近年、RTSMRandomization and Trial Supply Management)が臨床試験の実施において重要な役割を果たしていることが広く認識されています。RTSMは、被験者の無作為化と治験薬のサプライチェーンを管理するために設計された包括的なシステムで、これにより、被験者の無作為割り付けや治験薬情報の管理、治験薬の再配送や在庫状況の可視化などの管理を効果的にすることが可能となります。今回はRTSMにフォーカスし、全シリーズ5回に分けてRTSMの基本的な概念から具体的な利点、今後の展望までを詳しく探っていきます。

シリーズ:RTSMRandomization and Trial Supply Management)を探る臨床試験のデジタルフォーメーション

1回 今更ですが知っていますか?IVRSIWRSIRTRTSMの違い

2回 改めて考えてみるITシステムの観点から見たTrial Supplyの重要性 

3回 動的割付はもう古い?!

4回 RTSMのデータ連携 with EDC:構築期間をなぜ短縮できるのか?QbD (Quality by Design) をどう実現できるのか?

5回 RTSMのデータ連携 with CTMSQbD (Quality by Design) をどう実現できるのか?

 


2回 改めて考えてみるITシステムの観点から見たTrial Supplyの重要性

今回は臨床試験におけるTrial Supplyの重要性についてITシステムの観点から考えてみたいと思います。

グローバル化、複雑化する近年の臨床試験で、Good Manufacturing Practice (GMP)およびGood Clinical Practice (GCP)に従って正しく治験薬が包装、保管、配送され、回収、破棄されるまでのプロセスをITシステムなしで保証するのはかなり困難になってきています。治験薬供給管理の重要性は、以下のポイントに整理することができると思います。

 

【患者の安全の確保
どんな臨試験においても最も重要なのは患者の安全です。ITシステムを利用した適切な治験薬供給管理により、治験薬が適切な適切な条件下で保管、配送され、被験者に交付される時点で期限切れでないことを保証することが可能です。

 

【データの整合性
治験薬の交付に関するデータに矛盾や誤りがある場合、臨床試験で得られる有効性や安全性のデータの信憑性に疑いが生じる可能性があります。例えば、誤った症例に対して治験薬が交付されたり、交付数量を間違えたりすることによって正しい結果が得られなくなる可能性があります。特に、治験薬投与による有効性反応・安全性反応に基づいて試験の途中で投与量やレジメンが変更されるような試験デザインに対応するためにはITシステムを用いた厳格な供給管理が不可欠です。また、未使用治験薬、回収した治験薬(残薬)、有効期限切れの治験薬を適切に施設から回収し廃棄するまでをプロセスとして保証するにはITシステムなくしては非常に困難になります。

 

【コンプライアンス】
規制当局は治験薬の供給管理に関して厳格なガイドラインを持っています。遵守しない場合、実地調査での指摘の対象、承認の遅延に繋がる可能性もあります。ITシステムのチェック機能を活用してコンプライアンスを適切に順守することが可能になります。

 

【業務効率】
ITシステムを活用した効果的な治験薬供給管理により治験薬の供給不足や供給過剰を防ぐことが可能になります。配送の管理が複雑な大規模試験、グローバル試験では特に重要です。

 

【コスト管理
ITシステムの再供給アルゴリズムを活用することで施設の治験薬在庫の最適化を行うことにより、廃棄する治験薬を減らすことが可能になります。また、予測的再供給アルゴリズムを活用することにより配送回数を最適化することによりコストを削減することが可能になります。かつては症例単位で治験薬を納入していたことが多かったと思いますが、症例単位での治験薬交付におけるデメリットは以下になります。

  • 症例単位で治験薬を交付すると、途中脱落となった場合に残りの治験薬がムダになります。高価な治験薬の場合、大きな損失になります。
  • 症例単位で治験薬を交付する場合、その症例の最終ビジットまで有効期限が確保されている治験薬が交付される必要があります。長期にわたる試験の場合、かなり有効期限が残っている治験薬しか交付できないことになり、治験薬の有効利用という点で損失になります。
  • 治験薬投与による有効性反応・安全性反応に基づいて試験の途中で投与量やレジメンが変更される試験デザインには対応することができません。

 

上記から治験薬の供給管理においてITシステムが重要な役割を果たしていることがご理解いただけるかと思います。

次回第3回では無作為化、特に最小化法を用いた動的割付について考えていきたいと思います。

 

 

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