M2Mを支えるFast Data Processingにより、ビッグデータ収集へと向かう企業たち──「Oracle Big Data Forum」レポート

センサーなどの多様なデバイスからリアルタイムに情報を収集/処理し、そこからビジネス機会を捕捉して先手の施策を打つ──最近、このように積極的なビッグデータ収集と順次処理を行う「Fast Data Processing」に取り組む企業が国内外で増えている。実はこうした企業の中には、システム基盤としてオラクル製品を活用しているところが多い。日本オラクルが2013年3月14日に都内で開催した「Oracle Big Data Forum」におけるセッションから、それら先行企業におけるFast Data Processingの事例を紹介しよう。(編集部)

Fast Data Processingで “顧客の生の挙動”をビジネスに生かす

 ビッグデータに対する取り組みには、過去に収集されたデータを整理/分析することによってビジネス上の価値を引き出す「Big Data Management」と、さまざまな機器やデバイスが生成する大量のイベント情報を常時収集/処理し、そこからビジネス機会をリアルタイムに捕捉する「Fast Data Processing」がある。Oracle Big Data Forumにおいて、このFast Data Processingが企業の競争力を高めるうえで新たな武器となることを説明し、そこにおけるオラクル製品の活用例を紹介したのが、日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部 製品戦略部担当ディレクターの杉達也氏によるセッション「先行企業はなぜリアルタイムに情報を収集するのか」だ。

日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部製品戦略部担当ディレクターの杉達也氏
 セッションの冒頭、杉氏は先行企業の取り組みとして、「顧客が企業に対して明確に要求を出す以前の段階で顧客の『声になっていない声』を収集し、ビジネスに生かす」という活用法を説明した。

 企業が事業戦略や施策を立案する際、「顧客の声」は貴重な情報源となる。顧客の声を集め、分析することで、製品戦略やマーケティング戦略にとっての重要な知見が得られることから、ビッグデータ活用の分野でも、顧客がSNSやブログなどで行った発言を「顧客の声」として活用しようという取り組みが行われている。

 しかしながら、そうした発言は、発言者の明確な“意図”の下で自覚的に行われているものだ。それらを抽出して分析した結果は、ポジティブなものにせよ、ネガティブなものにせよ、比較的“極端”なものになりがちである。

 一方、何らかのデバイスを活用して、顧客が明確に意識/発信する以前の「声になっていない声」を常時拾うことで、「顧客の生の挙動」を可視化し、生かすことを目指している企業があるという。

 杉氏は、その好例の1つとして、「NIKE+ Digital Sport」を挙げた。

 NIKE+では、スポーツ用品ユーザーのライフスタイルに関する情報(例えば、走行距離や走行スピードなどの情報)をリストバンドやスマートフォンなどのデバイスで収集し、これまでメーカー自身がやるのは難しかった「商品購入後」のユーザー・エクスペリエンスの向上や、ユーザーとの関係強化などの施策を行うことを可能にした。このNIKE+を支えるITインフラでは、オラクルの技術/製品が数多く利用されている。

 杉氏は、米国ナイキのバイスプレジデント、ステファン・オランダー氏の、「従来のマーケティングは、お客様に商品を買ってもらうところで関係が終わっていた。今後は、その関係性を変化させる。商品を買ってもらうところからお客様との関係をスタートし、より強固にしていきたい」というコメントを紹介しながら、「お客様に関するデータをすべてカウントして生かす」ことで、これまで見えなかった情報から重要なデータが見えてくると強調した。同時に、顧客との接点を線や面へと広げることで、企業にとっては競合他社の入る隙間をなくすことにもつながるのだという。

 なお、このアプローチは、昨今注目されている「M2M(Machine to Machine)」や「IoT(Internet of Things)」、「D2D(Device to Data Center)」などとして紹介されることもある。Fast Data Processingは、これらを支える技術として利用され、「新サービスの開発やユーザー・エクスペリエンスの向上、オペレーションの最適化や品質向上、処理の効率化などの効果を得ることが期待されている」(杉氏)。

高速/高スケールな情報処理性能を生かしたFast Data Processingの活用例

 M2Mを活用した顧客サービスの向上を実現した事例として次に紹介されたのは、米国ゼネラルモーターズ(GM)の車載情報ネットワーク技術「GM OnStar」など、北米で導入が先行しているテレマティクス・サービスだ。

 こうしたサービスでは、自動車に搭載された各種センサーから集めた車両に関するさまざまな記録(ログ)をクラウド上に保存。自動車のオーナーは、そのログ・データに対してPCやスマート・デバイスからアクセスできる。

 蓄積された車両情報は、ユーザーによる関連サービスの利用状況などと組み合わせて活用される。オーナーのコンタクト情報やプロファイルが、車両の識別情報、タイヤの空気圧やオイル/燃料の残量、エアバックやシートベルトの利用状況といった車両の自己診断情報と組み合わされることで、メンテナンスやサービスに関しての品質向上や時間短縮にも大きな貢献が期待できる。

 また、このようなデータの蓄積によって、新車開発時に実際の利用形態に基づく、より現実的なテストケースを設定するためのデータとして活用できるというメリットも考えられる。

 なお、GM OnStarサービスでは、「WebLogic Server」や「Oracle Coherence」から成る「Oracle WebLogic Suite」が利用されている。加えて、「Oracle SOA Suite」も利用し、バックエンドとの連携をSOA化することにより、新サービス展開時の実装期間を短縮しているという。

