本記事はHelle Henningsによる“Oracle Cloud ERP Chart of Accounts Design Considerations”を翻訳したものです。
企業の最高財務責任者(CFO)は、Cloud ERPへの移行にあたり、通常、勘定体系(COA)を見直すことがあります。 企業の成長と多様化に伴い、財務に関する洞察について悩まれているかもしれません。
このブログでは、Oracle Cloud ERPの勘定体系を最適に設計する方法を中心に説明します。
ビジネスの観点から、現在および将来の要件を評価し、次のことを検討します:
- ビジネスに適用される会計基準に対応したCOAを設計します。
- これを機に、古くなった勘定体系を整理しましょう。
- 財務結果を連結するための現在の慣行と、COAの再設計によって将来的にこのプロセスをどのようにスピードアップできるかを検討します。
- ビジネス上の意思決定のために、将来の財務報告ニーズ、ビジネス指標、KPIを特定します。
- 認識可能で意味のあるCOAセグメントで、COAを構造化します。財務データを論理的に分類し、貸借対照表や損益計算書をサポートします。
- ビジネスの成長と変化に対応できるよう、柔軟でスケーラブルなCOAを設計します。
COAの基礎を固めたら、Oracle Cloud ERPでの構成を計画します。
- Oracle Cloud ERPの企業体系と勘定体系は密接な関係にあるため、一緒に設計します。
- 勘定体系は、プライマリ元帳、セカンダリ元帳、レポート通貨に本質的にリンクしています。
世界的な事業展開のために、企業勘定科目体系構造を導入します。可能であれば、企業COAをプライマリ元帳に割り当てることをお勧めします。共通の企業勘定体系は、企業内のすべての子会社のグループレベルでの連結を容易にします。
- 詳しくは、関連ブログ「Improve Financial Insight with a Corporate Chart of Accounts」「Address Multiple Accounting Standards Easily with Oracle Cloud ERP」「Structure Your Account Hierarchies for Optimal Processing」をご覧ください。
勘定体系構成の決定
Oracle Cloud ERPでは、勘定体系構造によって勘定体系の概要が提供されます。
COA構造におけるセグメントは、企業がその活動を測定するために使用する法的ディメンション、会計ディメンション、および管理的ディメンションを表しています。
セグメントの数はユーザーが決定します。セグメントは一意である必要があります。各セグメントには、値セットと、各値セット内に存在する有効なリスト値を定義します。ラベルは、このブログで後述する特別なシステム機能に関連するセグメントを識別します。これで、勘定体系の基礎が設定されます。
上の図1のガイダンスに従えば、システム・ユーザーは恩恵を受けることができます。財務諸表におけるデータの正確性と信頼性を確保するために、関連する値を使用して意味のあるセグメント名を使用します。
COAを複雑にしすぎると、財務担当者が使いづらくなるので注意してください。COA構造の主要なセグメントとそれを表示する順序を決めます。COA構造で最も一般的なセグメントの順序は、会社、コストセンター、および勘定科目から始まります。さらに、事業部門別、製品ライン別、会社間取引別、事業所別など、ビジネス分析のニーズに対応するために、3~4個のセグメントを定義することが多いでしょう。
次のことを確認して下さい:
- 企業COAを世界的に標準化し、財務担当者が理解できるようにすることで、会計の正確性を高めます。
- COAセグメントの数と長さを最小限にすることで、トランザクションの入力を簡素化し、UIでの視認性を高めることができます。理想的には、最大8つのCOAセグメントを定義し、各セグメント長が8桁を超えないようにします。
- COA構造設定定義とUIでの表示で、セグメントの順序を合わせます。これにより、混乱を最小限に抑えることができます。
- 勘定体系構成でこのようなニーズに対応できるように、要約レベルの管理レポートディメンションを識別します。例えば、勘定科目、事業部門、販売チャネル、製品ラインなどの勘定科目階層を構成します。このようなセグメントは、企業の実態を見抜けるようなレポートをサポートします。
- 将来的な報告ニーズに対応するため、勘定科目に1つまたは2つの予備セグメントを定義します。データ入力の必要性を軽減するために、各セグメントにデフォルト値を設定します。
