日本オラクルのアプリケーション領域を担当するエンジニア6名で、生成AIやLLMなどの先端技術を業務にどう活用できるかを検討する新たな取り組みが始まりました。多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まり、現場での実効性を意識しながら、ソリューションの企画から検証までを進めています。このブログシリーズでは、Day1のアイディア出しからテーマ選定、実際に動かしてみた検証の様子まで、現場での取り組みをリアルにご紹介していきます。生成AIを業務にどう活かせるのか――その可能性を、ぜひご覧ください(全3回)。
第1回は、「“ERPと話せたら楽なのに”をAIで実現できるか?」と題しまして、取り組みの背景・経緯を中心をお伝えします。
生成AIやLLMで財務業務が変わるのか?
1. 社内でInitiativeが立ち上がってフリーディスカッション
2023年某日、オラクル社内でアプリケーションを担当するエンジニアに対して、新しい取り組みをするInitiativeが立ち上がりました。Initiativeの活動目的は、生成AIやLLMといった最新技術を使ったソリューション作成することです。様々な経歴を持つメンバー6名が集まり、議論することになりました。メンバーの知識レベルや経験が違うことから、まずは社内で先進技術、特に、AIに関する勉強会を実施し、情報共有をしつつ、フリーディスカッションを行いました。
フリーディスカッションでは、テーマは固定せず、オラクルの製品であるかどうかも関係なく、それぞれ自由に「できらたいいな」のアイディアを出し合うことを基本としました。その結果、メンバーそれぞれから、様々な業務領域での様々なアイディアが共有されました。
2. 色々出てきたAIの活用案
フリーディスカッションで出されたアイディアを一部共有します。
| 社内業務の効率化 | ■ RFIやRFP回答の自動作成 |
| ■ お客様からの問合せに対する模範回答の作成 | |
| ■ 顧客コミュニティサイトの要約 | |
| 財務関連 | ■ スプレッドシートからERPに自動読み込み |
| ■ 請求書のエラーチェック | |
| ■ 財務データと会話 | |
| ■ 業績予測の自動化など | |
| 人事関連 | ■ キャリアアドバイザー |
| ■ 採用スクリーニングなど | |
| 顧客管理関連 | ■ 競合情報などの提示 |
| ■ コールセンターのAIオペレーターなど | |
| システム関連 | ■ 音声でシステムにログイン |
| ■ リプログラミングサービスなど |
チームメンバーがそれぞれの経験を活かして意見を出し合ったため、多様な分野にわたるアイディアが集まりました。すべてのアイディアを対象に検証することは難しかったため、各ソリューションアイディアを、実現可能性などを基準に点数化して、対象を絞り込みました。
その結果、特に高く評価されたのは、「財務データと会話」、「業績予測」、「競合情報の提示」の3つのアイディアでした。その中でも、「財務データと会話」に関しては、大きい期待が寄せられました。
3. ERPの財務データと会話する
なぜ「財務データと会話」に大きな期待が寄せられたのか?このソリューションアイディアが特に盛り上がったポイントを紹介します。
◆財務データは難しい
財務データは、経理主計部門以外が見ても理解度に大きな差があり、欲しい情報を探すのにも時間がかかる。ましてや業務に活用することはできない。
簡単に自分の言葉で財務データを検索し、正確に財務データを理解することが重要だと思う。
◆無駄なレポート作成が多い
財務業務におけるレポート作成は、多くのレポートを作成するが、利用しているレポートは、一部に集中する傾向にある。レポート作成が増える傾向にあるのは、特定の期間にまとめて作成するため、「要・不要」の判断が明確にならないまま作成してしまったり、一時期に必要となったレポートが時間経過と共に不要になったりして、固定的なレポートが増えていってしまうからだと考える。
レポート作成に専門的な技術が必要なく、言葉で簡単に作成できるようになれば、不必要な固定フォーマットのレポート作成が減るのではないか。
◆業務の効率化して、新しい財務業務ができる
突発的に発生する資料作成は、データを検索して表を作成したり、グラフにしたりする業務に多くの時間を費やしている。これに加えて定常業務も行う必要があるため、財務担当者はデータ分析やそれに基づくインサイトを引き出す時間が少なくなってしまう。財務チームが会社へアドバイスを提供することが期待されているが、乗り越えるべき課題が存在している。
もし、レポート作成業務が言葉で行えたとすると、分業して誰でも作成することもでき、簡単にレポート作成が行えるため、この課題を克服できる。
と言った感じで、財務データと会話して簡単にレポート作成ができるメリットが大きいという議論が多く出てきました。ただ、多くの企業では財務データの多くがERPに格納されているため、「このデータを対象に言葉でデータ検索ができるか」を検証していこうという流れになりました。
第2回ではチャットを使いERPデータと会話できるか、その仕組みについてお話しします。