 こうしたM2M型によりセンサー/コンピュータ間で自動的に情報収集を行う仕組みでは、収集されるデータが絶え間なく押し寄せることを想定しなくてはならない。そのため多くの場合、逐次型のインメモリ・イベント処理という手法が活用される。

 例えば、M2Mの代表例として取り上げられることの多い「スマートグリッド/スマートメーター」を考えてみると、電気/ガスの供給状態、地域情報、天候イベントを複合的に判断して供給ルートの最適化を図るためには、途切れのない集計処理が間違いなく必要になる。また、情報ソース(この例では、設置されるスマートメーター)の数の増加、個々の情報収集のさらなる高頻度化も想定しておかなくてはならない。そこで、「Oracle Event Processing」やOracle Coherenceなどのインメモリ・プロセッシング製品群が利用されるのだという。

Fast Data Processingが可能にする「より高い付加価値」とは

 続いて、M2Mの先行企業が狙う「情報収集の“次の段階”」を示す事例として紹介されたのが、北米の電力需給管理サービス「EnerNOC」だ。杉氏は、M2Mサービスの展開によって、企業が最も狙っているのは「さらなる付加価値サービス(Value Added Service)の提供」であるという調査結果も引きつつ、EnerNOCが実現している興味深いビジネス・モデルについて説明した。

 EnerNOCでは、スマートグリッド上から、同サービスに契約している企業の電力利用状況に関する情報を収集し、個別の企業や地域全体での電力使用量を可視化するサービスを提供している。興味深いのは、これが電力会社ではなく、サードパーティが提供しているサービスであるという点だ。

 EnerNOCが契約し、管理を行っている施設は1万数千件に上るが、同社では、電力会社からの節電要請を考慮しながら、効果的な節電計画を立てて契約施設の利用量制御の仕組みを施行する。これにより、EnerNOCは契約企業に対しては節電効果によるコスト・メリットを提供。その一方で電力会社に対しては、電力需要の増減を極力平準化し、電力供給コストを抑えながら安定した電力需要を獲得することを支援する。つまり、EnerNOCは、エンドユーザー側の電力利用をコントロールしながら、特定地域での電力供給事業を安定させたいという電力会社側の要求にも応えているのだ。

 EnerNOCでは、こうしたスマートグリッドのコアサービスに加えて、この取り組みの延長線上で、電力供給対象の設備の故障/障害の検知サービスや、複数施設間でのエネルギー配分による最適化サービス、さらには契約企業間のエネルギー取引などのさらなる付加価値を提供している。言うなれば、収集したエネルギー情報を活用した新たな市場を形成しているのである。

 「EnerNOCの事例は、顧客のエネルギー使用情報を収集できたがゆえに、スマートグリッド・サービスを実現し、さらなる付加価値サービスを生み出せるという好例だ。情報収集の下地を作れたからこそ、その上に新たな付加価値を作ることができるのだ」(杉氏)

 「新たな付加価値の提供」という視点で紹介されたもう1つの事例は、欧州の大手金融機関による「SMART BANKINGプロジェクト」だ。

 SMART BANKINGプロジェクトでは、いくつかの付加価値サービスの提供を目指しており、具体的な例としては、カード決済やATM取引のタイミングで、顧客プロファイルや利用金額、さらには位置情報などに基づくタイムリーなクーポンを発行するといったものがある。

 これを実現するためには、取引イベントをリアルタイムに捕捉し、的確なオファリングを提供する「逐次型アクション」が可能でなくてはならない。それに加えて、各顧客の過去のトランザクション履歴、来店履歴、会員サイトの訪問履歴、SNSでの発言などを解析/分析する「蓄積型分析処理」によって、より高精度な顧客サービスへと進化し続ける必要もある。

 このサービスは、それ単体でも魅力的なものであり、顧客に対しては他社との差別化ポイントとして訴求できるが、同時に、他の企業がこの金融機関と提携したいと思わせる“場(市場)”を提供することにもなる。それにより、単なる新サービスの提供だけにとどまらない大きな可能性をもたらす。このようなビジネス拡大のアプローチは、電子マネーやポイントカードにも応用できるだろう。

実績に基づく「グローバルでの知見」が集積されたオラクルの Fast Data Processing ソフトウェア群

 杉氏によれば、以上に紹介した事例のほかにも、ヘルスケアや物流、セキュリティ、工業設備機器、ホームゲートウェイ、一般消費者向けデバイスといったさまざまな領域に、M2MやIoTの機会が無数に存在する。オラクルは、顧客企業のプロジェクトを通して、それらの業界やデバイスに向けてFast Data Processingの実現基盤を提供してきた。杉氏は最後に、次のように呼びかけて講演を締めくくった。

 「我々が支援させていただいたFast Data Processingの活用領域は、各社の企業戦略に深くかかわるものでもあり、表に出せるケースは少ない。ここで皆様に知っていただきたいのは、オラクルは、国内外のさまざまな先行企業とともに得た経験値をFast Data Processingのためのソフトウェア機能として取り入れ続けているということだ。

 これまで見えていなかった情報を、常時『見えるデータ』に変えていくM2MやIoTのアプローチは、顧客との接点の拡大や競合他社の排除に直接的に貢献する。また、リアルタイムな情報であるがゆえに、さらなる付加価値サービスの展開の下地となることを先行企業の事例が示している。

 オラクルは、Fast Data Processingの技術/製品や実装ノウハウにより、そうした試みを全面的にお手伝いすることができる」


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