この記事はGlen HawkinsによるExploring the Maximum Availability Architecture Gold MAA Tier with Oracle Database 23aiを日本語に翻訳したものです。
2024年5月17日
オラクルは、2024年5月2日にOracle Cloud上でOracle Database 23aiの提供を開始すると発表しました。 このリリースには、300以上の機能が含まれており、 AIと組み合わされた このリリースでは、300以上の機能が含まれており、ミッションクリティカルなデータのサポートにおいて大きな飛躍を遂げ、AIと連携した機能、開発者やDBA、そしてデータに関わるすべての人々に向けた数々の機能を備えたOracle Databaseの新しい時代を迎えます。多くの方がすでにクラウドでOracle Database 23aiを試して、これらの機能を体験していることを願っています。
AIベクトル検索などの素晴らしいAI機能に興奮し、その特定の製品分野に焦点を当てて新バージョンを検討し始めることを知っています。 このブログでは、少し方向を変えて、23aiの重要な機能の中でも特に注目すべき点に焦点を当て、それらが当社のMaximum Availability Architecture (MAA) Gold Tierを利用する多くのお客様にどのような影響を与えるかについてお話しします。 MAA Gold Tier は、予期しない停止に対して、データ損失ゼロの保護(SYNCオプションなど)と極めて短いダウンタイム(Application Continuityがダウンタイムをブラウンアウトとしてマスクする場合、障害の種類によっては数秒から1分未満)を提供します。 また、シームレスなローリングパッチおよびアップグレードを実現し、構成応じてダウンタイムを排除または最小限に抑えます。

これは理想的には24時間365日稼働し、サービス提供しなければならないミッション・クリティカルなアプリケーションについて話すときに、ほとんどの人が求めるMAAの階層(簡略化された図と下部に障害マトリックスを反映)です。 ダウンタイムは、可用性が失われた時点から、その可用性が回復するまでの目標復旧時間(RTO)に対して測定されます。 潜在的なデータ損失は、影響の発生した時点からデータの最後の有効なバックアップまたはレプリカまで遡って目標復旧時点(RPO)に対して測定されます。
災害復旧について考え始めると、考えられる原因はほぼ無限に思えます。 本番データ・センターに影響を与える地域での停電、その他の自然災害のような単純なものから、サイバー攻撃のような捉えどころのないものまでさまざまです。 データ・センターをモンスターが攻撃していたとしても、ゴールは同じです。何が起こってもデータを保護し、アプリケーションを稼働させ続けることです。 Oracle Databaseは、ミッション・クリティカルなアプリケーションを確実に処理し、保護するテクノロジーに重点を置いているため、このレベルの耐障害性において常に優れています。 MAA Gold Tierは、計画されたメンテナンス作業中のダウンタイムを最小限に抑え、人為的ミスや破損を含むあらゆる種類の予期しない停止に耐えるアプリケーション・アーキテクチャを構築できるように設計されています。
Oracle Database 23aiでは、MAA Goldはどのように強化されましたか?
Oracle Database 23ai には多くの機能と拡張機能があり、その多くは増加するAIを重視したアプリケーションを含むアプリケーションのミッション・クリティカルなワークロードを強化しますが、その中でMAA Goldと特に結びつくのはどれでしょうか。その答えは、計画メンテナンスと予期しない停止中のダウンタイムの削減に重点を置くMAAにあります。まずは、MAA Goldリファレンス・アーキテクチャのコア・テクノロジーである Real Application Clusters (RAC)とActive Data Guardの計画メンテナンス機能のいくつかを見てみましょう。
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複雑な変更に対するローリング・パッチ適用: 長年、ローリング・パッチ適用は、データベースのメンテナンス関連のダウンタイムを短縮するための解決策であり、MAAの観点からは非常に重要です。しかし、残念なことに、パッチによっては、ローリング・パッチを1回の操作で適用できないものもあります。このような”複雑な変更”に対して、Oracle Database 23aiでは、通常はローリング・パッチでないパッチを段階的に適用できる2つの機能を導入しました。Oracle RAC Two Stage Rolling UpdatesとDeferred SQL Patchingにより、パッチ(ソフトウェア・アップデート)の適用とSQLによるアクティベーションをローリング・パッチ適用プロセスの異なるタイミングで行うことで、ローリング・パッチ適用を可能にします。
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DBMS_ROLLINGとTransparent Application Continuity: DBMS_ROLLINGを使うことで、バージョン変更のアップグレードとパッチセットの自動ローリング適用を可能になります。Transparent Application Continuityは、設定されたタイムアウトまでセッションをドレインさせ、ロール推移後に残りのセッションを再生することで、データベースのダウンタイムをユーザーから隠蔽します。Transparent Application ContinuityとDBMS_ROLLINGを併用することで、自動化プロセスの最後に必要な最終的なスイッチ・オーバーが隠蔽されます。この機能により、MAA Gold TierのRTOを必要とするアプリケーションは、アップグレードプロセスのサーバー再起動中に、ブラウンアウトを経験し、その結果としてのダウンタイムはアプリケーション内でパフォーマンスの一時的な低下として現れます。
