日本CFO協会は「財務マネジメントサーベイ」としてその時々の企業が直面している経営財務の諸問題について実態調査を行い公開している。
先の5月にIFRSに対する初めての調査「IFRS導入への取組み」が実施され、結果が公表された。
以下、主要な調査結果を取り上げて簡単ではあるが筆者のコメントを付した。
(1)IFRSの原則主義
「経営者による裁量の幅が広がる」(53%)が「経営者による裁量の幅が狭まる」(26%)を大きく上回り経営者の視点では前向きにとらえられている。
(2)資産負債アプローチ
「損益計算書の観点から望ましくない」(65%)が「株主に対して透明性が高いアプローチである」(25%)を大きく上回り、「包括利益」の考え方への違和感が現時点では大きい。
(3)IFRSの公正価値開示
どちらかといと公正価値にネガティブなとらえ方である「評価に一定の制限を設けるべきである」(73%)と「取得原価アプローチより安定性・信頼性において劣る」(12%)が合計85%。ポジティブなとらえ方「企業価値をより明確に示すものであり望ましい」(11%)を大きく上回り、資産負債アプローチ以上の違和感があるようだ。
(4)IIFRSに対する全般的評価
「どちらともいえない」(77%)、「従来の我が国の基準よりも優れている」(10%)、「従来の我が国の基準の方が優れている」(8%)と、基準としての優劣は答えにくい質問であったようだ。
(5)IFRS適用によるベネフィット
回答数が過半数を超えた項目は
「決算手続を標準化・統一化できる」(68%)のみ。
半数をやや下回るが
「海外上場、海外での資金調達などにおいて有利に働く」(41%)
がつづく。
そして
「グループ経営管理レベルの向上が図れる」(29%)
「経営全般の改革のためきっかけにできる」(24%)
とつづくが回答率は20%と低い。
この調査実施時点(5月)では、資産負債アプローチ、公正価値評価への違和感とともにIFRSの便益の理解、整理が十分ではないようだ。
今後、企業の中でもIFRSへの研究と理解が急速に進み、企業なりのベネフィットを見出し導入に向けたドライバーとなることが期待される。
(6)IFRS適用に向けての課題
50%を超えたベスト6は
1 人材のスキル(質・会計知識)不足(73%)
2 (原則主義の適用による)IFRS解釈上の混乱(66%)
3 対応できる人材(量)不足(64%)
4 情報システム改修の不安(60%)
5 人材スキル(質・英語力)不足(54%)
6 IFRS対応プロジェクトにかかる費用負担(53%)
ほぼ、4月に公開された経団連の調査結果と等しいが
財務担当役員あての調査ながら、「情報システムへの不安」が上位の回答を集めた。
現状の情報システムへの満足度を調査したいものだ。
(7)IFRS適用までに多くの対応を要する業務
50%超えたベスト4は
1 財務会計上の対応(影響分析・マニュアル整備等)(89%)
2 会計・連結システムの改修(74%)
3 人材育成や教育(73%)
4 基幹システムの改修(52%)
この項目も財務担当役員あての調査ながら情報システムが2項目回答を集めた。
5位の「業務プロセスの見直し」(44%)を上回っている。
仮説ではあるが、2000年問題、会計ビッグバンをきっかけに1990年代後半に多くの企業は会計システムや基幹システムの大規模改修、、もしくは新規導入している。それから10年。システムの陳腐化がIFRSを前に顕在化してきているのかもしれない。
(8)IFRSの影響が大きいと思われる会計分野
収益認識(69%)
財務諸表の表示(59%)
の2項目が50%を大きく上回り、各社共通のテーマとなっている。
その他は
退職給付(年金)40%
開発費の資産計上を含む無形固定資産(35%)
減損(31%)
有形固定資産(28%)
とつづく。
現時点での企業の課題感や取組み状況を的確にあらわしている非常に参考になる調査ではなかろか。
なお、この調査結果の全容とより詳しい分析は
季刊誌「CFO FORUM」June2009に掲載されている。
また、同号にはこのブログでも紹介した「CFOラウンドテーブル」の講演録も掲載されている。
-ご参考-
「CFOラウンドテーブル」(前編)
「CFOラウンドテーブル」(後編)