“Break The Bias” 国際女性デーにちなみ、ジェンダー平等や女性活躍推進、多様性を認め合う社内オンラインイベントを開催

March 27, 2022 | 3 minute read
Norihito Yachita
Director, Corporate Communications
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2022年3月8日、国際女性デーの社内イベントが日本オラクルのOracle Women's Leadership (OWL)メンバーが中心となり、オンラインで開催されました。国際女性デーは女性の活躍を推進し、ジェンダー平等で多様性を認め合う日として、世界的にも広く知られています。

今年のテーマは「Break The Bias(偏見を打ち破ろう!)」です。

私たちはもっとインクルーシブになれる

冒頭では、日本オラクル株式会社 取締役 執行役 社長 三澤 智光より、次のようなメッセージが伝えられました。「私たちは日々さまざまなバイアスが存在する中で生活しています。個々に存在するバイアスを見つめ、殻を打ち破っていきましょう。企業として、より良い社会に貢献し、サスティナブルな経営を行うためには、広くダイバーシティ&インクルージョンの推進が不可欠です」と強く訴えました。

日本オラクル  三澤智光

 

そして、日本オラクルでは女性社員の採用を強化しており、2016年と2022年の比較では女性社員比率が4%ほどアップしているという実態を紹介しつつも、本来の男女の割合を踏まえると社員の比率はおおよそ半々であることが望ましいこと、そして残念ながら女性管理職の割合もグローバル基準に比べると低いことを指摘。このような状況を改善するため、日本オラクルは「30% Club Japan」(英国で創設された役員に占める女性割合の向上を目的とするキャンペーン)に加入し、また、OWLが中心となり女性向けリーダーシップ開発プログラムの運用を予定していることを伝えました。

さらに、三澤社長は日本オラクルの代表として、働き方・キャリアに対するバイアスを打ち破ることにチャレンジしたいと語り、「男性・女性・管理職など、無意識のバイアスに引っ張られることなく」「高度成長期に効率化を追求し作られた価値基準から脱却する必要がある」と続けました。

「私たちはもっとインクルーシブになれるはず。皆さんもぜひ、ご自身の『Break The Bias』について考えてほしい。今日だけでなく、今日をきっかけにして、アンテナを高く持ち、D&Iに取り組んでいきましょう」と語りました。

キャシー松井さんによる「ウーマノミクスの意義」

イベントの基調講演には、MPower Partners ゼネラル・パートナー/元ゴールドマン・サックス証券会社 日本副会長及びチーフ日本株ストラテジストのキャシー松井さんが登壇。多様性と持続可能性を経済合理性の観点から分析し、多くの企業や投資家に影響を与えてきた松井さんから、ウーマノミクスの意義について、非常に有益なお話を時にご自身の体験談を交えながら講演いただきました。

MPower Partners  キャシー松井さん

 

ウーマノミクスに関する最初のレポートを発行した数年前、日本の女性就業率は先進国の中では特に低かったと松井さんは指摘しました。

「日本の人口動態は厳しい状況にあり、生産年齢人口に占める就業者の割合を増やすためには ①出生率をあげる ②外から(移民等)の人を受け入れる ③既存の人口、女性および高齢者をもっと活用する、3つの解決策しかありません」

松井さんは根拠となるデータを皆さんと共有しながら、女性と高齢者をもっと活用すればGDPは上がると語りました。さらにポジティブな面として、日本の女性就業率は2013年以降、急速に上がり、欧米諸国を抜いたこと、そのデータを見せると海外の投資家は皆驚くといったエピソードを紹介。また、女性活躍推進により、日本の企業におけるジェンダーに対する情報が見える化されてきたことも評価できるとしています。

そして松井さんは、女性活躍に関する間違った通説について、データ分析に基づいた検証と解説を展開しました。

女性活躍に関する間違った通説とは

通説1 育児と介護だけが「退職理由」なのか

なぜ女性がキャリアを諦めてしまうのでしょうか。調査結果を分析すると、日本人女性は育児や介護により仕事を辞める(プル要因)のは30%台である一方、キャリアの行き詰まりは49%・仕事への不満(プッシュ要因)で仕事を断念した割合は63%に達しています。実際には育児以上に、仕事そのものに対する問題が女性のキャリアを止めているのです。要するに託児所やケアのインフラを完璧に整えたとしても、組織・企業における課題が大きいと言えます。

