即戦力のAIのスペシャリストとして日々活躍

~学生時代の専攻をAI Chat サービス開発で発揮~

 

こんにちは。OPN事務局です。今回は、2024 Oracle Partner Awards – Japan Innovation Category を受賞された 株式会社 クロスキャット様から受賞の対象となったサービスの開発者の一人であり、大学院での専攻を生かして新卒一年目からAIスペシャリストとして活躍されている仲 直航 様にスポットライトを当てご紹介します。

 

OPNEng14.jpg

 

株式会社 クロスキャット
DX推進室 AIエンジニア
仲 直航 様

 

▼これまで手掛けてこられた仕事内容や主なプロジェクトについてお聞かせください。

OCI Generative AI ServiceのCohere + 23ai Vector Search による Retrieval-Augmented Generation (RAG) の検証、自社向けチャットボットシステムの開発、および CC-Dash AI Chat サービス「CChat」の開発に携わっております。

自社のソリューションブランド「CC-Dash」は、データ活用によってお客様のDX推進を支援する当社独自のフレームワークです。「CC-Dash」のソリューションサービスのラインナップの一つとして新たにAI Chat サービス「CChat」を加え、開発を行っております。

 

▼現在の仕事内容についてお聞かせください。

「CC-Dash AI Chat サービス CChat」のサービス開発を行っています。また、今後ほしい機能を盛り込むための市場調査など、社内外におけるチャットボットシステムの需要を分析し、それに応じた機能追加にも力を入れております。

 

▼CC-Dash AI Chat サービス CChat について

・「CC-Dash AI Chat サービス CChat」の概要をお聞かせください。

CC Dash AI Chat サービス「CChatは、LLM(大規模言語モデル)とRetrieval-Augmented Generation (RAG) を活用したSaaS型のAIチャットサービスです。社内ルールやマニュアルに関する問い合わせや管理に多くの時間を費やしている方々に向けて、CChatは社員に代わって質問に応対します。社内ルールやマニュアルなどの文章をそのまま登録するだけで、AIが自動的に解析し、チャットボットが完成します。自然言語で質問できる点が大きな特徴であり、事前に質問・回答のフローを作成する必要がないことも嬉しいポイントです。

他のAIチャットサービスとの違いと強み/特長は、パーソナル情報に対応した権限付与が可能なことです。個別に閲覧権限を付けられるため、同じ質問でも質問している人の属性に応じて回答を変えることができる点です。また、お客様自身で精度を向上させることができる点も大きな特徴です。

 

▼このプロジェクトにどのような形で参加されましたか。

主に開発担当として参加しました。

Max3名体制のチームで、私はAI部分の開発/フロントエンドを担当しています。管理系の部分で別のエンジニア、OCIのインフラの部分でもう一人担当しています。

プロジェクトには一番最初の段階から携わっており、この製品を作ろうとする前段階の、RAGやLLMでどのようなことができるのか調査・検証する段階から参加してきました。このサービス化を視野に入れた調査や検証が、Oracle Partner Awards 2024受賞のきっかけともなっています。

入社前、大学院時代は機械学習系/情報検索系の勉強をしていましたので、専攻を生かしてプロジェクトにスムーズに入っていけたと思います。

 

▼プロジェクトに取り組むにあたり、個人としてどのようなスキル等の準備をしていますか。

個人としてできるだけ幅広い知識を持つよう心がけました。少人数での開発であったため、サーバやミドルウェアの設定、データベースの設計、CChatシステムの開発、ウェブデザインやコーディングなど、多岐にわたる業務を担当しました。どのようなタスクが発生しても対応できるよう、全ての分野においてスキルを磨いて準備しておきました。

知識を得るため、インターネット上の英語の技術者コミュニティサイトに参加し、投稿やQ&Aなどを通じて、経験者との交流を続けていました。また、誰でも論文投稿できるサイトを閲覧するなどして、常にAI技術の動向に触れるよう心がけています。

弊社の外部向けブログで共同執筆者として得た情報や知識のアウトプットをしたり、DX推進室として8月にRAGに関して社内セミナーを主催するなどしています。

 