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RAC Fast Pluggable Database Open: MAA Gold Tier デプロイメントにおけるマルチテナントに関連する、もう1つの重要な機能強化として、DLMの再構成と並行してオープン操作を実行することで、RACデータベースのPDBを最大2倍高速にオープンできるようになりました。この機能は、21c以降のすべてのOracle Databaseがマルチテナント・アーキテクチャを利用することを考えると、特に重要です。
素晴らしいです。ただ、予期せぬ停止に備えMAA Goldに影響を与える Oracle Database 23aiの機能についてはどうでしょうか。 Oracle Database 23ai には、高可用性、スケーラビリティ、および災害復旧を大幅に強化する多くの新機能が含まれています。 セキュリティ侵害は可用性に重大な影響を与える可能性があることを念頭において、セキュリティ・カテゴリの新機能も含まれています。 以下の主な機能と機能強化は、データやアプリケーションに影響を与えるスケーラビリティの問題に関連するパフォーマンス問題を含む、多くの予期しないダウンタイムのシナリオに取り組んでいます。
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Oracle Data Guardロール推移の高速化: Oracle Data Guard 23ai は、ストールを防止するためのプリエンプティブ・アクションの追加など、さまざまなロール推移の最適化により、よりRTOを短縮します。内部のテストでは、最大パフォーマンス・モードでファスト・スタート・フェイルオーバー(MAA Gold Tierで必須なRTO要件)を使用した場合、19cと比較して約3.5倍ロール推移が高速化されました。

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ハイブリッドDR構成のData Guard Redo復号化: Oracle Data Guardでは、クラウド・データベースが透過的データ暗号化(TDE)で暗号化され、オンプレミス・データベースが暗号化されていないハイブリッド・クラウドでの災害復旧構成において、REDO操作を復号化する機能を提供するようになりました。 この機能により、MAA GoldのRTOとRPOの目標を満たすのに十分なオンプレミス・データセンターを持たない場合、オンプレミス・データベースを暗号化する要件に関してより柔軟性が高まります。オンプレミス環境とクラウド環境の両方を暗号化することは、セキュリティ上の理由から強く推奨されることに留意すべきです。しかし、環境とリソースによっては、それが常に選択肢となるわけではありません。そのため、この機能は、DR構成を迅速に導入しようとしており、クラウドの暗号化要件に関する課題がある場合に、要件を緩和することを目的としています。
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PDBスタンバイのリアルタイム・クエリー: Oracle Database 21cでは、Oracle Data Guard per Pluggable Database (DGPDB)が導入され、DR構成が拡張され、PDBまたはCDB(デフォルト)レベルの粒度で有効にできるようになりました。これは、1つのPDBを2つのプライマリCDB間で独立してフェイルオーバーできます。この柔軟性により、Data Guardの導入方法の自由度が高まった一方で、Active Data Guard機能の多くを含め、CDBレベルのData Guard構成で使用できる多くの機能は、当初はPDBレベルのData Guard構成では使用できませんでした。 Oracle Database 23aiでは、Active Data Guardの主要な機能であるスタンバイへのクエリーをオフロードする機能がスタンバイPDBでも利用可能になり、DGPDBを使用する際のスケーラビリティが向上しました。
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RAFTを利用したGlobally Distributed Database(旧名:シャーディング): Raftレプリケーションにより、ノードやデータセンターが停止した場合でも、数秒以内に迅速なフェイルオーバーが可能になり、データ損失がゼロになります。可用性が向上し、管理が簡素化され、リソースの利用がグローバルに最適化されるアクティブ・アクティブ・アクティブな対称型分散シャーデッド・データベース・アーキテクチャが容易になります。この同期テクノロジーは、構成に応じて、MAAソリューションにもう1つの柔軟なオプショ ンを提供します。