通説2 ダイバーシティは企業のパフォーマンスに関係あるのか

アメリカの500社で調査した結果、女性管理職の割合と増収率・ROE(自己資本利益率)が正の相関性があることがわかりました。日本はそもそも女性管理職の数が少ないですが、こちらも調査をしてみると同様の結果となりました。これはおそらく、企業の意思決定過程においてさまざまな立場の人たちの考え方がインプットされ、イノベーションが生み出されること、考えてこなかったリスクを指摘し防げることが影響しているのではないかと考えられます。つまりコグニティブ・ダイバーシティ(考え方の多様性)が大切なのです。

通説3 女性が社会に出ると出生率が下がるのでは?

働く女性が増えると出生率がさらに低下すると思われていますが、各国の女性就業率と出生率のデータを見ると、女性就業率の高い国で出生率が高くなっていることがわかります。これは日本の47都道府県でも同じ結果が見られます。

ダイバーシティの議論をする前に「何が通説で何が事実なのか」それを確認した上で議論しなくてはなりません。事実は何なのかが重要です。

日本のウーマノミクスを推進する追い風

松井さんは女性活躍の間違った通説を打破しなくてはならないと訴える一方で、「日本は変化が遅いと言われるが私は楽観的に見ている」「なぜなら追い風もあるから」と続けました。

追い風のひとつはESG投資(財務情報だけでなく、環境・社会・ガバナンスを考慮した投資)です。

「ESG投資がもっとも伸びているのは日本です。多様性の情報開示、女性管理職の取り組みなどを投資家は見ています。ナスダックの社長は女性の方ですが、数ヶ月前に最低2名の多様なボードメンバーがいないと上場できないとさえ言っています。こうした変化は日本、アジアを変える追い風となるでしょう」

もうひとつの追い風は、松井さんが「日本独特のもので興味深く思っている」調査結果からくるものです。

「独身男性への調査を見ると、80年代にはパートナーに専業主婦を求める男性が多かったが、2000年には逆転しました。ミレニアル世代はもっと家族と接する時間がほしい、仕事だけでなく自由な生活をしたいという価値観を持っており、これはパワフルな追い風になるでしょう」

全コミュニティ・全社会が恩恵を受けることであり、大きな変化だと思うと松井さんは付け加えました。そして次に松井さんの著書から「女性社員の育て方」についてのお話がありました。

キャシー松井さんが経験から語る「女性社員の育て方」

いくつかのポイントを挙げた中で、男性と女性の違いを踏まえた上で、女性は昇進をためらう傾向があること、そのため女性に対しては「励ましが大切」と松井さんは指摘しています。また、女性を育てるネットワークを女性だけで構築しても結果は変わらなかったことを体験談として語り、トップ層の男性を組み込まないと、上のレベルの決定意識が変わらないこと。女性が女性のための活動をするだけでなく、男性を巻き込むことが大切とおっしゃっています。

「これは私からのアドバイスです。自身のパーソナルBOD(個人取締役会)を作ること。自分をわかってくれる人たち、正直な意見を言ってくれる人たちと互いにアドバイスし合うことで問題の解決や成長への助けとなります」

こう語ったあとで、松井さんは「女性のキャリアについてよく『ワークライフバランス』という言葉が使われますが、私はこの表現が嫌いです。バランスというが、たとえば完璧に主婦を1/3、仕事を1/3、母を1/3と分けられるわけがない。成功しているリーダー女性でこんな完璧なバランスで行っている人はいません。ワークライフ均衡(Equilibrium)と言うべきです。ある日は仕事に8割の力を注ぐかもしれないが、次の日は育児に全力を注ぐかもしれない。毎日、違うものです」と語りました。

最後に、シェリル・サンドバーグ氏の書籍から「完璧をめざすよりも、まず終わらせろ Done is better than perfect(マーク・ザッカーバーグ氏が語った言葉)」という言葉を伝え、完璧にやるよりも「やった」というだけで充分ではないかと考えることで、ストレスもぐんと下がると思うとアドバイスしてくださいました。

