それは本当にコストでしかないのか? "視点の転換"が事業継続のコストをベネフィットに変える!

突然の事故や災害に見舞われた際、いかにして事業活動を継続していくか?――東日本大震災は、多くの企業に「事業継続性の確保」を重要な経営課題として再認識させた。もちろん、今日の企業活動の多くがITシステムの上に成り立っている現在、これはITシステムを預かる者に突き付けられた課題でもある。2011年8月25日に開催された「オラクル金融サミット2011」では、日本オラクル テクノロジー製品事業統括本部 データベースビジネス推進本部製品推進部 シニアマネージャーの谷川信朗氏が、「事業継続を意識した情報資産の保護について ~顧客事例とオラクルが考える情報システムの高信頼性~」と題したセッションにおいて、ITの側から事業継続を支えるためのノウハウや同社の最新テクノロジー、そして活用事例などを紹介した(編集部)。

■"リスク対策"と"コスト"をいかにしてバランスさせるか?
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日本オラクル
テクノロジー製品事業統括本部
データベースビジネス推進本部製品推進部
シニアマネージャーの谷川信朗氏は、BCP施策におけるリスクとコストのバランスを取るにあたり、従来とは視点を変えることの必要性を説いた。
 東日本大震災は、多くの企業に「事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)」やリスク管理の重要性を改めて強く認識させた。実際、この震災を機に、改めてBCPの見直しを行ったという話はよく聞かれる。

 もっとも、たとえ事業継続のためとは言え、その対策に際限なくコストをかけられるわけではなく、それがBCPの施策を検討するIT部門を悩ませることになる。事業継続を考える際には、事故や災害だけでなく、サイバー攻撃や情報漏洩といったセキュリティの観点も必要になるが、それらがもたらす"リスク"と、対策にかかる"コスト"のバランスをいかにうまく取るかを考えなければならないのだ。谷川氏は、このバランスを取るにあたり、「視点を変える」ことを提案する。

 「残念ながらこれまで、BCPの施策は有事の際に初めて意味を持つ"保険"のようなものだと見られることが多かった。そのため、積極的な投資を行いづらいと考えられてきたわけだが、その状態から脱却するには、ここで思いきって視点を変える必要がある。具体的には、『有事の対策を平時の運用に取り込む』ことにより、ROIを明確にしつつ、事業継続を支える堅牢な情報基盤を実現していくことができる」(谷川氏)
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 例えば、「在宅勤務」を実現する仕組みの導入を考えてみよう。これを「災害などが起きた際、社員が自宅で業務を継続できるようにするためにもの」という事業継続の観点だけから導入しようとしても、実現は難しいだろう。そこで視点を変え、社員が外出先や出張先にいても、ユニファイド・コミュニケーション基盤などを活用してオフィス勤務時と同等に業務を遂行できるようにする「日常のワークスタイルを変えるための仕組み」、さらには「互いに離れた拠点にいる社員が共同で作業したり、知識を共有したりしやすくすることで組織の総合力を高める、新たなコラボレーション基盤」と位置づけて投資価値を判断するのだ。もちろん、この基盤は有事の際には事業継続基盤として機能する。

 谷川氏は、「このように視点を変えて投資価値を提示することで、経営層も適切な投資判断がしやすくなる」とアドバイスする。

■待機サイトを遊ばせない、効率的なディザスタ・リカバリ環境の実現

 オラクルでは、適切なコスト効率でBCP施策を実現するための各種ソリューションを提供している。それら最新のソリューションを活用することで、「目的とする効果をよりリーズナブルなコストで実現できるケースが少なくない」と谷川氏は語る。

 「例えば、バックアップ・サイトを設ける際、これまではストレージのミラーリングやコピーによって実現するのが一般的だった。しかし、そうした旧来の技術に頼ることには弊害もある。例えば、遠隔地間でのレプリケーションをストレージ製品の機能で実現する場合、待機サイトには本番サイトと同等の構成が必要となるため二重投資となるうえ、待機サイトは日常業務では使えず遊んだ状態となってしまう。また、本番サイト/待機サイトの切り替えは高コストになりがちで、ダウンタイムが長いという問題もあった」(谷川氏)

 こうした問題の解消に向け、オラクルではより効率的にディザスタ・リカバリを実現するための取り組みを進めてきた。その1つがOracle Database Enterprise Editionの標準機能である「Oracle Data Guard」だ。Data Guardでは、データベースのログに基づく差分情報だけを待機サイトに転送して同期することで、ストレージの機能によるミラーリングと比較してネットワークの使用帯域幅を大幅に抑えると同時に、迅速な切り替え、計画停止時間の最短化を実現している。データ転送量が少ないので、低速な回線で結ばれた拠点間でバックアップをとる場合にも使えるというメリットもある。
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 加えて、Oracle Databaseのオプション製品である「Oracle Active Data Guard」を使うことで、待機サイトをデータ参照などの用途で日常業務に活用することも可能だ。これにより、待機サイトを遊ばせることなく、速やかに投資コストを回収できるのである。
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 また、より柔軟なバックアップ・サイト構築のためのデータ連携プラットフォームとして「Oracle GoldenGate」も提供されている。Data Guardとは異なり、OSやバージョンが異なるOracle Databaseや他のデータベース間でのレプリケーションに対応しており、これを使えばさらに多様なバックアップ・ニーズに応えることができる。

