Oracle Cloud Infrastructure (以下OCI) では、現在オンプレミス環境で広くご採用いただいている実績No.1のWebLogic Serverで構築・運用されているシステムのクラウド移行を促進し、コスト最適化を実現するための3種類のクラウドサービスをOCIのマーケット・プレイスから提供しています。
- WebLogic Server for OCI UCM Image
- WebLogic Server for OCI
- WebLogic Server for OKE

これらのWebLogicサービスは、既存のWebLogic環境や新規で構築されるWebLogicの環境をクラウド化するお客様の様々なクラウド移行へのニーズに合わせてラインナップされています。本記事では、これら3種類のWebLogicサービスの特長をお伝えします。
WebLogic Server for OCI UCM Image
WebLogic Server for OCI UCM Image はOracle LinuxベースのOS上でWebLogic Serverをお客様の任意の構成で構成いただくための、ComputeイメージとWebLogic Serverのバイナリのみを提供します。このイメージを利用して、WebLogic Serverのバイナリが格納されたComputeをOCIマーケットプレイスや、通常のComputeインスタンス作成のコンソールから必要な数だけプロビジョニングし、オンプレミス環境と同様にWebLogic Serverのセットアップやドメイン作成などを手動で行います。

WebLogic Serverのバイナリは、インストール後のディレクトリをZIP化した状態で提供されるため、特定のディレクトリ化にunzipするだけでWebLogicのセットアップを開始することが可能で、セットアップの自動化も行いやすくなっています。

WebLogic Server for OCI UCM Imageのイメージで作成されたComputeインスタンスは起動している時間のみOCPUの量に応じてComputeなどのIaaS料金に追加してWebLogic Serverの費用が課金されますので、稼働時間が限られる検証環境やDR環境などにもお手軽に利用いただけます。利用可能なWebLogic Serverのエディションは WebLogic Server Enterprise Edition と WebLogic Suite の2種類です。
WebLogic Server for UCM Image は以下のようなお客様に最適です。
- Oracleライセンスではなく、Universal Creditを利用してOracleソフトウェアのコストを抑えたいお客様
- オンプレミス環境の複雑な構成をそっくりそのまま移行したいお客様
WebLogic Server for OCI
WebLogic Server for OCIはOracle LinuxベースのOS上で、WebLogic Serverのベストプラクティス構成に従った、シンプルな構成でWebLogic環境を容易に構築可能なWebLogicサービスです。WebLogic Server for OCI UCM Imageとは異なり、OCIマーケットプレイスのコンソールから、作成するネットワークやWebLogicクラスタのサイズ、ロードバランサなどの基本構成や、必要に応じてOCIの監視・ログサービスとの連携などの情報を入力するだけで、必要になるネットワークやComputeなどのプロビジョニングから、WebLogic Serverのドメイン構成まで、全ての構成が自動でプロビジョニングされます。

数分から十数分程度の時間で即座にWebLogic Serverの環境が利用可能になりますので、開発環境用にすぐ必要、構築のリードタイムを短縮したい、などの用途にもオススメです。
WebLogic Server for OCI では、1回のプロビジョニングでComputeインスタンスあたりWebLogic管理対象サーバを1つ配置した1台~複数台のComputeインスタンスが構成され、それらの管理対象サーバで1つのWebLogicクラスタを構成したWebLogicドメインが構成されます(※)。

※WebLogic Server for OCI Standard Editionを利用する場合は負荷分散構成のみ利用可能です。クラスタリングの高可用性機能(セッション・レプリケーションなど)は利用できません。
この構成を前提として、ノード数を変更するだけで容易にWebLogicクラスタをスケール・アウト/インしたり、OCIの監視サービスと連携した自動スケールなども実現しています。
WebLogic Server for OCIの課金モデルは、WebLogic Serverの費用をUniversal Creditで課金する従量課金モデルと、既に所有しているWebLogic Serverライセンスを持ち込んで利用するBYOLモデルが提供されています。利用可能なWebLogic Serverのエディションは、従量課金モデルはWebLogic Server Enterprise Edition と WebLogic Suite の2種類、BYOLモデルはWebLogic Server Standard Editionを含む全てのエディションです。
Universal Creditモデルを適用することで同様に検証やDR環境を安価に実現できるのはもちろんのこと、短期的にすぐに利用したい開発環境の用途としても活用できます。また、常時稼働部分をBYOLで利用し、利用時期によって伸縮のあるスケール変更される部分のみをUniversal Creditで利用するなど、既存の所有ライセンスを有効活用できるプロビジョニングにも対応しています。例えば以下のように初期費用無しで利用を開始したり、所有ライセンスを持ち込んでWebLogic用のクラウド費用をさらに抑えたり、と柔軟にランニング・コストを抑えることができます。

