マルチクラウドの活用による競争優位の獲得

October 25, 2021 | 3 minute read
Text Size 100%:

著:オラクル・コーポレーション プレジデント ジャパン&アジアパシフィック ギャレット・イルグ

複数のオプションから自由に選択できることは、経済的幸福の基本的な指標と見なされています。

現在、世界中のCIOは、パブリック・クラウドへの大規模な移行に当たってその自由を行使しており、多くの場合、複数のインフラストラクチャ・サービス・プロバイダーを選択しています。その理由は、マルチクラウドのアプローチを取れば、一番有利な割引を得られるよう交渉できるうえ、特定のワークロードや機能に対して最適なプロバイダーを選択でき、さらにベンダー・ロックインも回避できるからです。また同時に、ダウンタイム、セキュリティ侵害、パフォーマンスのボトルネックが発生するリスクも緩和できるからです。

そもそも、組織がサブスクリプション型クラウドサービスを利用する主な理由の1つは、そうしたサービスには柔軟性が本質的に備わっており、必要に応じて容量や機能を有効化あるいは無効化できるからです。CIOには、1つのプロバイダーだけを利用して、そうした柔軟性を制限せずに、投資対象を分散させる方がメリットが大きいのです。

しかし、よく考えられたマルチクラウド戦略と、シャドーITを使用する複数のグループが、いわゆる「最善のプロバイダーの組み合わせ」をそれぞれの特定のニーズに合わせて選び、無秩序に購入するような状態とは区別しなければなりません。複数のクラウドを選択するときには、企業は、一貫性のあるアーキテクチャに基づき、統合された計画を策定する必要があります。このことは、特に相互運用性と適切なガバナンスを確保するために重要です。

IDCのリサーチ・ディレクター、Daphne Cheung氏は次のように語っています。「パンデミックにより、アジア太平洋地域におけるデジタル変革のペースが加速し、ほとんどの組織がマルチクラウド戦略を採用しました。各社が、ワークロードのポータビリティと統合を維持しつつ、自社のワークロードに最適なクラウドの組み合わせを選択しています。」

たとえば、オラクルとマイクロソフトの戦略的パートナーシップでは、共通のお客様が両社のクラウドをまたいでワークロードを実行できるようにしており、Microsoft AzureからOracle Cloud Infrastructure(OCI)に簡単に拡張できるようになっています。その逆も同様です。そうしたお客様のひとつであり、東京に本社を置くOPEN8は、OCIとMicrosoft Azure間の相互接続を活用して、AIベースのビジネス動画編集クラウドサービスであるVideo BRAIN(ビデオブレイン)のパフォーマンス向上とコスト削減を実現しました。これは同時に、コア・ビジネスが単一のインフラストラクチャ・プロバイダーに過度に依存しないようにする施策にもなっています。

規制当局による監視

規制の厳しい業界では、重要なワークロードを複数のクラウドに分散して移行するよう、監督官庁が大手企業に推奨するようになっています。

金融サービス・セクターについて考えてみましょう。シンガポール金融管理局とAssociation of Banks in Singaporeはどちらも、マルチクラウドの採用を金融企業に明示的に要求してはいないものの、単一のクラウドへの依存に起因するシステム障害やセキュリティ侵害の悪影響を軽減するよう促しています。

政府機関の中では、インドの電子工学・通信技術省が、国家的なGI Cloudイニシアチブの一環として、オラクルをはじめとするクラウド・プロバイダー数社に認定を与えています。これは、相互運用性、セキュリティ、データ・ポータビリティ、およびSLAに関する同省の厳格なガイドラインに準拠していることを認めるものです。これらの認定は、インドの連邦政府および州政府の機関が、上述したスケーラビリティ、柔軟性、効率性の理由から、複数のプロバイダーにクラウド・ワークロードを分散させるための下準備として与えられています。

同様に、米国政府は、Federal Risk and Authorization Management Program(FedRAMP)の一環として複数のクラウド・プロバイダーを認定しています。このプログラムにより、連邦、州、および地方の機関は、ワークロードをクラウドへより安全に移行できるようになっています。米国政府の有力機関の1つである国防総省は、大規模なJEDI(Joint Warfighter Cloud Capability)契約に基づく方針変更を行っています。同省は、当初FedRAMP認定ベンダーを1社のみ選択していましたが、その後複数のクラウド・プロバイダーを利用することを決定しました。防衛機関である同省は、自動化、AI、データ分析をはじめとするあらゆる分野でクラス最高の革新的なクラウドサービスを常に利用できるようにしておく必要があり、現在と将来にわたる同省の要件のすべてを1社で満たすことはできないという認識を持つようになりました。

 世界各地の通信事業者は、マルチクラウドの採用に特に精力的に取り組んでいます。ある1社のクラウド・インフラストラクチャ・プロバイダーをEコマースなどのフロントエンド・アプリケーション用に利用し、別のプロバイダーを請求業務、収支管理、ネットワークの監視を行う複雑なバックエンド・システム用に利用するといった具合に、用途ごとに使い分けている場合もあります。

 少し前まで、ITリーダーと経営幹部たちは、クラウドの導入を本格的に進めることの是非をめぐって議論していました。そうした議論に対しては、すでに結論が出ています。現在の焦点は、組織のクラウド戦略をサポートするのにふさわしいプライマリ・ベンダーとセカンダリ・ベンダーを見つけることです。マルチクラウドのアプローチを採用しているプロバイダーはどれか、そして、このアプローチに抵抗し、市場での優位を不当に維持しようとしているプロバイダーはどれかということを基準に考えれば、適切な判断を下すことができるでしょう。

本ブログ記事は10月12日に公開したWinning with Multicloudの抄訳です。

 

Guest Author


Previous Post

医療現場におけるデータ利活用と「DXの本質」

Guest Author | 5 min read

Next Post


ITのチカラで西新宿を賑わいのある街へ 〜 5Gを活用したスマートシティサービス実証事業に参画

Norihito Yachita | 1 min read
Oracle Chatbot
Disconnected