(本記事はOracle Life Sciences, SVP and GMのSeema Vermaによる”2024: A Pivotal Year for Life Sciences” 2023/10/23を翻訳したものです。)
この3年間は、私たちに試練を与えただけでなく、私たちを変えました。私たちは、可能性に火をつけ、ヘルスケアにおけるライフサイエンスの極めて重要な役割を明らかにする科学的進歩の加速を経験しました。私たちは業界の枠組みを再構築し始めたばかりで、まだ表面をなぞっただけです。2024年は、クラウド・テクノロジーの革新、前例のないデータの急増、生成AIの先駆的な統合、専門分野を超えたマルチステークホルダー・コラボレーションの必要性、そして患者と市民が力を発揮する科学の台頭といった要因が重なり、業界にとって分水嶺となる年になるでしょう。
故ピーター・ドラッカーは、「製薬業界はカプセル状の情報を製造している」と話したと言われています。この由来についてはいろいろな捉え方があるかもしれませんが、その本質に議論の余地はありません。臨床データ、ゲノムデータ、リアルワールドデータ、母集団データ、その他のデータの拡がりは、生成AIによって促進され、医薬品開発ライフサイクルのあらゆる段階において、計り知れない進歩をもたらすでしょう。
オラクルは40年以上にわたってライフサイエンス分野のリーダーであり、Cerner、研究、ヘルスデータ、AI、およびオラクル・クラウド・インフラストラクチャ(OCI)への巨額の投資により、グローバルなヘルス・トランスフォーメーションをリードするユニークな立場にあります。これには、業界の再構築、前例のないテクノロジー、データの進歩、実践的な専門知識、そして徹底的に患者に集中することが必要です。これは、オラクルの歴史の中で最も重要な取り組みです。
私たちの世代に変革をもたらすムーブメント
この変革は私にとってとても大切であり、私がオラクルに来た理由でもあります。メディケア・メディケイド・サービス・センター(CMS)でリーダーシップを発揮したときに示された、患者をヘルスケアの中心に据えるという私のコミットメントはオラクルでも続いています。「ペーパーワークよりも患者を優先する(“Patients over Paperwork”)」といったCMSのプログラムは、煩雑な手続きを削減し、開業医がケアに専念できるようにするのに役立ちました。その一方で、画期的なモデルによって受益者のインスリン自己負担額が下がり、新たな規制によって処方薬に対する価値ベースの支払いや、APIとFHIR標準の要件への道が開かれました。このような患者中心の取り組みは、ライフサイエンスにも拡張されなければならず、そこでは、患者は科学的情報の受益者であると同時に、その創造者であると見なされるべきです。
このような大規模なデジタルおよび文化的変革には、私たちの働き方を再構築するマルチステークホルダー、分野横断的なアプローチが必要です。オラクルのようなエンタープライズ・クラウド・プロバイダーは、共同イノベーション・パートナーシップの重要な役割を果たします。これらの課題に対応するため、オラクルは戦略的に連携した組織へと進化し、リソースをサイロ化せずに統合することで、コラボレーション、効率性、イノベーションを強化しています。
データ活用、患者重視、オープンなエコシステム
オラクルがCernerを買収したことで、医学研究データを活用する機会が生まれ、科学コンサルタントのチームがサポートする、EHR、リアルワールドデータ、リアルワールドエビデンスを包括するヘルスケアソリューションが提供されるようになりました。オラクルは、初期の計画から臨床試験の実施、市場参入やブランドの立ち上げ、上市後のパフォーマンスと安全性監視に至るまで、製品開発のあらゆる段階に対応するソリューションを持っています。今回の投資は、新しい治療薬の開発と提供を加速させ、臨床研究と臨床ケアの間に、より強力な架け橋を築くものです。
