2017年、美しい空色の水に浮かぶ北大西洋・バミューダ諸島で、世界最高峰の国際ヨットレース「アメリカズカップ」第35回大会が開催される。前回、前々回の覇者「ORACLE TEAM USA」が華々しく、そして威厳をもって、世界最古のカップ戦の3連覇に挑む。
2010年以降、スポーツ界には前例のないイノベーションの大波がおしよせてきている。昔ながらのヨットレースの手法 ― 人の勘に頼って天候や波に対応するなど
―は、データを活用したヨットのデザイン、リアルタイムの分析により大きく様変わりしようとしている。その結果、ヨットをより素早く操縦し、乗組員を効率的に鍛え上げ、過酷なレースでも勝利できるようになる。
データを活用したレース運びの先駆者であるORACLE TEAM USAは、テクノロジーを駆使し、バミューダでの勝利を誓う。
■参考情報
ORACLE TEAM USAが手繰り寄せた「アメリカズカップ」の勝利
ORACLE MAGAZINE 日本版 至高のスピードへの挑戦
ITmediaエンタープライズ掲載 1000コアのCPUから生まれる現代ヨットレースの最高峰とは?
ルイ・ヴィトン・アメリカズカップ・ワールドシリーズ福岡大会 公式サイト
■データ駆動型のデザイン
ヨットレースの新たな試みとして、ヨットが着水するたびに何ギガバイトものデータを収集するリアルタイムのセンサーが数百個使われている。このセンサーからマスト(帆柱)、ハル(艇体)、セイル(帆)にかかる圧力、さまざまなパースで生じる荷重、乗組員が加えた調整効果など、ヨット全体で3,000を超える情報を毎秒取得し、パフォーマンスを把握している。
ORACLE TEAM USAの偉業は偶然のものではない。客観的データを頼りに、繰り返しパフォーマンスの向上に躍起になっている。すべての乗組員、ヨットデザイナーはデータ分析の訓練をうけており、レース後の報告会や、ヨットのデザインを討議する場にも参加している。
(写真)「アメリカズカップ」第35回大会に向け、バミューダでトレーニングするORACLE TEAM USA
■究極のアスリート パフォーマンス
データの活用はヨットのデザインだけに留まらない。実際、乗組員は30年前と比較して、アスリートとしてのレベルを一層向上させなくてはならない。トレーニングは週6日、1日12時間から14時間に及ぶ。ORACLE TEAM USAでは、乗組����が身に着けるウェアにもセンサーを仕込み、心拍数、呼吸数、体温などの情報をリアルタイムに収集し、チームのパフォーマンス向上に活かしている。
2017年、ORACLE TEAM USAは新たな挑戦を受けることになる。ヨットレース界は、データを活用した設計手法によるイノベーションに影響を受け、Oracle Team USAがそうであるように、皆その手法にレース戦略を賭けている。
(写真)「アメリカズカップ」にはアスリートとして集中力を高め、重要なデータをリアルタイムに解釈する能力が求められる
■新たな発見につながるデータ
ORACLE TEAM USAが常に先頭を走り続けられる理由は2つ。「more」と「new」である。より豊富なデータを収集するべく、ヨットと乗組員はこれまで以上にリアルタイムのセンサーを装備している。その数1,000個、帆だけでも300個にのぼる。練習走行の報告会の際により詳細な分析を目指し、ドローンによる撮影映像、音声などによるデータ量を増やしている。インテル社と新たに協業し、収集されたデータを元に流体力学を駆使することで、3年前ではわかり得なかった新たな発見へと導くことができる。
2017年6月にORACLE TEAM USAがバミューダの海に着水するとき、あらゆる分析、洞察、イノベーションが他のレース・チームを凌駕することを世界は注目している。
(写真)新しいヨットのデザインを何度も試験するORACLE TEAM USA。データを駆使し、ヨットのあらゆる個所を繰り返し改善