プロジェクト開発にあたって、特に工夫された点/苦労された点を教えてください。

ユーザー個々人に最適な回答を提供できる設計に特に注力しました。具体的には、質問者の情報を考慮した回答を生成する仕組みを構築し、各ファイルに閲覧権限を設定することで、質問者がアクセス権のない情報は回答に含まれないようにしました。質問に忠実に回答しつつ、不要な情報を提供しないチャットボットを作成することで、ユーザー体験の向上を図りました。

実装に関して苦労した点は、大規模言語モデル(LLM)を使用した際に出力が安定しないことも多々あるので、安定させるためにいろいろ試したところです。具体的には、閲覧権限ごとに回答される文面を変えつつ、同じ閲覧権限なら同じ回答を提供したいと考えました。入力された質問を独自のフォーマットと合成することで安定化を図りました。

私個人としては、初めてのチーム開発で戸惑うこともありましたが、他のエンジニアや皆さんから多くのサポートをいただき、円滑なコミュニケーションを築くことができました。

 

※上司の小森様にもお伺いしました。

小森様:

学生時代に一人で開発していた彼にとって、会社で複数名で開発することは初めての経験であり、色々と違いを感じるということは私も想定していたので、教育の意味も込めてベテランのエンジニアと組んでもらったという経緯があります。彼がその違いに気付いて、うまく立ち回ってくれたのは私の思惑通りというところでしょうか。ベテランのエンジニアにとっても、かなり年の離れた若手と仕事をするのは良い刺激になったと思いますし、チームとして相乗効果を出してくれました。

また、会社としてはリモートワークの制度は設けているのですが、今回のプロジェクトメンバーはたまたまオフィス勤務を希望するエンジニアばかりだったため、コミュニケーションの取りやすさもあったかと思います。

 

▼今回ご採用いただいたオラクルの最新ソリューション(Oracle Database 23ai, Oracle Cloud Infrastructure (OCI) Generative AIサービスなど)

に取り組むにあたって、特に工夫された点/苦労された点をお聞かせください。

データベースにどのような情報を登録すれば精度が向上するかを検証しました。具体的には、ベクトル検索に投入するベクトルをどのように生成するかが課題でした。単にテキストをベクトル化して登録するだけでも一定の精度は得られますが、その他データも貴重な情報であると考えました。これらの情報を組み合わせて、ベクトル検索で必要な情報のみを効率的に検索できるシステムの構築に注力しました。

アーキテクチャについては、メインに Oracle AI Vector Search を使用し、補助的な技術を組み合わせることで、様々な観点からユーザに適した検索結果を提供しています。ベクターサーチ単体でも適切な検索や絞り込みは可能ですが、追加の処理を加えることで、さらに出力の精度を高くすることができました。

Oracle AI Vector Search に文章や取り込む際の文章の前処理や情報の加工も行っており、複数の技術を組み合わせることで高精度な出力を実現しています。

 

▼クロスキャット様の今後のAIへの取り組みについてお聞かせください。

※上司の小森様にお伺いしました。

小森様:

OCI Generative AIを中心にお客様個別のAI案件に取り組みながら、CChatのように、AIを簡単かつリーズナブルに活用できる新たなサービスを開発していきます。また、AIを活用して自社内の業務効率化、生産性向上を図りたいと考えています。

会社としてはもともとデータ活用ということでBI系のビジネスを20年以上やっておりまして、オラクル社ともBI系のビジネスを中心に長年の付き合いがあります。BIでデータを集めて可視化するだけではなく、その先のデータの利活用をやっていこうという中で、近年AIがメディアでも取り上げられるようになり、弊社としても推進していこうという機運が高まりました。

そのため、大学院/学生時代に既にきちんとAIや機械学習を学んできた人材を、通常の採用とは別枠でスペシャリスト採用し、その所属先として2023年度にDX推進室ができたという経緯があります。彼は二期生にあたります。DX推進室に所属する新卒社員は、すべてAI開発などの高度な技術を既に備えている人材ということになります。

昨年度はDX事業部配下の一部署だったのですが、2024年度からは独立した事業部と同じ扱いとして社長直轄の組織になっております。

 

