旭松食品株式会社は1950年創業、東証スタンダード上場の日本の老舗食品会社です。 「あさひ豆腐(こうや豆腐)」「生みそずい」等の人気商品で広く知られています。近年は凍豆腐が持つ健康機能性を訴求するPR活動や、新たなターゲット層を狙った新商品の投入などを通じて国内市場への活性化を行い、また欧米などの海外への市場拡大のための 健康機能性の研究や商品の認知度向上の活動などを推進しています。
同社はMySQL HeatWaveを活用した「需給調整業務支援システム」をOracle Cloud Infrastructure(OCI)上に構築し、さらに 利用部門拡大を見越して分析処理を高速化するエンジンであるHeatWaveクラスターの本格運用を開始しました。これにより、需給予測や在庫推移の分析にかかる時間も従来の1/4程度となり業務が効率化し、より精度の高い予測のためのデータ分析さらなる高度化、高速化、自動化にもつながっています。
Oracle Cloud Infrastructure:2025年6月度サービス・アップデート
食品業界におけるビジネス課題
旭松食品株式会社をはじめとする食品業界では、従来から求められてきた品質の管理に加えて、原材料価格や物流費の高騰など製造コストの上昇、環境への配慮やSDGs(持続可能な開発目標)への貢献、頻繁に改訂される多数の 法規制や国際的な食品安全基準への対応など、多岐にわたるビジネス上の課題に直面しています。
凍豆腐や即席みそ汁を製造販売する同社の主要原料である輸入大豆の価格が高止まりしている上、円安の急速な 進行もあり経営に影響を与えています。輸入原材料の調達には、多様な要因がからむ価格変動リスクや、生産地から 国内の工場まで長距離を輸送することによるリードタイムと複雑なサプライチェーンといった、国内調達にはない特有の 課題が伴います。
これらの課題に対処し、原材料調達戦略や在庫管理、生産計画を改善して、より最適化されたサプライチェーン全体を 構築する上で、高精度な需要予測が不可欠となっています。需要予測は安定的な事業運営と持続的な成長のための 経営戦略の重要な柱に位置づけられ、継続的かつ積極的な投資が求められる領域です。
需要予測のためには、過去の販売実績データの分析だけではなく、需要が変動する要因となりえる気象のデータや イベントの情報、競合他社の動向なども考慮に入れる必要があります。また需要予測の精度向上のために対象データを 収集する先は、生産部門、購買部門、マーケティング部門など複数の部門にまたがる可能性もあります。
需要予測のモデルは一度構築して利用し続けるのではなく、予測精度を定期的に検証し、予測モデルの改善やデータ収集方法の見直し、予測プロセスの改善などを継続的に行っていくことが求められます。
旭松食品における需給調整業務
実際の需給調整は、マーケットの需要と過去実績、工場の生産能力や原材料の調達状況、また食材ならではの短い消費期限や在庫状況など、さまざまな要素を掛け合わせて、新たに生産すべき品目と量を決定するための重要な業務です。
旭松食品における従来の需給調整業務では、販売実績データや生産管理データを分析用に加工する手間がかかっていたうえに、分析方法にもシステム上の制約がありました。需給調整業務を支援する仕組みがシステム化されておらず、 Excelにデータを集積し常時メンテナンスを行うなど、手作業ゆえの負荷がかかっていました。
この状況を改善するために、2021年9月にOCIを採用して需給調整業務をクラウド化し、新しい「需給調整業務支援システム」としてリリースしました。

需給調整業務支援システムでは、データベーステクノロジ社がシステム全般の運用や監視業務も支援することになって いたため、全体コストの最適化も非常に重要な要素でした。同社はデータベースの管理・運用業務を通じて、 ユーザーには見えないデータベース管理業務が将来的にエンドユーザーへの大きな負担になることを避けたいと考え、 オラクルが管理するオープンソースのデータベースMySQLのクラウド・サービスであるMySQL HeatWaveを選択したとしています。
このシステムにより、販売実績データや生産管理データを需給データとしてクラウド上で管理し、複数の担当者による データの共有・分析を実現しました。また、需給データの分析・予測・提案などを実現するアプリケーションも同時に開発 しました。これまでの「ベテランの勘」に頼らざるを得なかった部分をシステム化したことでさらに次の販売予測を立てやくなり、生産計画に活かすことが可能になりました。データ連携の実現で、従来の手作業を廃止することにもつながり、 作業フローの大幅な改善につながりました。
システムのさらなる強化
需給調整業務支援システムはリリースから3年以上の運用実績を積み重ね、着実にお客様の業務改善に成果を上げて います。一方で、実績データの増加に伴いプログラムでの処理時間の増加が見受けられるようになっていました。また、 これまで一つの部門での需給調整業務でこのシステムを利用していたところを、複数の部門での利用に広げることを 検討する中で、システムの利用者の増加がもたらすシステム負荷の上昇が懸念材料となりました。
需給データの種別の拡充と対象となるデータ量の増加、データ分析のさらなる高度化、高速化、自動化のための プラットフォームとして、同社で利用中のMySQL HeatWaveが持つ分析処理の高速化のためのエンジンであるHeatWaveクラスター機能を有効化しました。HeatWaveクラスター機能によって、需給予測や在庫推移の分析にかかる時間も従来の1/4程度となり、作業者が処理を 待つことなく結果を確認できるようになっています。また、MySQL HeatWaveはデータ分析の使用頻度によってクラウドの利用コストが変わることはないため、間接部門においても様々なパターンの分析を試すことが可能になっています。
構築支援パートナー
株式会社データベーステクノロジは、データベースの構築・チューニングの専門集団として1995年に設立されました。データベース構築の費用対効果を最大限まで引き上げるべく日々技術に磨きをかける「データベースのエキスパート集団」として、これまで数多くの案件を手がけています。同社はデータベース関連事業に加え、クラウドサービス事業として、積極的にOracle Cloud InfrastructureやMySQL HeatWaveの設計および構築の事業を展開しています。