参加者からの質問に対する、実体験を交えたキャシー松井さんの答え

Q:もし女性が管理職になりたくない場合

A:その人が次のステップをめざさない個人的な理由があるのかもしれないので、上司がその理由を掘り出すこと。そして、彼女に向かって「あなたでなければ他に誰もいない」と伝え、フルサポートし全てにおいてバックアップする、一緒に頑張ろうと伝えること。スピーチでも話した通り、女性には多くの励ましが必要だからです。

Q:育児と仕事の両立を不安に思う社員に向けてのメッセージ

A:人生で重要な選択肢は、どんなパートナーを選ぶか。

私のパートナーは結婚する前に料理ができると言っていたけど、できない(笑)でも、食器洗いなどはする。なにより、パートナーが自分の意思や夢を理解しリスペクトしてくれることが大切です。出産後、私もフルタイムで働き、出張もあり、助けとなる身内も日本にいなかった。そのため育児に関してはシッターさんと協力しました。彼女がいなければ子育てをしながらここまでのキャリアを得られなかったかもしれません。もっと日本でも育児だけでなく介護などでも、いろいろなサポートが手に入りやすい環境になればよいと思っています。

—ファシリテーター・中島 里香(日本オラクル株式会社 代表執行役 法務室長)より

キャシーさんの著書で特に印象に残っていることの1つは、義理のお母さんから『母親がハッピーであることが大切であると言われた』といった趣旨の一文です。

A:私は20年以上前に乳癌になり治療を受けました。8ヶ月も仕事を休んだのです。子どもは0歳と4歳、仕事に復帰すべきか悩みました。そこで先ほどお話ししたパーソナルBOD(個人取締役会)のメンバーに聞いてみました。中でも義理の母のアドバイスが心に響きました。彼女から「日曜日の夜8時くらいに、あなたはどんな気持ち?」と聞かれ、日曜の夜は「ああ疲れている。明日は月曜日、オフィスに戻れるからいいなと思う」そう答えると、彼女は「その気持ちなら、つまり仕事が楽しみでハッピーなら、仕事に復帰するべきではないか」と言いました。専業主婦を選んで不幸ならば、子どもや家庭に不幸が伝わってしまう。ハッピーなら家族も幸せになれる。それで私は職場に戻りました。何が一番幸福につながるのか、それが選択肢の基準です。

キャシー松井さんと日本オラクル 中島里香

 

Q:コロナ禍で家にいる時間が多い。その中で育児や介護といった家の仕事は女性の役割というジェンダー格差がより鮮明に見えてきている。在宅勤務により広がるジェンダー格差について

A:コロナ禍によって、フレックスタイムやテレワークが当たり前の働き方のひとつとなりつつあることは良いことではあると思います。なぜ日本に男女のギャップが大きいのか、それは日本では時間軸で人が評価されがちな面があるからではないでしょうか。時間軸から成果主義、パフォーマンスベースになっていくのが良い方向だと思います。

男女の役割分担、ステレオタイプがすぐに社会の概念から消えることはないけれど、どのように解決していくのかは、これからもディスカッションが必要でしょう。

偏見やバイアスを打ち破るために

最後に、首藤 聡一郎(日本オラクル株式会社 執行役員 事業戦略統括)が、「我々は、過去の成功体験にひきずられた意思決定をやめ、バイアスと向き合って自らに問い続けることにコミットしていかなくてはなりません。社会全体を見渡すと、人間に優しい労働環境をきちんと考えなくてはいけないと切実に感じます。長時間労働の意識を変えていき、パートナーと家事を分担できるような社会的な仕組みを作っていけたらいいなと思っています」とクロージングで述べ、イベントは終了しました。

日本オラクル 首藤 聡一郎


社会にも組織にも今なおバイアスは存在します。私たちは偏見やバイアスを打ち破っていかなくてはなりません。

「Break The Bias」皆さんで挑戦していきましょう!

Norihito Yachita

Director, Corporate Communications

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