ICH E6(R2)ではRisk-based approachが追加され、ICH E6(R3)ではさらにQuality by Design、Critical to Quality factors、proportionate risk-based approachの考え方が明確になりました。また、セントラルモニタリング、データレビュー、メタデータレビュー、テクノロジーの活用についても、より現代的な臨床試験の実施を前提とした考え方が示されています。では、これらの考え方をCTMSにどのように落とし込めばよいのでしょうか。

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Risk-based approachとは何か

Risk-based approachは、決して「プロセスを勝手に省いてよい」という意味ではありません。重要なのは、試験の目的、被験者保護、データの信頼性に与える影響を踏まえ、リスクに応じた品質管理活動を行うことです。つまり、すべてを一律に実施するのではなく、重要なリスクにリソースを集中させるという考え方です。

日本型CTMSでの実装

日本型CTMSは、基本的には「やったことを記録する」システムです。そのため、Risk-based approachに基づいて実施した活動は、CTMS上に記録することができます。一方で、Risk-based approachにより実施頻度を下げた活動や、省略・変更した活動については、その判断根拠をCTMS外で説明する必要が生じることがあります。例えば、モニタリング頻度を4週間ごとから8週間ごとに変更した場合、日本型CTMSでは、実際に行った8週間ごとの訪問記録は残せます。しかし、なぜ4週間ごとではなく8週間ごとでよいと判断したのか、その判断がどこで承認され、どのようにモニターへ伝達されたのかは、別途管理が必要になる可能性があります。

グローバルCTMSでの実装

グローバルCTMSでは、試験リスクや施設リスクに応じて、適用するアクティビティリストそのものを変更することで、Risk-based approachを実装できます。例えば、ある施設のモニタリング頻度を4週間ごとから8週間ごとに変更する場合、Study ManagerやCentral MonitorがCTMS上のアクティビティリストを変更します。すると、モニターには8週間ごとの訪問タスクが表示され、それに従って活動することになります。この場合、モニターは「本来は4週間ごとに訪問すべきところを、なぜか8週間ごとに訪問している」のではなく、「リスク評価に基づき、8週間ごとの訪問が現在の計画である」と理解できます。つまり、グローバルCTMSでは、Risk-based approachをモニター個人の判断や記憶に依存させるのではなく、システム上のアクティビティとして実装することができます。

CTMSに求められること

ICH E6(R3)時代のCTMSには、単なる記録保管ではなく、以下のような役割が求められます。
• 試験・施設ごとのリスクに応じてアクティビティを設定できること
• モニタリング頻度やタスクの変更履歴を追跡できること
• 予定と実績の差分を可視化できること
• 未完了タスクや期限超過を把握できること
• IssueやCAPAと連動し、リスクの再評価につなげられること
• Central MonitoringやCRO Oversightに必要な情報を提供できること

Risk-based approachをCTMSの観点で考えるとは、単に「活動を減らす」ことではありません。リスクに応じて必要なアクティビティを定義し、その実施状況を可視化し、必要に応じて見直せる仕組みを持つことです。


次回は、なぜ今グローバルCTMSが必要とされているのかを考えます。