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ベネッセは、オラクルのBIテクノロジーを活用してダイレクト・マーケティングのさらなる深化/進化を目指す──Oracle Data Intelligence Forum 2013レポート

ベネッセコーポレーションは現在、オラクルのテクノロジーを用いながら、ダイレクト・マーケティングの先鋭化を推し進めている。2013年8月28日に日本オラクルが開催したフォーラム「Oracle Data Intelligence Forum 2013」では、その取り組みの全容が披露された。同社は、なぜオラクルのテクノロジーが選んだのか?その背後にあるベネッセコーポレーションのダイレクト・マーケティング戦略とはいかなるものなのか? 同社IT担当者らによる講演の内容を紹介する。(編集部)

"個のニーズ"をとらえた「個別シナリオ化」で顧客に応じたアプローチを

 ベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)による講演のテーマは「ベネッセのマーケティングを支える情報基盤とその活用事例」。壇上に立ったのは、同社IT戦略部 成績・マーケティング基盤担当部長の保本尚宏氏と、ベネッセホールディングス傘下の情報システム会社であるシンフォームの山野朝仁氏(ITソリューション部所属)である。

ベネッセコーポレーション IT戦略部 成績・マーケティング基盤 担当部長の保本尚宏氏

 初めに登壇した保本氏は、ベネッセのマーケティング戦略の方向性から話を切り出した。

 「私たちは今、当社の中核ビジネスである教育事業を支えるダイレクト・マーケティングの"深化と進化"に取り組んでいます。それによって目指しているのは、顧客獲得チャネルの"複線化"です」(保本氏)

 ベネッセでは従来、子供の学習を支援する各種商品を、子供の「年齢(学年)」というセグメンテーションだけを用いて「全国一律で訴求する」というダイレクト・メール(DM)マーケティングを展開していた。しかし、地域ごとに入試制度や学校の変化/多様化が進んだことから、このような一律的なマーケティングでは"個のニーズ"に対応し切れなくなってきたという。

 「そこで私たちは、ダイレクト・マーケティングの方向性として、『個別シナリオ化』という深化の方向性を定めました。これは、年齢(学年)別という従来のセグメンテーションに加えて、お子様の学校別や地域別、学習スタイル、あるいは行動別といった細かなセグメンテーションを用いて、お客様へのアプローチをよりパーソナライズしていくということです。加えて、DMやメール、Webといったさまざまなチャネルを通じてお客様にタッチしていく──私たちはそのようなマーケティングを目指しています」(保本氏)

実データを用いた検証でオラクルのBIソリューションの実効性を確信

 個人の多様な情報に基づいて個別のシナリオを描き、それをベースにして、よりパーソナライズされたマーケティングを展開していく──こうした戦略に基づく施策をタイムリーに実行し、その的確性や効果を高めていくためには、スピーディなデータ分析によって施策のPDCAサイクルを迅速に回すことが重要になる。

 ところが、ベネッセの従来のIT基盤では、システムから分析に必要な情報を収集/抽出するだけでも多くの手間がかかり、「タイムリーなマーケティング活動が行えない」、「膨大な情報資産の活用が困難」、「個別アプローチのためのコストが膨れ上がる」といった問題を抱えていた。

 これらの問題を一挙に解決すべく、同社は新たな情報基盤(マーケティング基盤)の構築を決め、それによる改革の方向性として、次の3つを段階的に進めるというシナリオを描く。

  • 自動化:社内システムと分析基盤におけるデータ連携の自動化
  • 統合化:多種多様な社内データを集めた統合データベースの構築
  • 自律化:分析のセルフサービス化

 このシナリオには、もちろんマーケティングのPCDAサイクルをスピーディに回すという大目標がある。その大目標を具体化するためのソリューションとして、ベネッセが選択したのが「Oracle Exadata」と「Oracle Business Intelligence Enterprise Edition(以下、Oracle BI EE)」のコンビネーションである。

 「私たちの分析対象は、数千万人/数十億件にもおよぶ、お客様のデータです。そうした大量データの分析を高速に行うには、超高速なデータベースと、それとの高い親和性を持ったBusiness Intelligence(BI)ツールが必要でした」と保本氏は語る。

 実際に、ベネッセが実データを使って実施した検証(概念検証:Proof of Concept)によれば、Oracle ExadataとOracle BI EEのコンビネーションにより、バッチ処理時間は従来の約3時間から約8分に、SQL処理時間は約1時間から20分程度に短縮化できたという。

