZDLRA)や、クラウド向けのZero Data Loss Autonomous Recovery Service(ZRCV)とネイティブ統合されています。

Zero Data Loss Recovery Appliance(ZDLRA)

Recovery Appliance はオンプレミス環境向けのOracleフラッグシップバックアップソリューションであり、以下の特長を備えています:

  • 障害発生時でもデータ損失ゼロのリカバリ

  • バックアップ検証や異常検知における負荷ゼロ

  • 継続的差分バックアップのハイパフォーマンスとリソース効率

  • 毎日の仮想フルバックアップによる超高速復旧

  • 暗号化された圧縮バックアップでスペース効率向上

  • 保護状態と復元可能性に関する詳細な可視化

 

ZDLRA+RMAN統合の例

19.27以降のインストールでは、RMANにZDLRAバックアップモジュール(libra)が標準で含まれるようになり、ZDLRA をバックアップ先として簡単に設定でき、更新も自動的に反映されます。また、“Space-Efficient Encrypted Backups” 機能では、TDE 暗号化されたバックアップを圧縮・再暗号化した上で、Recovery Appliance の仮想フルバックアップ形式に変換します。この処理により、汎用バックアップ装置に比べて 3倍以上のストレージ節約が可能です。

保存データは常に暗号化されたまま保管され、クラウドやテープにコピー・復元されても復号されません。暗号鍵は保護対象データベース側でのみ管理されます。また、バックアップデータを保護対象側で圧縮することで、ストレージ使用量の削減だけでなくバックアップや復元のパフォーマンスも向上します。

さらに Smart Incremental Backup を組み合わせることで、ZDLRA 上のリカバリウィンドウにギャップがある場合でも、必要な差分が自動的に検出・補完されるため、常に整合性のあるバックアップ状態を維持できます。

Zero Data Loss Autonomous Recovery Service(ZRCV)

Recovery ServiceはOCIおよびマルチクラウド環境向けの完全マネージドサービスで、オンプレミスの ZDLRAテクノロジーをクラウドで提供します。すべてのバックアップ/リカバリ操作は OCI による自動化と RMAN統合によって実行されます。

この Recovery Serviceはクラウドデータベース保護に最適化されており、次の利点があります:

  • 毎週のフルバックアップを廃止し、差分のみの “incremental forever” アプローチを採用。バックアップによる CPU・メモリ・I/O 負荷が軽減され、データベースリソースはビジネス処理に集中できます。

  • データ異常に対するバックアップの検証を実施。イミュータブル設計と組み合わせることで、テナンシー内の誰によっても変更できず、ランサムウェア発生時にも復旧準備が整っています。

  • 保護状態を一元的に表示するダッシュボードを備え、バックアップ状況の可視化が可能。「バックアップは正常か」「最終バックアップはいつか」「どこまで遡れるか」「使用ストレージは?」「全データベースで保持ポリシーが統一されているか」などを確認できます。

Database Backup Cloud Service

Backup Cloud Serviceは、オンプレミスおよびクラウドデータベースをOCI Object Storageに安全かつスケーラブルにバックアップするサービスです。このサービスのライセンスにはRMANによる暗号化と圧縮が含まれており、通常であればAdvanced Securityや Advanced Compressionオプションが必要な機能を追加費用なしで利用できます。インストールおよび設定はワンステップで行え、バックアップとリストアは通常通りRMANで実行できます。

Oracle Database 23ai Recovery Manager (RMAN) の新機能 Part1&Part2のまとめ

RMAN DB 23aiの使いやすさを向上させる新機能と、前編および本ブログで取り上げたテープ/クラウドバックアップの機能強化について、以下のようにまとめています。

まとめ

メリット

簡素化されたOracle RMANバックアップ・モジュールの提供 最新のOCI/S3/Recovery Applianceバックアップ・モジュールは、各DBリリースのアップデートで提供されるため、My Oracle Supportから新しいモジュールを個別にチェックしてダウンロードする必要はありません。
OCI Object Storage Immutable Bucketsを使ったシンプルな構成 新しいOCIバックアップモジュールインストーラー(oci_install.jar)は、不変バケットのすべての設定ステップを自動化し、バックアップモジュール設定ファイルの手動更新を不要にします。

簡素化されたデータベース・プラットフォームの移行

新しいRMANバックアップ、リストア、リカバリコマンドオプションは、エンドツーエンドのデータベースプラットフォーム移行作業を自動化し、データの準備と移行に外部スクリプトを必要としません。

テープ/クラウド/サードパーティのバックアップ先をまたいだバックアップのコピー

新しいRMANバックアップオプションは、SBTバックアップ先(テープやサードパーティバックアップメディアなど)から別のバックアップ先(クラウドオブジェクトストレージなど)へのバックアップのコピーをサポートします。これにより、レガシー/廃止されたストレージ上のバックアップを、Zero Data Loss Recovery ApplianceやOCIオブジェクトストレージなどの新しいバックアップストレージプラットフォームに簡単に移動し、RMANでカタログ化してレポートやリストア操作に利用できます。

高度なセキュリティ機能

DB 23aiのリリースは、強化された暗号化機能とイミュータブル・ストレージ・オプションによってセキュリティを強化し、ランサムウェア攻撃やデータ侵害に対する比類のない耐性を提供することで、機密データの強固な保護を保証します。

パフォーマンスと高可用性の強化

Oracle DB 23ai の RMAN に対する最新の機能強化は、データの整合性と回復力を向上させる高度な機能を導入しています。主な機能には、データ破損の検出と自動修復の強化、可視性を高めるロギングの改善、簡素化されたコマンドセットによるデータ転送の柔軟性の向上などがあります。さらに、カタログとの最適化されたRESYNC操作により、カタログ接続に問題が発生した場合のバックアップ操作の回復力が向上します。

オラクル統合イノベーション

RMANは、オラクルの主要なデータ保護ソリューションであるZDLRAおよびZRCVと統合されており、スペース効率に優れた暗号化バックアップなど、データベース独自の機能を提供します。暗号化バックアップでは、静止状態のデータが常にエンドツーエンドで暗号化され、汎用バックアップアプライアンスと比較して3倍以上のストレージ節約を実現します。

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