- 顧客やプロジェクトなど、一時的かつ変化の激しい業務管理用セグメントを使用しないでください。このようなセグメントを使用すると、大量のデータを処理することになり、パフォーマンスに問題が生じる可能性があるため、実行に影響が出てきます。
- 勘定科目組み合わせを連結する際の区切り値は、セグメント値と競合しないように慎重に選んでください。例えば、セグメント値にピリオド(終止符)が頻繁に含まれる場合は、セグメントの区切り文字としてピリオドを使用しないでください。
勘定科目別名でデータ入力のミスを最小限に抑える
一般会計の会計設定を定義する場合、勘定体系構造と構造インスタンスは基本的な構成要素です。勘定体系の設計に関連するすべての会計要件および分析要件を慎重に検討する必要があります。
勘定体系構造インスタンスを定義します。下の図2に、簡略化した図を示します。勘定体系構造は、アカウンティング・キー・フレックスフィールドとも呼ばれます。
一般会計の勘定科目組み合わせを表すために、認識可能な名前として勘定科目別名を定義します。トランザクションを入力する際に、勘定科目別名を使用することで、データ入力のエラーを最小限に抑え、生産性を向上させることができます。
- 警告: 勘定体系構造および構造インスタンスは一度使用すると変更することはできません。セグメント数、順序、各セグメントラベル、長さ、タイプ、および値セットの割当は変更することはできません。これらの構成要素は、各元帳内の勘定科目データの基礎を形成します。
COAセグメントにラベルを割り当て、機能を自動化してレポートを改善する
貸借一致セグメント(BSV)ラベル:
- 会計仕訳はBSVごとにシステムが自動的に貸借一致させます。
- プライマリBSV:必須の設定であり、通常は実在の第一法的エンティティを表します。貸借対照表や損益計算書など、法的エンティティ別にレポートを作成することが多くあります。
- 第2、第3のBSV:通常は管理エンティティを表すオプションのラベルです。
- ヒント:会社間貸借一致設定を定義することで、貸借不一致仕訳のリスクを最小限に抑えます。
- 警告:3つのBSVのいずれにおいても、すでに勘定科目または会社間セグメントとして認定されているセグメントを使用しないでください。
会社間セグメントラベル:
- 会社間セグメントラベルはオプションです。
- しかし、元帳に複数の法的エンティティを定義している場合は、通常、COA構造に会社間セグメントを含めることになります。
- プライマリBSVの相手方を表します。
- 企業間ルール「支払期日: 自」、「支払期日: 至」を設定し、会社間会計仕訳を生成します。「支払期日: 自」、「支払期日: 至」は、プライマリBSVと会社間セグメント内の他の法的エンティティとの間のルールを表します。
- 会社間ルールにより、第2および第3のBSVの各個別の値に対して追加の貸借一致明細が作成されます。第2および第3の貸借一致セグメントには相手方が存在しません。そのため、ここでは「支払期日: 自、支払期日: 至」貸借一致の設定は必要ありません。
- 会社間ルールを設定すると、会社間会計入力が自動化されます。
- ヒント:会社間セグメントには、プライマリ貸借一致セグメントと共有するのではなく、別の値セットを使用します。そうすることで、2つのセグメントそれぞれにセグメント値セキュリティ(SVS)ルールを個別に定義することができます。さらに、プライマリ貸借一致セグメント値セットに設定されたデータアクセスは保護されます。
勘定科目セグメントラベル:
- この必須セグメントラベルは、1つのセグメントのみに割り当てます。このラベルが設定されたセグメントには、他のラベルが設定できないようにシステムが制御します。
- 勘定科目セグメント番号は、会計活動が純粋な会計条件に含まれる内容を識別するCOA構造の一部です。
- 勘定科目は、財務諸表と一致している必要があります。損益計算書と貸借対照表のレポートを構成します。
- 勘定科目セグメント値を識別して、トランザクションを資産、負債、資本、収益または費用として分類します。
- 勘定科目タイプ(資産、負債、資本、収益または費用)を各勘定科目セグメント値に割り当てます。
- 勘定科目タイプが収益および経費の残高が、会計年度開始時の留保利益(資本)勘定科目に転送されます。
- 元帳内で複数のBSVを定義した場合、Cloud GLは各貸借一致セグメント値に従って留保利益勘定に値を登録します。