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 オラクルでは現在、高い事業継続性が求められる企業/業務に向けて、これらのレプリケーション技術を活用したバックアップ・サイトの実現や、これらに「Oracle Real Application Clusters(RAC)」などを組み合わせることでシステムの可用性を最大化するアーキテクチャ「Oracle Maximum Availability Architecture(MAA)」を提唱している。これは「99.9999%の稼働率の実現」を目指したものであり、国内外の極めてミッション・クリティカル性の高いシステムでの適用が進んでいる。

■視点を変えて「止まらない仕組み」を実現した東京証券取引所

 金融業界において最近、オラクルの製品/技術とコンサルティング・サービスを活用して最適なコストで高信頼性/高可用性システムを実現した1社が東京証券取引所である。

 東証は現在、「ユニバーサル取引所への進化」をテーマに、国際的な金融センターを目指して中期事業計画を掲げ、システム基盤の強化に取り組んでいる。特に事業継続性の観点では、2001年9月11日の同時多発テロ事件が原因でニューヨーク証券取引所が停止した事実を受け、有事の際にも「停止しない」システムを指向。ITマスター・プランの中で「セカンダリ・サイトの構築と強化」という目標を掲げて取り組みを進めてきた。

 東証では従来、情報系システムに対してテープ・バックアップなどによる対策を実施していたが、システム基盤強化のために、既存のプライマリ・サイトに対して後付けでセカンダリ・サイトを構築することを決定。その際の要件として、「低コスト」かつ「短期間で構築」し、さらに「他の業務に影響を与えない」という厳しい要件が課せられたという。

 プロジェクトは、オラクルのコンサルタントも支援に入って進められた。既存のプライマリ・サイトにはRACによるクラスタが複数導入されていたが、これに対して従来の考え方でセカンダリ・サイトを作ろうとすると、プライマリ・サイトとまったく同じ構成がもう1つ必要となり、コストが高くついてしまう。

 そこで、このプロジェクトでは視点を変え、セカンダリ・サイトはハードウェア構成を低コストなものとし、それぞれのノードにData Guardで同期をとる仕組みを作ることで、ハードウェア・コストの削減とネットワーク帯域幅の抑制を同時に実現。オラクルのコンサルタントによる技術支援もあり、構築期間の短縮にも成功した。
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 なお、このセカンダリ・サイトは、平時は待機するのではなく、日々の運用の中でテストや検証などの用途で使うことが可能となっている。これにより、ROIも明確になった。谷川氏によれば、東証が新たに構築したセカンダリ・サイトは、従来の技術で構築する場合と比べて約半分のコストで実現できたという。

■ディザスタ・リカバリ構成での導入が増える「Oracle Exadata」

 ディザスタ・リカバリ環境の構築にあたっては、まず既存の複数のデータベースを統合し、そのうえでリカバリ・サイトを構築するというアプローチをとる企業が増えている。複数のシステムが散在した状態で、それぞれにリカバリ・サイトを構築しようとすれば、当然コスト高となってしまう。また、システムの複雑性が増すため、運用管理のコストも増大するだろう。

 オラクルでは、コストを適正化しつつ、高性能かつ高い信頼性を備えたインフラを実現する手段として、データベース・マシン「Oracle Exadata」を提供している。

 「現在、このOracle Exadataでディザスタ・リカバリ構成をとる企業が世界中で増えている。システム統合で全体のコストを下げつつ、しっかりと事業継続性を確保できるかたちでインフラを構築する企業が多い」(谷川氏)

 例えば、金融業界では、欧州最大手の金融グループであるBNPパリバや、米国最大の金融機関であるバンク・オブ・アメリカなどが、Oracle Exadataによるディザスタ・リカバリ構成を実際に導入しているという。

 また、「Blackberry」の開発/提供元である米国リサーチ・イン・モーションでは、Oracle GoldenGateを導入。世界中の5拠点に構える工場間において、アクティブ/アクティブ構成でリアルタイムに生産システムのデータを同期させることで、事業継続性の確保とシステム性能の改善を果たした。また、DWHとして利用しているOracle Exadataと生産システムを連携させることにより、数分程度での生産管理レポートの生成も実現したという。

 谷川氏は、「事業継続に関する課題は、ITシステムだけですべてを解決できるものではない」としながらも、「ITシステムでは、計画内/計画外の事象を想定したアーキテクチャやシステムの実装が重要となる。従来とは視点を変えて最新の技術をうまく使えば、BCPの施策に要するコストを抑えるだけでなく、IT環境に要するコスト構造を変革することすら可能だ」と述べ、講演を締めくくった。

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