WebLogic Server for OCIは以下のようなお客様に最適です。
- オンプレミス環境と同様にOS環境でのWebLogic Serverを移行したいお客様
- 所有ライセンスとUniversal Creditの有効活用で柔軟なコスト最適化を目指すお客様
- 環境構築のリードタイムを短縮し手早くWebLogic環境を用意したいお客様
WebLogic Server for OKE
WebLogic Server for OKEはKubernetes環境の上にWebLogic Serverのコンテナを稼働させることでWebLogic環境の運用の自動化と、集約管理を実現するWebLogicサービスです。WebLogic Kubernetes Operatorソリューションを適用することでWebLogic環境のIaC (Infrastructure as a Code)を実現し、ビルトインされたJenkinsコンソールを利用してコンテナ・イメージの作成からWebLogicドメインの構成、アプリケーションのデプロイに渡る一連のオペレーションをCI/CD化して提供します。OKE上に構成されるWebLogicのコンテナは、Kubernetesの機構と連動して、自動復旧や自動スケールなどの自動運用が行われます。

WebLogic Server for OKEは、WebLogic Kubernetes OperatorとJenkinsによる管理環境に必要なOKE環境のプロビジョニングをマーケットプレイスから自動プロビジョニングします。プロビジョニングされたJenkins環境には、OKE上へのWebLogicドメインのデプロイや、デプロイするためのWebLogicのコンテナイメージの作成などのJenkinsパイプラインがプリセットされており、パラメータの入力のみで必要なタスクを行えます。

WebLogic Server for OKEの課金モデルには、Universal Creditによる従量課金モデルと所有ライセンスを持ち込むBYOLモデルをクラスタ単位で選択可能です。利用可能なWebLogic Serverのエディションは、双方の課金モデル共にWebLogic Server Enterprise EditionとWebLogic Suiteの2つのエディションです。
WebLogic Server for OKEはWebLogic Server for OCIのようなユースケースに加え、多面化される開発環境や独自アプリケーションによるSaaS提供など、多数の環境を効率良く運用するようなケースにも適しています。
WebLogic Server for OKEは以下のようなお客様に最適です。
- オンプレミス環境のアプリケーション資産を活用し、コンテナ環境による自動運用で運用のさらなる効率化にチャレンジしたいお客様
- 多数のWebLogic環境を集約し、運用の集約とリソース利用の効率化を実現したいお客様。
- 環境構築のリードタイムをさらに短縮し、WebLogic環境の提供をより柔軟かつ迅速に行いたいお客様
まとめ
オンプレミスでWebLogicサーバをご利用のお客様の中には、お客様ごとの独自性の高い構成と運用をそのまま移行してランニング・コストだけを低減させたいというお客様から、クラウド移行を契機として運用モデルの改善や効率化に取り組みたいというお客様まで、様々なニーズを抱えたお客様がいらっしゃいます。お客様それぞれのニーズに合わせ、これらの3つのWebLogicサービスを使い分けることで、既存のアプリケーション資産を生かしつつ効果的なITシステムのコスト最適化をご検討いただければ幸いです。

オラクルエンジニア通信では、今回ご紹介したWebLogic Server for OCI と WebLogic Server for OKEのご紹介資料も公開しております。ユースケースや価格構成などをご紹介しておりますので、そちらも是非ご一読ください。
参考情報
WebLogic Server for OCI および WebLogic Server for OCI UCM Image マニュアル [日本語]/[英語]
WebLogic Server for OKE マニュアル [日本語]/[英語]