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Clusterwareの耐障害性: Oracle RACの基盤であり、スタンドアロン・クラスタ・ソリューションとして利用されるOracle Clusterware 23aiは、内部エラーに対する耐障害性が強化され、Oracle MAA Gold(およびSilver) tierのデプロイメントに、よりコアな可用性を提供します。 これまで致命的であったCluster Synchronization Service (CSS)の状態は、CSSを再起動可能なクライアント側デーモンと個別に障害を許容できるサーバー側デーモンに分割することで克服できるようになりました。さらに、OCRディスク・グループがマウントされていない場合に、ASM インスタンスを再起動してOCRディスク・グループを再マウントしたり、ASMインスタンスと同じ場所に配置されていない場合はASM リスナーを移動したりするなど、特定のエラー状態をプロアクティブに検出して修正します。
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Oracle RAC Fast Start Reconfiguration: Oracle RAC 23ai Fast Start Reconfigurationでは、インスタンスのクラッシュ後に再構成とインスタンスのリカバリのために作業を一時停止する代わりに、クリーンなブロックですぐに作業を開始できるため、Oracle Database 19cと比較して6倍早く作業を再開できます。この機能強化により、MAA Silver, Gold, Platinum tierのデプロイメントに大きなメリットがもたらされます。
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RDMA-based Exadata RAC Scaling: ハードウェアとソフトウェアが統合されたExadataは、Oracle DatabaseのGold(およびSilverより上のTier) MAAの導入に最適なハードウェア・プラットフォームであることは周知の事実です(詳細は、こちらのExadata MAAブログ シリーズを参照してください)。 Oracle Database 23ai では、コミット伝播のためのRDMAを使用してLMSプロセスの負荷を軽減することで、Exadata上のOracle RACパフォーマンスがさらに飛躍的に向上しました。 その結果、極端なピーク・ワークロード下でも、パフォーマンスの観点からスケーリングして可用性を維持できるアプリケーションが実現しました。
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In-Database Firewall: Oracle Database Vaultの新機能である SQL Firewallは、Oracle Databaseに直接組み込まれています。 SQL Firewallは、受信したすべてのSQL文を検査し、明示的に許可されたSQLのみが実行されるようにします。 SQL Firewall は Oracle Databaseに組み込まれているため、バイパスすることはできません。 ローカルかネットワークか、暗号化されているか平文かを問わず、すべてのSQL文が検査されます。 トップレベルのSQL、ストアドプロシージャ、および関連するデータベース・オブジェクトを検査します。 セキュリティの問題は、すぐに本格的な、そして多くは長期間のアプリケーション停止につながる可能性があるため、Maximum Security Architecture (MSA) はMAAと密接に関連しています。したがって、この機能は可用性の観点からも不可欠です。
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True Cache: True Cacheは、Oracle Databaseのためのメモリ内で一貫性のある自動管理キャッシュです。True Cacheはほぼディスクレスで、災害対策用途ではなく、パフォーマンスとスケーラビリティ用に設計されていることを除けば、Active Data Guard のリーダーファームと同様に動作します。読み取り専用の処理はTrue Cacheに直接接続することができ、スケーラビリティとパフォーマンスが大幅に向上し、ピーク時のアプリケーションの可用性が確保されます。
これらの機能は試す価値のあるOracle Database 23aiのGold TierのRTOおよびRPOレベルに関連するMAA機能のほんの一部です。MAAのGold Tierに最も合致すると思われる機能を取り上げましたが、Oracle Database 23aiのその他の多くの機能強化は、Oracle RACやActive Data GuardなどのMAA傘下のテクノロジーやGoldenGate 23aiなどの密接に関連するテクノロジーの使いやすさ、柔軟性、全体的な機能に影響を及ぼします。 なお、上記の新機能の一部は、MAAチームのカオス・エンジニアリング手法による厳密な検証とテストが継続中であり、多数の計画的なメンテナンスおよび停止イベントと条件に基づいてMAA Tierへの適合性を判断しています。このような検証は決して終わることはありません。現代社会が技術的進歩(AIはその最たるものです)を続ける中、MAAチームは常にMAAアーキテクチャを進化させるべく努力しています。
近い将来、23aiの機能のいくつかをさらに深く掘り下げる予定ですので、Oracle Database 23ai MAAガイドラインにご期待ください。 それまで、Maximum Availability ArchitectureとOracle Database 23aiの詳細については、以下のリソースを参照してください。