この記事では、HeatWave MySQLのバージョンのサポート・ポリシーについて説明します。このポリシーは、特定のバージョンの利用の可否、アップデート、サポート終了のタイムラインなどのライフサイクル管理の側面から説明しています。このポリシーをご理解いただくことで、アプリケーションを最新のMySQLのイノベーションを活用して、セキュアかつ最適な最新の状態に保ちながら、バージョン間のスムーズな移行を実現できます。
MySQL 8.0は、2026年4月に、オラクルのLifetime Support PolicyのSustaining Supportという実質的なEOL(End-Of-Life)に達します。つまり、HeatWave MySQLでは、この日付以降、サポートおよびMySQL 8.0のアップデートが提供されなくなります。2026年4月の期限よりも前に、サポート対象の新しいバージョンであるHeatWave MySQL 8.4 LTS (Long-Term Support)にバージョンアップしていただく必要があります。この記事の目的は、DBシステムをMySQL 8.0から最新のLTSリリースに移行する準備を進めていただくことです。この記事は、クラウド・サービスのバージョン(HeatWave MySQL)を対象にしています。MySQLコミュニティ版、Enterprise EditionおよびNDB Cluster CGEの詳細は、MySQLリリース・ノートのドキュメントなどを参照してください
MySQL サーバーのバージョン
2023年7月に発表した新しいMySQLのリリース・モデルでは、アプリケーションおよび環境のニーズに応じて、2つのリリース・トラック(イノベーション・リリースまたはLong-Term-Support (LTS)/Bugfix)を柔軟に選択できます。どちらのリリース・トラックも本番用途レベルの品質であり、HeatWaveでサポートされています。MySQLサーバーの新しいバージョンが一般使用可能(GA)としてリリースされるとすぐに、HeatWaveでのサポートを開始します。DBシステムを最新のGAバージョンに定期的に更新することをお薦めします。これは、イノベーション・リリースのトラックまたはLTS/Bugfixのトラックから選択できます。定期的な更新により、最新の機能、バグ修正およびセキュリティ・パッチを利用できます。
サポートされている MySQL サーバーのバージョン
MySQLサーバーのバージョンは、イノベーション・リリースのトラックとLTS/BugFixのトラックに分かれています。
イノベーション・リリース
最新の機能と改善を利用し、最新のテクノロジを常に把握したい場合は、MySQLイノベーション・リリースが最適です。これは、高いレベルの自動テストと、アップグレード・サイクルを高速化するための最新の継続的統合技術を備えた、ペースの速い環境で作業する開発者およびデータベース管理者にとって理想的です。たとえば、MySQL 8.1.0は最初のイノベーション・リリースです。MySQLデータベースの最新の機能、改善およびすべてのバグ修正が必要な場合は、イノベーション・リリースの9.xを使用します。
LTS/BugFix リリース
LTS/Bugfixリリースには必要な修正のみが含まれているため、環境がデータベース・ソフトウェアの確立された動作を必要とする場合は、より適切な選択となります。機能は、LTSリリースの最初のバージョン(8.4.0 LTSなど)でのみ削除および追加されますが、同じLTSリリースの以降のバージョン(8.4.1 LTSや8.4.2 LTSなど)では基本的に追加されません。MySQL 8.0の場合、8.0.34は最初のBugfixバージョンで、8.0リリースでは後続のバージョン(8.0.35や8.0.36など)で機能が基本的は削除および追加されません。
FAQs:
Q: なぜ新しいバージョンにアップグレードする必要があるのですか?
A: MySQL 8.0は、2026年4月に実質的なEOL (End-Of-Life)に到達します。HeatWave MySQLでは、この日付以降、サポートまたはMySQL 8.0のアップデートは提供されません。2026年4月の締め切りより前に、8.4 LTSリリースのような、新しいバージョンのHeatWave MySQLにバージョンアップする必要があります。
Q: 2026年4月以降にMySQL 8.0から8.4にバージョンアップしないとどうなりますか。
A: DBシステムのセキュリティとコンプライアンスを確保するために、8.0バージョンのすべてのDBシステムは、メンテナンス期間中に2026年4月の締め切り後に、サポートされている8.4 LTSバージョンに自動的にバージョンアップされます。事前にバージョンアップの計画およびテストするのに十分な時間を確保し、システム全体への影響を抑えることが必要です。
Q: どのバージョンにバージョンアップする必要がありますか?
A: HeatWave MySQLでは、サポートされている最新の8.4 LTSにバージョンアップすることをお薦めします。LTSリリースのバージョンのドキュメントを確認してください。
Q: HeatWave MySQLをバージョン8.0から8.4にバージョンアップするプロセスは何ですか。
A: ステップ・バイ・ステップのガイダンスについては、メジャー・バージョンアップに関するドキュメントを確認してください。バージョンアップについては、このビデオを参照することもできます。
Q: バージョンアップの処理中に予想されるダウンタイムの影響はありますか。
A: スタンドアロンDBシステムの場合、データベース固有の停止時間は約5~10分以下で、高可用性DBシステムでは30秒未満で、その間データベースを使用できません。ダウンタイムは、DBシステムの構成や、その間に実行されるワークロードなど、多くの要因によって異なる場合があります。この停止時間はDBシステムにのみ関するものであることに注意してください。アプリケーション関連のダウンタイムをあわせて計画する必要があります。
Q: バージョンアップの処理中に予想されるパフォーマンスへの影響はありますか。
A: パフォーマンスへの影響はありません。お客様は、影響を軽減するために、バージョンアップの計画とテストに十分な時間を確保する必要があります。
Q: v8.4へのバージョンアップ後にMySQL v8.0にロールバックできますか?