Oracle Life Sciencesでは、創薬から商品化までの製品開発サイクルを合理化するため、オープン・スタンダードに基づいたアジャイルなテクノロジーに対応するソリューションを構築しています。Oracle Health事業をOCIと連携させることで、独自のデータセット、クラウドベースの膨大な計算能力、AI機能を提供することができます。しかし、テクノロジーは答えの一部に過ぎません。この細分化され、高度に規制された状況に対処するには、専門家のパートナーとコンサルティング・サービスが必要です。テクノロジー、データ、専門知識のユニークな融合は、効率を高め、コラボレーションを可能にし、洞察を加速させ、最終的には世界中のヘルスケアの改善に貢献します。
・統合されたインテリジェントなデータ: 生成AIは、多くのデータセットから素早く意味を抽出し、科学を発展させることができます。当社には、1億件以上の患者の記録があり、さらに増え続けている匿名化された独自のリアルワールドデータセット、世界最大級のEHRプロバイダー、世界最大級の患者由来PROデータベース、コンサルティングの専門家チームがあります。これらのリソースは、データプライバシー、セキュリティ、標準への揺るぎないコミットメントに裏打ちされた洞察とリアルワールドエビデンスだけでなく、臨床試験参加のために参加医療機関から潜在的な患者を引き込む能力を提供します。
・臨床システムの再構築: 新たなエンジニアリング・リソースを活用し、臨床試験、安全性、ファーマコビジランス製品をダイナミックなビジネス・インテリジェンス・システムへと進化させます。AIとリアルワールドデータを活用することで、臨床試験の実現可能性を高め、患者募集の迅速化を支援します。また、適格な患者をエンゲージする能力を高めることで、ランダム化比較試験のスピードアップを支援します。将来的にはAIはラボのプロセスを簡素化し、発見とイノベーションを加速するインテリジェント・ラボの基盤としても役立ちます。
・膨大な計算能力とAIの専門知識: OCI(Oracle Cloud Infrastructure)は、あらゆるアプリケーションをこれまで以上に高速かつ安全に実行できるように設計された次世代クラウドで、n silico(コンピュータを利用したシミュレーション等に基づく)創薬や分子設計のための比類ない計算リソースをお客様に提供します。OCIと、NVIDIAやCohereなどの主要パートナーとともに、オラクルはAIと計算化学の膨大な可能性を解き放ちます。QuantumBioのようなバイオテクノロジー企業は、すでに創薬ターゲットのin silico同定にOCIを使用し、スピードと効率を高め、コストを削減しています。
・研究の専門知識とコンサルティング: オラクル・ライフサイエンスは、市販後、リアルワールド、規制研究における広範な臨床専門知識、研究、コンサルティング・サービスを通じて、他社と一線を画しています。40カ国以上にわたる25万件を超える臨床試験と2,000件を超える臨床論文の経験を持つ当社は、長年にわたる実証済みのマーケティングに関する知識、保険償還を裏付けるエビデンス、上市とブランド成功のための戦略を提供し、人生を変える治療薬の開発を加速します。
・オープンでコネクテッド: 私たちはエビデンスに基づく科学的成果をより迅速かつ効率的に提供し、ビジネス価値を高めるには、多くの専門分野にわたって協力的なアプローチが有効であると考えています。当社は、API主導のエコシステム戦略により、お客様に選択肢を提供し、より良いコラボレーションを促進し、結論に至るまでの時間を短縮し、より早く患者の転帰を改善します。
Better together
オラクルの総合的な優位性を活用し、パートナーや顧客と協力して、変革的かつ集団的なグローバル・インパクトを目指します。患者中心のアプローチと、ヘルスケア、臨床研究、クラウド・テクノロジーの専門知識により、オラクルはお客様が十分な情報に基づいた意思決定を行い、イノベーションを起こし、医療成果を向上させる力を提供します。
2024年は、ライフサイエンス業界のデジタル変革にとって極めて重要な年となるでしょう。”better together”をモットーに、私たちの世代とその次の世代のために、この変革をリードする私たちの仲間にぜひ加わってください。
