はじめまして。
事業戦略本部に所属する富田愛舞(トミタカナン)と申します。
今回は、私が今関心を寄せている「Value Selling」 と「デザイン思考」についてお話しします。

シナプスの繋がった瞬間
Value Sellingと検索すると、営業トレーニングのサービスを提供する企業や、外資系IT企業が自身のセールスツールへの導入として紹介しているようなサイトが最初に出てくると思います。例に漏れず、オラクルでもValue Sellingは営業トレーニングとして取り入れられており、事業戦略のメンバーとして日々「どうやったら事業が成長するのか」を考える私にとっても関心の高いワードとなっています。
本質的には、物売りからお客様の課題発見と解決への転換、という意味において、お客様にとってメリットのある変革であり、また、AIやchatbotのようなテクノロジーに営業の仕事が取って代わられると騒がれる世界において、人間により高度なコミュニケーションが求められる必然的な変革なのだと思います。
そして、もう一つ、私がこの約1年間関心を高く持っているキーワードとしてデザイン思考があります。オラクルに関係するところでは、2014年にDesign Tech High School (d.tech)*1がカルフォルニア州で設立され、日本においてもデザイン思考にまつわる取り組みが継続的に行われてきています。
私自身もデザイン思考の研修を受け、学びの一歩を踏み出したときに、これを日々の自分の業務や会社の提案活動、そしてお客様のビジネスへの貢献をどうしたら「誰にでも」「わかりやすく」伝えられるだろう、という悩みがありました。
そんななか、Value Sellingについて語るGlobalのチームのWebcastを受講し、自分のなかでのシナプスが繋がるような感覚がありました。

共感と”Active Listening”
デザイン思考の重要なステップとして「共感」があります。共感を英語では、”Empathy”という言葉で表現し、これは同情や思いやりを現す”Sympathy”とよく混同されますが、明確に言葉が使い分けられています。このWebcastのなかで、Value Sellingでも同様にEmpathy、つまり「共感」が重要とされていることに、ようやく気付くことができたのです。
共感とは、自らがその対象と同じ目線で感情を共有することと理解しています。「顧客目線」というような言葉は日々耳にしますが、デザイン思考のプロセスのなかの「共感」とこれが繋がり、はっとしました。
この「共感」を実践するための有効な手段に”Active Listening” があります。“Active Listening” では言語化された情報と、非言語的情報のどちらもが重要視されます。言語的なコミュニケーションのなかでは、絶対的に相手を肯定する姿勢を前提に、相槌やオウム返し、そして事実だけでなく相手の思想や感情を引き出す質問をすることを目指します。非言語的なコミュニケーションという点では、相手との距離感や音声のトーンにも注意し、また相手の表情や身振り手振りを観察することも「共感」に近づく重要な鍵となります。
デザイン思考のワークショップのなかでは、これを実現するために予め質問の準備に時間を設けたり、意識的に聞くことを練習するための役割分担が組み込まれたりしています。「質疑応答」という、誰もが幼少期から当たり前のように繰り返している行動の価値を再認識することは、実は新しいスキルを取得することよりも難しいことのようにも思います。だからこそ、体系立てたワークショップのなかで、その1点だけに意識を集中させる、この経験を積むことが新たな気付きや成長に繋がるのだと思います。
Value Selling とデザイン思考の実践
Value Sellingとデザイン思考、どちらも目指すのは対象の課題解決ですが、その課題発見のプロセスを工夫することによって、違った視点を得られることに価値があります。私たちは日常のなかでつい課題を前提とした、「解決」活動のためのフレームワークや技術の応用に目がいってしまいます。当然それも重要なスキルですが、この不確実な世界においては、「課題の発見がイノベーションを生む」という発想から、オラクルはじめ多くのIT企業ではValue Sellingやデザイン思考が重要視されているのだと思います。
さて、デザイン思考での学びをどう「誰にでも」「わかりやすく」伝えられるか、これが私の課題だとはじめにお伝えしました。Value Sellingとデザイン思考が繋がったことで、私のこの課題は概ね解決しました。今回はデザイン思考のプロセスの最初にある、「共感」に焦点を充てましたが、それ以外の要素に置いても、デザイン思考のプロセスはValue Sellingの実践に繋がる要素が多分にあります。
また、今回あらためて、このブログを寄稿するにあたって今までの学びを自分の言葉でまとめ直すことにより、自分の理解も少し深めることができたように思います。
自分自身の実践と媒体による発信、この2点を地道に実施することによって、人に伝える能力も磨かれるのだろう、というのが私の結論です。
読者の皆様のなかで、デザイン思考やValue Sellingについてもっと学びたい、自社でも取り組みを進めたいといったご相談があれば是非お気軽にお声がけください。