CTMSについて考える~ICH E6(R3)時代に、CTMSをどう活用するか~

ICH E6(R3) Principles and Annex 1は、2025年1月にStep 4に到達しました。欧州ではEMA*1において2025年7月23日に適用開始となり、米国ではFDA*2が2025年9月にFinal Guidanceとして公表しています。R3で特に重要になったのは、単なる「Risk-based approach」ではなく、Quality by Design、Critical to Quality factors、proportionate risk-based approach を前提に、治験の計画・実施・監督・記録・評価を考える点です。

この連載では、ICH E6(R3)の考え方を踏まえ、CTMSをどのように活用すれば、より効果的に治験を管理できるのかを考えていきます。

*1: ICH E6 Good clinical practice – Scientific guideline | European Medicines Agency (EMA) https://www.ema.europa.eu/en/ich-e6-good-clinical-practice-scientific-guideline

*2: E6(R3) Good Clinical Practice (GCP) | FDA https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/e6r3-good-clinical-practice-gcp


第1回:日本のCTMSとグローバルCTMSの違い

日本では、日系製薬メーカーの多くが、これまで日本独自のCTMSを利用してきました。私自身も、かつてモニターとしていわゆる日本型CTMSを使った経験があります。その中で、グローバル試験で使われるCTMSとは、いくつか大きな違いがあることに気づきました。

システム設計思想の違い

 一言でいうと、両者の違いはシステム設計思想の違いです。多くの日本型CTMSは、日報やモニタリング記録をベースに設計されているように見えます。つまり、「その日に行った活動を報告書として記録する」ことが中心です。一方、グローバルCTMSは、日報というよりも、顧客情報管理、案件管理、アクティビティ管理を中心としたCRM、つまりCustomer Relationship Managementの考え方に近く、進捗管理に重きを置いています。

 日本型CTMSは、よく「GCP管理型」ともいわれます。GCPで要求される一定の条件を満たさない限り、次のステップには進ませないという考え方です。ただし、多くの場合、それぞれのステップに明確な期日が設定されているわけではありません。

 一方、グローバルCTMSでは、事前に実施すべきタスクが定義され、それぞれのタスクにDue Date、つまり期日が設定されています。モニターは、期日までにタスクを完了することが求められます。そのため、現在やるべきことがいくつあり、そのうち何件が完了し、何件が未完了なのかを、進捗率として把握することができます。

 この違いをシステム的に表現すると、日本型CTMSには基本的に「未来の日付」が入りにくく、グローバルCTMSにはタスクの完了予定日という「未来の日付」が入る、ということになります。

 日本型CTMSでは、実施したことを記録するため、過去にさかのぼって、何を行い、どのような経緯だったのかをモニタリング報告書として文章で説明します。一方、グローバルCTMSでは、事前に定義されたタスクについて、実施したかどうか、予定通り完了したかどうかを管理します。

 また、日本型CTMSでは、モニターの行動に直結するインプットは主にSOPです。モニターはSOPを確認し、それに従って行動する必要があります。

 一方、グローバルCTMSでは、SOPで定義された業務がCTMS上のアクティビティとして登録されます。モニターは、システム上に表示されるアクティビティリストに従ってタスクを進めることで、試験を管理していくことができます。ここまでの日本型CTMSとグローバルCTMSの違いを整理すると以下のようになると思います。

日本型CTMSとグローバルCTMSの違い

観点従来のCTMS、GCP管理型グローバルCTMS、Activity管理型
基本思想「やったこと」を記録する「やるべきこと」を特定する
ベース日報・記録ToDoリスト・アクティビティ
管理対象実施結果と経緯予定、実績、進捗
期日管理期日が明確でない場合があるすべての主要アクティビティに期日がある
日付の考え方過去の日付が中心未来の日付、予定日、Due Dateを管理する
モニターの入力実施内容や経緯の説明タスク完了状況、予定との差分
主なインプットSOPCTMS上のアクティビティリスト
管理の目的GCP上必要な記録を残す試験の進捗とリスクを可視化する

次回は、モニタリング報告書について考えます。