 また、データの圧縮率も従来の4~9倍に高められ、データ分析の操作性/レスポンスについても大幅な改善が確認できた。

 なお、保本氏によれば、実データを用いた概念検証は、構想したシステムの実現可能性や有効性を導入前に確認できるという点で大きな効果があったという。

単に集めるだけでは、データは価値を生まない。
明確な戦略と、それに基づくデータ整備が鍵

 もっとも、いかに優れたツールを使おうとも、そのことが即座に実効性の高いデータ分析やマーケティング施策につながるわけではない。その観点から、保本氏はデータ統合/BIソリューションの導入を成功に導くためのポイントを次のように説く。

 「何よりも重要なのは、『どのデータを、どのように活用して価値を生んでいくか』という戦略を明確に立てることです。膨大なデータを1個所に集めさえすれば、そこから自然に何らかの価値が生まれるといったことは絶対にありません。

 明確な戦略を立てたら、次はそれに基づいてデータを選別します。また、データをどう活用していくかという利用シーンを想定し、それに沿ってデータを整えていくことも重要です。

 そして、開発のフェーズでも、戦略や利用シーンに基づきながら、当初の目的を見失うことなく開発を進めていくことが、その後の成功の鍵となります」(保本氏)

 こうした考え方に基づき、ベネッセは3年近くの歳月をかけてデータ・ウェアハウス(DHW)とBI環境の整備を進めてきた。DHWの構築は2011年度に完了させ、現在はBI環境の整備、つまりは分析のセルフサービス化に向けた整備の最終段階にある。

 この整備を終えた段階で、前述した「自動化」、「統合」、「自律化」のシステムは一応の完成を見る。加えて今後は、「より広範な情報ソース、例えば、お客様の行動履歴、ソーシャル、モバイル、位置情報などを組み合わせて、またあらゆるチャネルを連携させながら、お客様との緊密な関係性を保ち続けられるような新しいアプローチを実現していきたい」と保本氏は展望する。

システムのレスポンス、操作性、そして開発効率のすべてが向上

シンフォーム ITソリューション部の山野朝仁氏

 保本氏がマーケティング面の話を終えると、続いては山野氏が壇上に立った。シンフォームの顧客分析課に所属し、ベネッセにおける情報基盤刷新/強化をBIシステム開発という実務の面からサポートしている山野氏は、今回のマーケティング基盤構築における課題と工夫について説明した。

 山野氏によれば、ベネッセが従来マーケティングの分析に用いてきた基盤は、分析案件ごとにデータソース側(外部の基幹システム側)で加工したデータを直接取り込んで使用するという汎用性の低い、言いかえれば手間もコストもかかる構造であった。

 「そこで、新たなマーケティング基盤は、内部にインポート層、データ・ウェアハウス層、データマート層という3層から成る仕組みを持ち、基幹システムの生データをそのまま取り込んで活用することのできる汎用性が高い構造にしました」(山野氏)

 また、旧基盤は、「どの情報が、どこにあるのかわからない」、「どのツールを使うと、どういった集計が行えるのかわからない」といったユーザビリティに関する問題や、データベース構造の複雑化によるレスポンスの悪化といった問題も抱えていた。そのため、新基盤では、データベースの構造を「スタースキーマ構造を順守したシンプルな構造」にしたという。

 さらに、ユーザー・インタフェースについても、「目的別集計グループ」を提供するなど、ユーザーが選択を迷わないような工夫を凝らしている。

 これらの工夫の結果として、従来は5~10分かかっていた集計処理が1分以内で完了するまでに性能が向上したほか、ユーザビリティや開発効率の面でも実質的な改善が見られたという。

 なお、こうしたデータベースの構造化では、「ユーザーが間違わずに集計を行えるような構造にすることが重要」だと山野氏はアドバイスする。

 「構造化でミスを犯すと、テーブル結合で間違った集計結果が出力されることがあるため、この辺りの設計については細心の注意を払う必要があります」(山野氏)

 これらの経験や教訓、そしてオラクルのBIテクノロジーを生かしながら、今後ベネッセは、「ライトユーザー向けの分析機能の充実」や「業務プロセス別ダッシュボードの提供」、「指標とワーニング機能などの搭載」といったシステムの機能強化を図り、「個々のユーザーが、自らマーケティングのPDCAサイクルを回せるような基盤」の実現を目指す。

 以上、ここではオラクルのBIソリューションも活用しながらダイレクト・マーケティングのさらなる深化、そして進化を目指すベネッセの取り組みを紹介した。中核事業のさらなる発展を目指したこの試みが、今後どのような教育サービスの拡充につながるのか。国内教育産業を牽引するベネッセの取り組みに注目したい。

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