JPOUG(日本オラクルユーザーグループ) Tech Talk Night #9にて、「Select AIでSQL研修の演習問題に挑む」という発表がありました。

Select AIでSQL研修の演習問題は解けたのか?

私たちは、SQLを勉強する必要は無くなるのか?

ORACLE MASTER ブログでは、発表者である株式会社第一コンピュータリソース 西尾孝之氏に紙上インタビューを行いました。

 

Mr. Nishio

            株式会社第一コンピュータリソース
                西尾孝之氏

                学生時代にOracleに出会ってから22年、Oracle一筋で業務に携わる。

                Oracle ACE

                 取得資格
                      ORACLE MASTER Platinum DBA 2019 (一番乗り合格)
                      Oracle Cloud Infrastructure Architect Professional 2022

 

 

まず、Select AIについて簡単に教えてください。

一番簡単にデータベースからデータを取得する方法です。

データベースに対して普段使っている言葉(自然言語)で問い合わせを行うと結果を得ることができます。例えば「2024年の関東地区での製品別売上金額を教えて?」と問い合わせを行うと結果を得ることができます。


出典:JPOUG 発表資料

 

今回、Select AIでSQL研修の演習問題に挑んでみて、どうでしたか?予想外の結果はありましたか? 

SQL研修の演習問題は使用するテーブル数が多くなく、シンプルなテーブル構成のため結果が出やすかったと感じます。まだ発展中の技術のため、どんなシステム環境でも有効というよりは、結果が出やすいテーブル構成というものがあると思います。

SQL研修には、SELECT文・DML文・DDL文の演習が含まれていますが、Select AIはその名の通りSELECT文を行うための機能のため、SELECTの演習に絞ったうえでの数値になります。

予想外の結果として2つあげます。

1つは「社員の名前と入社日を表示して。給料も」といった、ついでにこの列も表示してほしいという問い合わせも正しく受け取ってくれました。結果は想定どおり3つの列が表示されました。並べ替えや集計に関する言葉も柔軟に対応してくれます。

もう1つは従業員テーブルに対するものとして「社長はだれ?」と問い合わせてみました。

その結果、従業員テーブルの上司列に値がない(NULL)社員を表示してくれました。面白い解釈をしてきたなと思います。

 

問い合わせたいことを自然言語で入力する際に、気を付けることがあれば教えてください。

表名や列名が一般的な英語の場合、ある程度意味をくみ取ってくれますが、意味を持たない表名のこともあると思います。例えばマスターテーブルは「M0001」から連番といった状況です。その場合、Select AIがテーブルの意味を理解することができませんので、あらかじめ情報を付与しておく必要があります。例えばSQLのコメント機能でM0001テーブルは「売上表」とコメントをつけます。

 

Select AIはどのような場面で使えるとお考えですか?

1つはデータリテラシーが高くない人でも簡単にデータを抽出できるということです。

SQLもテーブル構造も知っている必要はありません。

BIのように色々な観点で調べてみて、まず傾向のあたりをつけるといった場面で使えると感じました。傾向がみえたら、SQLで詳しい分析をするというやり方もいいですね。

もう1つはアプリケーション開発者がSQLのサンプルを作ることにも使えると思います。SQLの大枠をSelect AIに作成してもらい、修正をしてからアプリケーションに組み込むという使い方も考えられます

 

結果の出にくいテーブル構成もある、ということでしたが、Select AIで自然言語からSQLを生成できるとなると、SQLを勉強する必要はなくなるのでしょうか?

SQLの学習は必要と考えます。

AI全般に言えることですが、いまのところAIでは100%確実な答えは返ってこないと思っています。AIで業務の効率化はできますが、最終的に100%確実なデータを表示する必要がある業務アプリケーションではやはりSQL文を記述していく必要があると思います。

また、例えば翻訳に関するWebサービスは私たちの業務に必要不可欠になっていますが翻訳された結果が正しいか誤りかを判断できる知識がないと間違ったまま使用してしまうことも考えられます。それと同じで、やはり知識は必要ではないでしょうか。

 

Select AIはSQLの学習には活用できますか?

大いに活用できます。いつでも気軽に質問できるSQL講師のように使えるかもしれません。SQLの学習をしていて、悩んだときに聞いてみましょう!

 

少し話題を変えます。西尾様はORACLE MASTER Platinum DBA 2019を保有されていますが、Autonomous Databaseをはじめとして管理の自律化が進む中、データベース管理者を志す人は、データベース管理について勉強する必要はあるのでしょうか?

学習の必要はあります。管理の自律化が進んでいるのは間違いありませんが、自律化できているのはシンプルな作業の領域とも感じています。これからは、データベース管理者として必要となるスキルがより高度な領域になっていくと考えています。今までよりもPlatinum試験のスキルが該当する業務の割合が増えてくると考えております。

 

西尾様、大変興味深いコメントを有難うございました。次回、データベース管理スキルの習得について、もう少し掘り下げてお話を伺いたいと思っています。

 

参考リンク
JPOUG Tech Talk Night #9 開催報告
西尾孝之氏 コラム【Oracle生成AIでアプリ開発】チャットでSQL文作成