A: いいえ。バージョンアップしたDBシステムはロールバックできません。バージョンアップ前に論理バックアップを必ず作成し、バージョンアップの計画と実行に十分な時間を確保することをお薦めします。
Q: MySQL v8.4にバージョンアップする主な利点は何ですか。
A:
MySQL 8.0からMySQL 8.4 LTSへのバージョンアップによる主な利点
長期サポート(LTS)リリースであるMySQL 8.0から8.4への移行により、パフォーマンスの最適化、セキュリティの強化および操作の合理化を目的として設計された、いくつかの戦略的な拡張機能が提供されます。以下は主な利点です。
パフォーマンスの向上: MySQL 8.4では、InnoDBストレージ・エンジン内で最適化が導入され、問合せの実行とリソースの効率が向上します。これにより、特に要求の厳しい読取り/書込みワークロードに対して、トランザクションのスループットの向上とスケーラビリティの向上が実現します。バッファ・プールの最適化には、hash_set_operationsオプティマイザ、set_operations_buffer_sizeが含まれます。
追加されたもう1つのパフォーマンス機能は、表に対してANALYZE TABLEが実行された際のヒストグラムの自動更新です。これは、ANALYZE TABLEにAUTO UPDATEオプションを付けることで有効にできます。
高度なセキュリティ機能: セキュリティは8.4で大幅に強化されています。従来のmysql_native_passwordプラグインは、より堅牢なcaching_sha2_password認証方式に移行して、デフォルトで無効になりました。さらに、FLUSH PRIVILEGES文やOPTIMIZE_LOCAL_TABLEなどの新しい粒度の細かい権限によって、制御が強化され、潜在的なセキュリティ・リスクが軽減されます。
最適化されたレプリケーション: マルチスレッド・レプリケーションが強化され、START REPLICA文のSQL_AFTER_GTIDSオプションとパラレル・アプライヤ・スレッドとの完全な互換性があります。この改善により、レプリカの同期が高速化され、高可用性構成でのパフォーマンスと信頼性が向上します。
合理化されたアーキテクチャ: サーバー関連のソースコード最適化により、システムの複雑さが軽減され、メンテナンス性と運用の安定性が向上しました。このリリースでは、–sslや–no-dd-upgradeなどのオプションや、avoid_temporal_upgradeなどの廃止された変数など、非推奨の機能が削除されています。
OLTPおよび混合ワークロードのパフォーマンスの向上: 8.4では、HeatWaveにより、ウィンドウ関数、分析関数 (HLL、CUBE、修飾、表サンプル、グループ化セット)およびJSON関数などのSQL関数/演算子のサポートを含む、より多くのワークロードが高速化されます。
HeatWave Lakehouse: 8.4では、HeatWave Lakehouseは、parquetファイルに加えて、JSONおよびAvroファイル形式のサポートを追加しました。これにより、オブジェクト・ストレージ内のファイルを処理して、パフォーマンスの高い分析と機械学習を実現できます。
HeatWave AutoML: 分類および回帰タスクのサポートに加えて、HeatWave AutoMLは、8.4のテキスト列に対する異常検出、予測およびレコメンデーション・システムのタスクのサポートを追加しました。ML(機械学習)のライフサイクルを自動化することで、HeatWave AutoMLにより、MLの専門知識を持たないユーザーであっても、MySQLおよびオブジェクト・ストレージに格納されたデータ全体でアプリケーション開発を加速できます。
MySQL 8.4 LTSにバージョンアップすることで、優れたパフォーマンス、セキュリティの向上、管理しやすいデータベース・プラットフォームを活用し、長期的なサポートを確保しながら、最新の本番対応環境のニーズに合わせて配置されます。
Q: MySQL 8.4にバージョンアップする際に注意する必要がある互換性の問題はありますか。
A: MySQL 8.4へのバージョンアップは、いくつかの計画を立てておくことで、簡単かつシンプルに実行可能です。ほとんどの場合、既存のMySQL上で実行するSQL文、アプリケーションおよびツールを新しいバージョンに持ち込むことができます。ですが、一部の環境やアプリケーションでは、互換性の問題が発生する可能性があります。本番システムをバージョンアップする前に、まずテスト用環境でMySQL 8.4を使用してアプリケーションをテストし、すべてがスムーズに動作することを確認することが重要です。変更のリストについては、MySQLの公式ドキュメントを参照してください。
Q: バージョンアップ時にデータはどうなりますか?
A: データベースのバイナリを入れ替えるだけでバージョンアップは完了し、通常はデータ損失やデータの問題は発生しません。ただし、事前に手動でバックアップを作成し、テスト環境でアプリケーションをテストすることを強くお薦めします。この準備は、予期しない問題が発生した場合の潜在的なデータ損失を防ぐのに役立ちます。
Q: バージョンアップのプロセス内で問題が発生した場合、どのようなサポートを利用できますか?
A: バージョンアップ関連の問題に対するサービス・リクエストを作成して、HeatWave MySQLサポート・チームに連絡してください。
参考情報:
