※ 本記事は、Gourav SarkarとMark Rakhmilevichによる"Unveiling Oracle Blockchain Platform Digital Assets Edition: Accelerate Innovation in Finance and Other Industries"を翻訳したものです。
デジタル経済は大きな変化の最中にあります。トークン化(tokenization)により、中央銀行デジタル通貨(CBDC)や預金トークン、ステーブルコイン、株や債券などのトークン化証券、不動産や土地や蒐集品や貴金属などの現実世界資産(Real-World Asset、RWA)などを含むデジタルアセットが、規制下の金融領域で興隆しており、また、トークン化によって生産性と様々なエコシステム間の協働可能性の向上、革新的なサービスの実現が起こっています。
これまで、こうした試みの多くは、サイロ化された台帳に頼っており、そのことがデジタルアセットのポータビリティを制約してきました。最近、国際決済銀行(Bank for International Settlement、BIS)および国際的な決済システムの主導的なプレイヤーたちは、「Finternet」と統合台帳(Unified Ledger)についての議論を始めています。これは、中央銀行貨幣とトークン化預金、そしてトークン化資産をプラグラマブルなプラットフォーム上で結びつけることで、トークン化によるメリットを最大限に享受することができる新しいタイプの金融マーケットインフラです。
OracleはOracle Blockchain Platform Digital Assets Edition(OBP DA)をリリースしました。これは、デジタルアセットアプリケーションと統合台帳を開発し、そして稼働させるための、パワフルなエンタープライズ・グレードのソリューションです。企業はこのプラットフォームを用いることで、包括的な銀行グレードの分散台帳インフラと備え付けのスマートコントラクト、API、強力なインデックス用データベース機能、Webアプリケーション、そして分析ツールにより、トークン化の生産性を向上し、革新的なデジタルアセット・ソリューションの市場への投入を加速させることができます。
OBP DAは業界をリードする製品であるOracle Blockchain Platform(OBP)の拡張版です。OBPは、ブロックチェーンプラットフォームとしてJuniper Research Competitor Leaderboardでリーダーとして位置づけられ、また、Government Blockchain Association(GBA)によるBlockchain Maturity Model (BMM) Assessmentの評価に合格しています。OBPはOracle Cloud Infrastructure(OCI)上にマネージド・サービスとして利用可能な他、オンプレミスや他クラウド上でもKubernetes/コンテナベースのノードとしてデプロイ可能です。
デジタルアセット領域は急速に発展しています。多くの組織では、安全でスケーラブルなブロックチェーンベースの金融ソリューションの開発にかかる高いコスト、そしてその複雑さ、要求される知識の多さに困難を抱えています。OBP DAはそうした課題を以下のように解決しています:
1. 中央銀行デジタル通貨(CBDC)
ホールセールCBDCは銀行間送金、決済、そして金融政策の実行をモダナイズするうえで重要な役割を果たします。OBP DAによって金融機関や中央銀行は以下のことが実現できます:
2. 金融機関のトークン化
様々な資産クラスでのより高速、より安全、そしてよりコスト効率のよいトランザクションを実現することで、トークン化は銀行業と金融市場を変化させています:
3. 現実世界資産(Real-World Asset、RWA)とネイティブデジタル資産
トークン化された現実世界資産(RWA)はブロックチェーン上に表現された、物理的な資産のデジタルツインです。一方、ネイティブデジタル資産は、ロイヤリティポイントや音楽、知的財産記録などの電子的な形態でのみ存在する資産のトークン化された表現です。いずれについても、ブロックチェーン上でトークン化することにより、取引や更新などの検証可能な来歴と監査性が実現され、以下の例のようなメリットがあります:
Oracle Blockchain Platform Digital Assets Edition(OBP DA)はデジタル資産アプリケーションのエンドツーエンドの開発とデプロイをサポートするようにつくられています。OBP DAプラットフォームは、Oracle Blockchain PlatformとBlockchain App Builderとに、いくつかの拡張と、ドメイン独特のパッケージ化された、またはフレームワークベースのスマートコントラクトと、パッケージ化されたAPIと、インデックス用データベースビューと、サンプルのWebアプリと、サンプルの分析ダッシュボードとレポートを付属させたものです。
OCIでDeveloper ServicesセクションのOracle Blockchain Platformページに遷移し、Digital Assets Editionのインスタンスを作成すると、OBP DAコンソールのなかのDigital AssetsタブからサンプルChaincodeをインストールし、以下に説明しているリファレンスアーキテクチャ図のようにデプロイできるアーティファクトをダウンロードすることができます。
1. Oracle Blockchain Platform: 分散台帳とスマートコントラクト基盤となる、分権化されたパーミッションド・ブロックチェーン・ネットワーク
2. 拡張されたBlockchain App Builder: 用途に合わせた宣言的な仕様テンプレートからスマートコントラクトと関連するアーティファクトを自動生成し、テストの自動化、デプロイの管理機能までを備え、デジタルアセットアプリケーションを作成、そして最適化できるローコードツール
3. デジタルアセットアプリケーションとフレームワークのためのパッケージされたスマートコントラクト:ホールセールCBDC、トークン化債券、加えてジェネリックなFungibleおよびNon-fungible、複合トークンフレームワークのためのアプリケーション・ドメイン・スペシフィックなスマートコントラクトChaincodeを提供
4. 豊富なAPIサポート機能:エンタープライズのデジタルアセットのインテグレーションを迅速化、合理化し、複雑さを縮小し、相互運用性と自動化を促進
