富士通「Systemwalker」と「Oracle Enterprise Manager」の連携に見る、システム統合管理環境の未来

1995年の発売以来、企業システムの統合管理環境として先進の機能を提供し続けてきたのが富士通の「Systemwalker」シリーズだ。現在ではオラクルの統合管理環境「Oracle Enterprise Manager」との連携にも対応し、オラクル製品の詳細な情報をSystemwalkerで一元的に把握することが可能になるなど、多彩な機能によって企業システムの安定稼働を支え続けている。先ごろ、このSystemwalkerとOracle Enterprise Managerの連携がさらに強化され、新たな魅力が加わった。富士通と日本オラクルの各担当者に、この連携の意義やメリットを聞いた。(川添貴生)

「それぞれの得意領域を生かして」──SystemwalkerとOracle Enterprise Manager連携の意義

 Oracle DatabaseやOracle E-Business Suiteなどのソフトウェア、さらにはOracle Exadataをはじめとするシステム製品群など、さまざまなオラクル製品の状態を“深く”監視できる管理環境としてオラクルが提供しているのがOracle Enterprise Managerだ。最新バージョンのOracle Enterprise Manager 12cでは、Oracle Exadataの管理/監視機能が強化されているほか、クラウド環境の管理にも対応するなど、統合システム管理製品としての完成度をさらに高めている。

 このように機能強化を進める一方、Oracle Enterprise Managerでは他社製の運用管理環境との連携も積極的に進められている。そうした取り組みの1つが、富士通が提供するSystemwalkerとの連携である。

 富士通とオラクルの協業の歴史は長く、1989年に両社間でパートナーシップ契約が締結されたところから始まっている。運用管理環境の連携では、2009年にアラート通知連携スクリプトがリリースされ、Oracle Enterprise Managerによる詳細な監視の結果を「Systemwalker Centric Manager」で一元管理することが可能になったほか、2012年4月にはマルチプラットフォーム環境(Solaris、Windows、Linux)での連携を実現している。

 このような連携強化の背景には、「それぞれの得意領域を生かすというコンセプトがある」と日本オラクルの横尾明久氏(アライアンス統括 ソフトウェア・アライアンス営業統括本部 第一営業本部 富士通営業部 部長)は説明する。

日本オラクル アライアンス統括 ソフトウェア・アライアンス営業統括本部 第一営業本部 富士通営業部 部長の横尾明久氏
 「運用管理環境には、それぞれに得手、不得手があり、Oracle Enterprise Managerの場合はオラクル製品の監視や管理を強みとします。例えば、Oracle Databaseであればストレージやメモリの動きまで把握することができますし、それをデータベースの情報と重ね合わせて見ることも可能です。

 ただし、システム全体、あるいはデータセンター全体の監視/管理を実現していこうとするならば、富士通のSystemwalkerのようなオラクル製品以外の環境も含めた統合管理に強いツールと連携していく必要があります。この連携により、Systemwalkerで取得したシステム全体の観点による情報と、Oracle Enterprise Managerで取得したオラクル環境に関する詳細な状況を関連付けて見られるようになり、システム全体の状況を素早く、そして子細に確認できるようになるというわけです。

 私たちは、こうした製品連携がもたらすメリットの大きさを強く感じており、今後も積極的に推進していきたいと考えています」

すでに多くの企業で利用されているSystemwalkerとOracle Enterprise Managerの連携



売上シェアと市場評価

 ご存じのとおり、SystemwalkerはICTサービス管理からICT構成管理、そしてICTシステム管理までをサポートする統合運用管理環境である。富士通は1995年に日本初の統合運用管理環境として「MpWalker」を発売し、その後、Systemwalkerというシリーズ名でバージョンアップを重ねてきた。Systemwalerシリーズには複数のソフトウェアがあるが、その中でも特に評価が高いのがイベント管理環境の「Systemwalker Centric Manager」であり、同製品は国内イベント管理ツール市場ベンダー別売上においてNo.1のシェアを獲得しており、2011年のシェアは37.2%を占めている。

 このSystemwalkerとOracle Enterprise Managerの具体的な連携の内容について説明するのは、富士通 ミドルウェア事業本部 サービスマネジメント・ミドルウェア事業部 第三開発部 シニアマネージャーの伊藤裕章氏だ。

富士通 ミドルウェア事業本部 サービスマネジメント・ミドルウェア事業部 第三開発部 シニアマネージャーの伊藤裕章氏
 「Oracle Enterprise ManagerがOracle DatabaseやOracle E-Business Suiteなどのアラートを検知すると、同じサーバで動作しているSystemwalker Centric Managerに具体的な情報が引き渡されます。この情報の中には、アラートの重要度やメッセージの内容が含まれており、これをSystemwalker Centric Managerの運用管理サーバに通知するという流れになります。これにより、システム管理者はSystemwalker Centric Managerの管理画面上からOracle Databaseで発生した障害の詳細な内容を確認できるようになるわけです」(伊藤氏)

SystemwalkerとOracle Enterprise Managerによる統合管理


 Systemwalker Centric ManagerとOracle Enterprise Managerの連携機能は、すでに流通業や製造業など多くの企業で活用されているほか、最近ではOracle Exadataの監視や管理においても両者の組み合わせが使われ始めているという。このように連携させることで、システム全体を俯瞰しつつ、データベースやアプリケーションの詳細な状況をドリルダウンして確認できる環境が整えられるのだ。