- ヒント:資産と負債、資本、収益、経費の論理的な順序で勘定科目値のコード値を計画すると、ユーザー・エクスペリエンスが向上します。ただし、一部の規制が非常に規定されている国ででは実行できない場合があります。
コストセンターセグメントラベル:
- セグメントラベルは、通常、部門、事業部、または事業ラインを表します。
- これはオプションのセグメントラベルですが、資産、経費、承認プロセスで主要な機能が動作するためには、コストセンターセグメントラベルが必要です。
例
- 従業員割り当ての経費報告書のデフォルトのコストセンターを取得します。
- コストセンター・マネージャーを識別します。
- 承認のために経費精算書を正しいマネージャに廻附します。
再評価損益トラッキングセグメントラベル:
- ラベルは、1つまたは複数のセグメントに割り当てることができます。
- トランザクションの会計日と再評価日の間の外貨換算レート変更の再評価損益を追跡します。
- 再評価損益について最大5つの異なるセグメントを追跡します。プライマリBSVに1つ割り当て済みのため、残り4つのセグメントが利用可能です。
- ヒント: 再評価追跡セグメントラベルを勘定科目または会社間セグメントに割り当てないでください。これは、勘定科目残高が再評価の基準を形成する点、また、前述のように会社間セグメントは特定の目的を持つためです。
カスタムラベル:
- Oracle Transactional Business Intelligence (OTBI)は、カスタムセグメントラベルを参照できます。たとえば、特定の勘定科目を分類するために勘定科目区分のカスタムラベルを定義します。OTBIレポートを定義し、レポートのカスタムラベルを含めます。
EssbaseとEPM Cloudの統合による影響の検討
- GL Essbaseキューブで使用されるディメンションについて、COAセグメントで使用されるカレンダー名と値を区別します。また、Essbaseキューブの競合を防ぐために、Cloud EPMとのインテグレーションにも適用されます。
例
COA Segment2は2文字で、値は20、21、22、23です。システム次元レベルでは、2-20、2-21、2-22などのように追跡されます。会計カレンダーは、2-20期、2-21期、2-22期となる場合があります。そのため、Essbaseキューブで競合が発生します。
代わりにカレンダーを2020年、2021年など4桁の年号でデザインすることができます。その場合、他の4桁のCOAセグメントと競合しないことを確認する必要があります。
- COAを設計する場合は、EPMを考慮します。
EPM ディメンジョンのメンバーは一意である必要があります。
一意のCOAセグメント値を定義します
または
COA セグメント値と 一意になるEPM ディメンジョンメンバーの間のマッピングを定義します。
例
Oracle Cloud ERPに2つのCOAセグメントが存在し、その両方にセグメント値「1000」または「1000」が含まれている場合、Cloud EPMでエラーが発生します。
次のようにCOAセグメントの値を変更できない場合、ERPとEPMの間でディメンションマッピングを定義します:
値1000のERP COAセグメント「Company」は、EPMディメンションの値C1000にマッピングされます。
値1000のERP COAセグメント「Product」は、EPMディメンションの値P1000にマッピングされます。
Oracle Cloud ERPにデータを戻すようなOracle Cloud EPMアプリケーションを実装する場合、リバースマッピングも検討する必要があります。
まとめ
世界的なビジネスで合意された企業勘定体系を計画しましょう。分かりやすくして、正確性を高め、統合をスピードアップします。財務諸表に合わせて、勘定体系を計画するだけでなく、洞察に満ちた経営報告をサポートします。

Helle Hennings /シニアプロダクト戦略ディレクター
E-Business Suiteのリリース8時代から、28年以上にわたってOracle ERP製品に携わってきました。Oracle Product Strategyに入社する前は、Oracle ERP Applicationsのコンサルティング・サービスに積極的に携わり、グローバルに展開する顧客に対する実装、アップグレード、カスタマイズ開発などを担当していました。コンサルティングを行う以前は、会計と財務を専攻していました。ACEチームのメンバーとして、戦略的な顧客の変革の旅に携わっています。
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