5. アプリケーションスペシフィックなインデックス用DBビュー:リアルタイムあるいは決済後の分析や、オフチェーンでの非ブロックチェーンデータとのデータインテグレーションに利用可能な、台帳上のトランザクションから同期されるインデックス用データベース
6. CBDCユースケースのためのサンプルWeb UIアプリケーション: ホールセールCBDCを管理し、ライフサイクルオペレーションを実行するためのロールベースのUXフローを備え、デジタル通貨アプリの即席な検証や、OCI Visual BuilderやIntegration Cloud Serviceを用いてテーラリングと調整も迅速に行える、すぐに使ってみることのできるサンプルWebアプリ
7. CBDCユースケース用のサンプル分析パッケージ: CBDCライフサイクルオペレーション、銀行間送金、資金フローについてのリアルタイムのインサイトを提示し、透明性と、中央銀行および金融機関のよりよい意思決定を可能に。Oracle Analyticsを用いて、デジタル通貨の迅速な実験やカスタマイズ、導入へと導く。
8. 台帳またぎ(Cross-Ledger)の相互運用性と統合台帳(Unified Ledger)アーキテクチャ: Oracle Blockchain PlatformによるX/Open XA標準へのサポートと2フェーズコミット(2PC)、そしてQuant NetworkのOverledgerにより提供される強力なオーケストレーションにより、統合台帳アーキテクチャを実装するために必要となる台帳またぎのオペレーションやワークフローが実現され、ブロックチェーンの分断化を乗り越え、「貨幣の単一性」を保護
これは最近、Regulated Liabilities Network(RLN)の実験フェーズのユースケースをシミュレートすることにより、実際に示されたものでもあります。OBP DAベースのネットワーク上に実装された4つの隔離されたパーティション(ふたつの銀行預金パーティション、ホールセールCBDC、一次債券マーケットプレース)にまたがるトークン化された債券の決済を、DvPモデルで実現しました。
このシナリオでは、Bank Aが一次債券マーケットプレースでトークン化債券を顧客(Alice)のために発行し、Bank Bの顧客(Bob)がその債券をいくらかの量購入し、代金をBank B預金トークンで支払います。この際のアトミックなDvPトランザクションでは、一次債券マーケットプレース上で債券の所有権がBobに移転され、一方でAliceはBank A預金トークンでの支払いを受け取ります(その前にはBank Bが自身の預金トークンを除却し、ホールセールCBDC台帳を通じて対応する額をBank Aに送金し、それを受けてBank Aが自身の預金トークンとして同額を発行したうえでAliceに送ることができています)。
このシナリオは債券発行とDvP決済を用いたその購買の例を示しており、そして、トークン化されたアセット、トークン化された預金、そしてホールセールCBDCの同期された移転により実現される、高度なプログラマビリティと自動化の恩恵を銀行がどのように享受できるかを示しています。
更に、OverledgerとOBP DAとの連携により、預金トークンやステーブルコインのプラグラマブルな送金サービスも実現できます。プログラマブル送金により、金融オペレーションの自動化が可能になり、法定通貨とトークン台帳との間で様々な条件、トリガーでの自動決済実行も実現できるでしょう。たとえば、この連携は、単純ロックや2者ロック、3者ロック(例:品物の到着と同時に支払い)をサポートしており、銀行やアセットマネージャー、その他の機関が利用することで革新的な金融サービスを顧客に提供できます。
Quant NetworkのCEOで創業者のGilbert Verdianは「QuantはOracle Blockchain Platform Digital Assets Editionのローンチを喜んでいます。わたしたちはOracleとのパートナリングによって、統合台帳というコンセプトを実現するということだけでなく、Regulated Liability Network(RLN)のような規制下のネットワークとアセットとのシームレスなインターオペラビリティをOracleのプラットフォームにより実装するということも実現してきました。」と語りました。「デジタルアセットの既存のネットワークと金融機関へのシームレスな接続を実現することで、ブロックチェーンの相互運用性の推進者として、その進化を次の段階へと進めることに貢献できることを楽しみにしています。そして、資金とアセットを複数の価値のネットワークの間で安全につなぎ、それらの移動をオーケストレートし、プログラミングするうえでの課題を解決するという点で、顧客となる企業にとって重要なものとなるでしょう。」
OBP DAはブロックチェーン技術とデジタルアセット管理の進化における重要なマイルストーンです。拡張されたBlockchain App Builderベースの自動化されたスマートコントラクト開発、パッケージされたChaincode、先進的なトークン化フレームワーク、シームレスなAPI統合、そしてサンプルUIと分析ダッシュボードにより、このプラットフォームは企業と金融機関のイノベーション、オペレーションの合理化、デジタル経済での先進的な一歩を後押しします。
デジタルアセットが進化するにつれ、金融業界、そしてクロスボーダー送金、資本や他の金融サービスに依拠した産業のかたちを変えていくでしょう。長く存在していた課題を解決し、ビジネスに新しい機会をもたらすことで。以下のようなメリットがあります:
Quant Networkとのパートナリングにより、Oracleはブロックチェーン相互運用性に新たな波をもたらします。デジタルアセットはブロックチェーンネットワークとトラディショナルな金融システムの両方にシームレスに連携することができるのです。
Oracle Blockchain Platform Digital Assets Editionは、単なるテクノロジー・ソリューションに留まりません。それはデジタルアセットによる変革の基盤であり、企業が新たな機会を獲得し、効率を向上し、ますますデジタル化される世界において自身のビジネスモデルを再定義することを可能にするものなのです。
より詳しい情報については、Oracle Blockchain Platform Digital Assets Editionのドキュメントを御覧ください。