SystemwalkerによるOracle Exadataの監視構成例


性能問題の早期解決を実現する両社の新たな取り組み──Oracle E-Business Suiteでのバッチ処理管理を効率化

 さらに、富士通とオラクルの両社は、バッチ業務の統合管理を実現するためのソリューションも開発した。

 Systemwalkerシリーズでは、定型バッチ業務やオンライン業務の自動化、業務の実行状況の監視などが行える「Systemwalker Operation Manager」という製品を提供しており、これを「Systemwalker for ERPパッケージ ジョブ連携」と組み合わせることにより、オラクルのERP製品「Oracle E-Business Suite」におけるバッチ業務のコンカレント処理を実現できる。Systemwalker Operation ManagerでOracle E-Business Suiteを含めたバッチ業務を管理し、さらにSystemwalker Centric Managerでオラクル製品群を含めたイベントを管理することにより、企業システム全体のバッチ業務の統合管理を行えるわけだ。

オラクル製品とともに実現するバッチ業務の統合管理ソリューション


 ただし、これまではデータベース側に問題が生じてバッチ処理の遅延や異常終了が発生した際、Systemwalker Operation Manager単体では具体的な原因を把握することができなかった。そこでSystemwalker Operation ManagerとOracle Enterprise Managerを連携させることにより、バッチ処理中に発生したトラブルの原因究明や対処の迅速化を実現しようというのが今回のソリューションである。

 富士通の伊藤氏は、このソリューションを開発した背景として、「性能問題に起因するトラブルの解決が長期化している」ことを挙げる。

 「データベース側で性能上の問題が発生し、ジョブが遅延した、あるいは異常終了したといった場合、Systemwalker Operation Managerではトラブルが発生したことまではわかるのですが、なぜ発生したのかまでは把握できません。その段階で私たちがご支援に入っても、トラブル発生時のログなどが残っておらず、再現待ちになるケースが少なくありませんでした。しかも、なかなか再現しない場合には、トラブル解決までの期間が長期化するうえ、お客様は不安を抱えながらシステムを運用せざるをえません。こうした問題をSystemwalkerとOracle Enterprise Managerの緊密な連携によって解決できないかと考え、このソリューションの開発に取り組んだのです」(伊藤氏)

SystemwalkerとOracle Enterprise Managerによるバッチ業務連携


 具体的には、Systemwalker Operation Managerを使ってバッチ処理を行っている際にジョブの異常終了や遅延が発生した場合、今回開発したOracle Databaseの性能情報を取得するスクリプトを実行し、Oracle Enterprise Manager/Diagnostics Packの機能を使って、トラブルが発生した時点のAWRレポートやASHレポートを自動的に取得するという仕組みである。AWRレポートはOracle Database内部の統計情報をスナップショットとして取得する機能、ASHレポートはOracle Database内部でサンプリングされた、セッション単位の待機イベントや待機時間、SQLなどを格納する機能だ。

 この2つの情報を使うことでトラブル発生時の状況をチェックすることが可能になり、トラブルの再現を待たずに問題解決に当たれるようになる。これが今回のソリューションの最大の目玉である。

 なお、このソリューションはSystemwalkerの連携製品認定制度である「Systemwalker Enabled」を取得予定であり、安心して利用できる点も嬉しい点だ。

自立的なサービスの実現に向けてさらに連携を強化

 富士通 ミドルウェア事業本部 サービスマネジメント・ミドルウェア事業部 事業部長の西條寛氏は、今後の両社の連携について次のように展望を語る。

富士通 ミドルウェア事業本部 サービスマネジメント・ミドルウェア事業部 事業部長の西條寛氏
 「これまでの協業では、トラブルが発生した際に、それを“見える化”することに重点を置いていました。今回のソリューションは、それを一歩進め、いわゆるインフラの管理(システム視点)からサービス・レベルの管理(業務視点)へと進化しています。

 今後はさらに連携を推し進め、より利便性の高いソリューションを実現したいと考えています。例えば、弊社の製品に『Systemwalker Service Quality Coordinator』というキャパシティ・プランニングやサービス品質の可視化を実現する製品があります。こうした製品を組み合わせて、単にOracle Enterprise Managerで得た詳細な情報を見せるだけでなく、その内容を分析してトラブルの予兆を捉え、ユーザーに通知するなど、自立的なサービスの実現に向けた取り組みを進めていきたいと考えています」(西條氏)

 ビジネス・インフラとしてのITの重要性が年々高まるにつれ、企業内で使われるシステムの規模は拡大し続けている。また、今日の企業システムは仮想化技術などの導入により、ますます複雑化しつつある。こうしたシステム環境を効率的に管理していくうえで、運用管理環境の有効活用は欠かせなくなっている。

 ただし、オラクルの横尾氏も指摘するように、各社が提供する運用管理環境には、それぞれに得意領域がある。よって、それら複数の環境を効果的に連携させて活用することが重要になるのは間違いない。そうした中で富士通とオラクルが今後、どのように連携を強化していくのか、今後の展開に注目したい。

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