▼「2024 Oracle Partner Awards – Japan Innovation Category」受賞に際して、一言いただければと思います。

大変光栄に思います。今後もオラクルのサービスとAIを組み合わせた製品を生み出し、さらなるイノベーションを追求していきたいと考えております。オラクルの輪を広げることで、多くの方々に価値を提供できれば幸いです。これからも一層努力してまいります。

 

▼ご自身が今後取得予定のOracle認定資格を教えてください。

OCIのAI関連の資格に興味があり、今後取得を目指したいと考えております。具体的には、「Oracle Cloud Infrastructure 2024 Certified AI Foundations Associate」や「Oracle Cloud Infrastructure 2024 Generative AI Certified Professional」などの資格取得を検討しております。

認定資格試験の勉強は各自やっているのですが、弊社DX推進室ではOracle製品関連の資格はまずCChat関連でメインでやっている私が先駆けて取得していこうと考えています。

 

▼御社DX推進室として行っているAIビジネスのエンジニア育成についてお聞かせください。

※上司の小森様にお伺いしました。

小森様:

AI分野は特に進歩が早いため、過去に経験した技術分野、得意な技術分野にはとらわれずに、様々な案件にアサインして都度最新の技術をキャッチアップするスキルを身に着けてもらっています。

また、AIは難解な部分もあるため周囲のITエンジニアやお客様ときちんとコミュニケーションがとれることが重要と考えています。そのため、わかりやすく説明したりお客様の意図をくみ取ることができるように、提案書作成やお客様と会話する機会も積極的に与えています。

AI分野についてはもともと教育を受けているスペシャリスト採用なので、会社としてあらためて教育ということはそれほど考えていません。実際のAIの提案や案件に対応しながら、必要な技術はその技術が必要になったときに論文などを通して都度リアルタイムでキャッチアップしてもらっています。案件で提案をする際や、プロジェクトの中で詰まった際には、現在1期生+2期生で構成される推進室のAIエンジニア間でディスカッションをする場を設けてお互いの知見やスキルを共有し、高め合うようにしています。

推進室のメンバーは、AI系のAPIを利用するだけではなく、自身でAIモデルを構築できるゴリゴリのAIスペシャリストです。一般のITエンジニアとは考え方もスキルセットもかなり違うところがあるので、ITエンジニアとは異なる人材と考えています。ただし、彼らを特別視するわけでなく、持っているスキルセットが異なるだけと捉えています。現にITエンジニアが当たり前に知っていることを知らなかったりもします。

そのため、ITシステムの構築や、新たなサービスを開発する際には、AIスペシャリストとITエンジニアがチームを作ってそれぞれの得意分野を組み合わせることで、相乗効果を生むことができると考えています。

 

▼今後のキャリアプランをお教えください。

当面はCChatに関連する業務に引き続き携わりたいと考えています。また、新しい技術の実用化にも興味があり、それらをCChatに搭載したり、新製品として世に送り出すことにも挑戦したいです。常に最新の技術動向を追いかけながら、自身のスキルを磨き、より多くのユーザーに価値を提供できるエンジニアを目指します。

また、推進室内では、長期的なプロジェクトに取り組む計画を議論しています。その一環として研究を進め、論文を執筆して学会で発表するなどの形で情報発信を行うことも検討しています。

 

▼同じエンジニアの皆さまへメッセージをお願いいたします。

お互い切磋琢磨しながら、技術の可能性を追求していければと思います。一緒にオラクルの技術を活用し、ビジネスを盛り上げていきましょう!

 



【OPN編集後記】

今回は、株式会社クロスキャット様から、2024 Oracle Partner Awards 受賞の対象となったサービスの開発者の一人であり、大学院での専攻を生かして新卒一年目からAIスペシャリストとして活躍されている仲 直航 様にスポットライトを当てお伺いしました。

クロスキャット様がスペシャリスト採用を通じて素養のある人材を確保し、ベテランのエンジニアとチームと組むことでスピード感を持ってAIビジネスを立ち上げられていく力強さを感じました。

仲様の今後ますますのご活躍をお祈りしております!